蟹工船、キューバ、日本の集い
小説「蟹工船」についてのキューバでの集会の記事が、Cuba Now に掲載されましので、紹介します(英語)。
キューバでの集会の詳細が述べられています。「09.04.07 Cuba-Japan Significant Annieversaries.doc」をダウンロード
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小説「蟹工船」についてのキューバでの集会の記事が、Cuba Now に掲載されましので、紹介します(英語)。
キューバでの集会の詳細が述べられています。「09.04.07 Cuba-Japan Significant Annieversaries.doc」をダウンロード
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2-3月と海外に調査旅行に行ってきましたので、研究室も休みとしていました。先日帰国しましたので、再開しましょう。
旅行中、あるテレビ局から、「WBC(世界野球大会)について取り上げることになり、3月16日に行われる『日本対キューバ』の試合放送の際にキューバ共和国という国がどんな国なのか番組で紹介したい、下記のような番組が調べたことが正しいことなのか、判断、監修してほしい」との依頼がありました。
その内容をみて、正直、またか!という思いでした。すでに、「キューバ、7つの神話で」で実情を明らかにしたことも含まれていますが、ステレオタイプ的間違った情報ゆえ、ご紹介し、実情を報告しておきます。さすがに、同TV局では、この収集していた情報を報告せず、番組の信頼性が救われましたが、もし、それらを否定せず、TV局がそのまま紹介、報道していたら、またまた新たな神話が形成されたことでしょう。
①キューバでは医療費が無料というのは本当でしょうか?
答え:
医療費はすべて無料というわけではありません。入院費、診察料、入院中の薬代は無料です。しかし、通院患者は、処方箋により薬を買います。これは有料です。しかし、政府の補助金で安く、だいたい一般の病気で、1週間分の薬で月収の3-4%程度です。
なお、外国人は、原則としてすべて有料です。映画「シッコ」で無料であるかのことをいっていましたが、これは間違いで、彼らは国賓として招かれていたので無料。外国人は一般には有料です。この点は、イギリスの医療制度の方が、外国人も無料ですから、すぐれているでしょう。
また、この機会に、現在、キューバの医療制度は、再編成されていることを紹介しておきます。理由は、国外への大量の医師の派遣から、医師数が半減した結果、底辺を支えている家庭医制度を初めとして、統廃合が進められているからです。
現在キューバの医師、教師、スポーツ・文化インストラクターの海外協力派遣者は、48,256人で97カ国(そのうち4万5000人がラテンアメリカ・カリブ海の31カ国)、15分野で派遣されています。そのうち、医療関係が最大で36,770人が70カ国に派遣されています。これらの大部分は、有料のサービス輸出として行われていますので、安易にキューバの国際連帯は見上げたものだなどと感心しないこと。しかし、派遣費用は国際的な水準からすれば安い価格ですし、最貧国への派遣、あるいは緊急人道支援の場合、無料で行われています。
海外への医師の派遣(ほとんどはサービス輸出であり、無料支援ではない)から、医師不足が生じ、7万2千名の医師の半数近くが海外に派遣されて、医師一人当たりの人口数も300人を超えるものとなっています。しかも、家庭医は、3万4000人の半数以上が、海外に派遣されていることから、80年代は医師一人当たり500-700人を担当していましたが、現在では3倍の1500-2000人を担当しなければならなくなっています。
その結果、全国の1万4078の家庭医診療所を①タイプⅠ(5916診療所)、②タイプⅡ(4680診療所)、③強化診療所(177診療所)の3種類に分類し、継続開所されています(残りは閉鎖)。①は医師と看護師各1名で初期診察を行い、②は看護師のみが簡単な手当て、注射、ワクチン接種などを行い、③は医師と看護師1名で、過疎地で24時間診療、レントゲン、超音波装置、心電計器、歯科装置を備えています。しかし、再編成の過程は、まだ僅かなもので、国民の中に多くの不満があり、改善されるべき多くの問題があると公共保健省(MINSAP)も認めています。
医師の賃金が、平均賃金の50%程度増程度であるうえ、それは生活の5分の1程度しかカバーできないので、また、医師はアルバイトもできないので、生活は大変です。そこで、医師への金品の受け渡し、医薬品、医療資材の横流し。入院・手術便宜供与に対する謝礼などが、少なからず行われています。
②キューバでは国がヒッチハイクを推奨しているというのは本当でしょうか?また、それはなぜでしょうか?
答え:
特に国がヒッチハイクを奨励しているわけではありません。90年代に入り、「非常時」となり、交通事情が急激に悪化し、サービスはかつての5分の1程度に減少しました。そこで、公用車の場合、公用車の目的地までに座席に余裕があれば、決られた場所でインスペクター係員の指示で、乗車させなければならない規定が作られ、希望者は指定の場所で乗車することができます。街中、どこでも乗れるというものではありません。しかし、最近は、この義務も解除された模様で、街中でインスペクターを見ることがなくなりました。
自家用車の場合、とくに同乗させる義務はありません。ただし、交通事情が困難なことから、自家用車が、街中で手をあげている市民を同乗させることはあります。運転手の判断の問題です。若い女性などは同乗させてもらう可能性がありますが、一般の男性はあまりありません。
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キューバ人の国民性
キューバ人(正式にはクバーノ)の国民性は、一般的に言えば、ラテンアメリカ国民一般の国民性に似通ったところが多い。いうまでもなく、4世紀にわたるスペインの植民地であったことから、またスペインからの移民が圧倒的に多かったことから、スペインの文化、習慣がキューバに根付いたのはいうまでもない。
しかし、16世紀初頭よりアフリカから黒人が奴隷としてキューバ(クーバ)に強制的に連行されて、キューバには黒人の文化・習慣も移入された(1880年まで合計約100万人)。いわゆるアフロ・クバーナ文化が形成された。1880年奴隷制度が廃止されたときの黒人の人口は、全人口の3分の1程度であった(16万人余)。原住民のインディオは、1492年クリストバル・コロン(コロンブス)がキューバに到達したとき、20万人以上いたと推測されるが、スペイン人の強制労働やスペイン人がもたらした疫病などで16世紀末にはほぼ全滅した。したがってキューバは、アメリカ大陸のメキシコ、グアテマラ、ペルー、ボリビアなどのようにはインディヘナ(インディオ原住民)の影響を強く受けていない。わずかに、生活用品の名前、料理とか地名にうかがわれるだけである。
こうしたキューバ人の国民性については、古くから外国人の旅行者によって次のように語られている。18世紀半ばにキューバを旅行したアメリカ人のワードマンは、キューバ人特有のもてなしの良さに強い印象を受けている。
「キューバ人は、アイルランドの農民と同じように、追従を好み、人を騙したあとで笑い、できないことを平気で約束し、際限のないもてなしを行う。しかし倹約家である。一般に倫理は弱く、賭博が好きで、迷信と結びついた不貞が多くある」。
一般にキューバ人の性格としては、「創造性があり、いかなる環境にも適応する仕事への適応力がある」、「仲間の助け合い意識の強い国民」、「陽気で、冗談好きで、反抗的であるうえに、頭の回転が速い国民」(フィデル・カストロ)、「情熱的で、創造性に富み、物事に別な側面を見る能力があると同時に、否定的な面として、品がなく、マチスモであり、直情的で、攻撃的である」(Juventud Rebelde, 9 de Marzo de 1997)などがあげられている。
19世紀末のキューバ独立戦争で活躍したドミニカ生まれのマキシモ・ゴメス将軍は、キューバ人の性質には、「届かないか、行きすぎてしまう」ところがあると述べている。筆者は、これに、キューバ人は、どんな逆境にあっても、ユーモアを失わず、冗談(チステ)を言って困難に打ちひしがれないという長所をあげたい。
キューバ人の愛に対する考え方には興味深いものがある。それについて、キューバ独立運動の父と言われているホセ・マルティは、1882年、妹のアメリア宛ての手紙で次のように述べている。キューバでは良く知られている手紙だ。
「わが国には、決して壊れることのない結婚をもたらす、決定的で変えがたい慈愛と情愛の感情を混同する破滅的な習慣がある。わが国では、愛情関係が、そこで終わることになるところで始まる。しっかりした気持ちと知性をもった女性は、愛ではないが、愛と似ている情交の生き生きとした喜びと、-その感情は、男性を表面的に立派であるとみる感情であるが-、他の者に対する言いがたい精神の傾注であるような決定的で偉大な別な愛を区別しなければならない」。
さて、アメリアはこの手紙をどう受け取ったであろうか。筆者は寡聞にして知らない。
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はじめに
日本において、連日のように、「医療費の値上げ」、「緊急患者の病院たらいまわし」、「医師の過重労働」、「医師・看護師不足」、「医療格差」、はては「医療崩壊」までが語られ、報道されている。こうした実情からは、2000年のWHO(世界保健機構)のワールド・ヘルス・レポート(1997年時点の実態)で、医療制度の達成で世界第一と日本が指定されているが、何かの間違いではないかと思わされる。
こうした日本社会にいる私たちにとって、マイケル・ムーア監督のドキュメンタリー映画「シッコ」や、吉田太郎氏の『世界がキューバ医療を手本にするわけ』(築地書館、2007年)で、いわば理想的な対極の世界として描かれているキューバの医療事情は、大きな関心を呼び起こすものであった。
医療サービスを実現する条件
筆者は、各国の医療サービスは、①すべての国民が医療サービスを受ける普遍性に基づく国民の高いヒューマンな医療理念があるかどうか、②その理念の実現を可能とする経済・財政・インフラ環境が社会にあるかどうかによって決まってくると考えている。上記の①、②のどちらが不足しても、医療サービスは満足すべきものとはならない。現在、米国や日本は新自由主義思想により①が破壊されているし、キューバは②が不足している。もっとも、①があるということは高く評価されなければならないが、経済・社会全体の困難な中で、国民の意識自体も①に少なからず影響を受けていることも事実である。
ところで、キューバの医療を報告する場合、善意によるものであれ、あやまった事実認識や、主観的評価が、少なからず見られるのは残念である。しかし、そうした認識は、変革の真の力とはならないのではないだろうか。それでは、現在の歴史的時点で、キューバの医療事情はどうであろうか、キューバ社会全体の中に位置づけて報告したい。
キューバ革命のヒューマンな理念は、歴史的に見れば、1953年7月26日、当時のバチスタ独裁政権の打倒に立ち上がり、その後逮捕され、みずからの弁護を行った若きフィデル・カストロの陳述に凝縮されている。
「このようなひどい悲惨な状態から解放されうるのは死でもってだけである。農民が死ぬことを助けているのは国である。農村の90%の子供は、はだしの足の爪を通って土地から入ってくる寄生虫により蝕まれている。社会は、一人の子供の誘拐や殺害のニュースに驚くが、このような何万何千という子供たちが、ものがないため、死の苦痛に苦しみながら毎年死んで行くという大量の殺害という罪には、許しがたいことに無関心である。無実な子供たちの目は、既に死が光り輝いており、人間の利己主義にたいして許しをこうているように、また、神の罰が人々の上に下されないように願って、無限のかなたを見つめているように見える。そして、一家の父が一年に4ヶ月のみ仕事をえるとき、どのようにして息子たちに衣服や薬を買うことができるであろうか。子供たちは、くる病患者のようにしか成長できず、30歳になっても口の中には一本たりとも健康な歯はない。何百万回という演説を聴くかもしれないが、結局は悲惨な状態で絶望して死んでいく。国の病院はあっても、常に満員で治療を受けられず、大物政治家の推薦でもってのみ、それは可能である。その政治家は、彼や彼の家族全員の投票を要求するが、キューバは常にこれまでどおりだし、あるいは悪くなるだけである。」(フィデル・カストロ『歴史は私に無罪を宣告するであろう』)
キューバの医療制度の確立
この理念は、反バチスタ独裁ゲリラ戦争中に、実行され、ゲリラの解放区では、農民、捕虜に対し、無料で治療が施された。さらに1959年1月1日の革命勝利直後の2月23日、法律第100号により、農民技術、物資、文化支援庁が設立され、ほぼ無きに等しかった農村住民への医療活動が行われることとなった。同年、6000人の医師のうち、3000人が米国に亡命するという大きな痛手を受ける中で、1960年1月、法律第723号、地方社会医療サービス法を制定し、医学部卒業生に1年間(その後2年間となる)の地方勤務を義務付けるとともに、農村の医療サービスを無料とした。さらに同年5月にはすべての公共医療サービスを無料とした。その後、個人開業医は国有化せず、民間診療所の国営化をはかり、最終的には、1967年個人開業医を除き、医療サービスは国の管理に一本化された。
その後、革命の医療理念は、1976年に制定された憲法(1992年の改正)に、何よりも明確に現れされた。第50条には、「すべての国民は、医療を受け、健康を守る権利を有する。国は、この権利を保障する。医療、入院は無料とする」と述べられている。この権利の保障は、公共衛生法(法律第41号、1983年7月13日制定)に規程されており、いかなる社会的差別も排除もない。さらに医療制度を支える医師、看護師、医療技術者の教育は、憲法第39条で「教育は、国の役目であり、無料とする」と制定されており、人的供給の持続性が保障されている。
キューバの医療制度の特色
キューバの医療制度の特色は、①誰でも医療サービスを受けられる普遍性、②いつでも、どこでも医療サービスを受けられるアプローチ性、③地域の実情に根ざした地域性、④すべての経済的・社会的側面をカバーする総合性、⑤無料性にある、⑥発展途上国の医療サービスの発展に協力する国際性の6つの原則にある。根本の考え方は、予防医療にあり、これは、個人にとっても、国にとっても望ましい方法である。個人にとっては、まずは病気にかからないようにすることが第一であり、さらに病気になった場合でも病気が悪化する前に、適切な治療を受けられるし、国にとっては、それだけ治療費も安くつくからである。
国-県-基礎行政区の3段階に厚生省の医療機関があり、県は全国病院と総合診療所を、最小行政区は、総合診療所と家庭医診療所を指導している。これらの医療機関とともにこの予防医療を支えているのは、革命防衛委員会、キューバ労働者センター、小農協会、女性連盟などの大衆組織であり、これらの大衆組織の協力のもとで、キューバでは3日もあれば、全国民へのワクチン接種が可能だという。
医療理念を推進する財政的努力と医療体制の確立
こうした原則的理念のもとで、発展途上国の財政困難なキューバではあるが、国内総生産(GDP)にしめる医療費・社会福祉の割合は24.1%で、医療費の割合は13.6%で、ヨーロッパの先進国並みか、それ以上である。国家予算における医療費の割合は、10%余で、革命勝利前の1958年の2倍となっている。
このような財政的配慮のもとで、家庭医-総合診療所-全国病院という医療体制が確立されている。その基礎は、初期診療に携わる家庭医制度である。全国には、1万4千余の家庭医診療所があり、各家庭医は、約120-140家族、500-800人の地域住民の初期治療を担当している。一般には、1名の医師と看護師が勤務し、聴診器、注射器、血圧計など以外の医療機器は装備されていない。家庭医診療所で治療できない場合は、患者は近隣の総合診療所に紹介される。総合診療所は、一般に、内科、外科、眼科、耳鼻咽喉科、産婦人科、歯科などを抱えている。レントゲン、超音波診断装置、脳波計、心電計などの医療機器をそなえている。しかし、緊急の2-3日用のベッド以外には入院ベッドはない。入院の必要がある場合、患者は、上級の全国病院に送られる。もちろん、患者は、直接総合診療所や全国病院にいってもよい。ただし、総合診療所の場合は、各住民は診療所が指定されている。
総合診療所は、全国に498あり、平均20-30の家庭医診療所を対象としている。総合診療所で対応できない難病は、213の全国病院に送られ治療される。こうしたピラミッド型の医療制度の中で、7万1千人余の医師(そのうち家庭医は3万3千人余)、1万人余の歯科医、9万4千人余の看護師・准看護師が働いている。人口10万人当たり、医師の数は636人、看護師の数は833人で、それぞれ日本のほぼ2倍に当たる。
診察を受けるには、IDカード(身分証明書)見せればよく、診察料、治療費、食事代を含む入院費、入院中の薬代は国民すべて無料である。ただし、外来患者の薬代は有料である。もっとも、この医薬品には政府の補助金が出ており、薬にもよるが1週間分の薬で50円程度である(1ヶ月分賃金の3%程度)。なお、外国人はすべて、救急の場合の診察は無料であるが、容態が安定した後は、指定病院に移され、有料となるし、一般の診療の場合も有料である。
優れた医療指数
以上のような医療制度のもとで、キューバは、優れた医療指数を達成している。千人当たりの乳児死亡率は5.3人(07年)で米国よりも低く、平均寿命は男性75歳、女性79歳で中南米でも有数の地位にある。小児麻痺、マラリア、ジフテリアは一掃されている。
教育、医療に国が力を入れていることから、80年代からインターフェロン、バイオ・テクノロジーの研究も進んでいる。髄膜炎ワクチン、B型肝炎ワクチンなどは国際的にも商業化され輸出品目となっている。
国際協力の面では、現在、81カ国で4万人以上の医療関係者(多くは医師)が海外で働いている。視覚障害者の手術を行う「奇跡計画」では、31カ国、100万人の患者を手術し、視力を回復している。1999年11月に開校したラテンアメリカ医学校では、現在米国やアフリカの国々も含む28カ国から1万人の学生が学んでいる。もっともすべてが無償協力ということではなく、ベネズエラ、南アなど、3分の2はバーター方式などで有償となっている。現在キューバの貿易収入の50%以上が、医療サービスの輸出となっている。派遣されている医師も国内で月200ドル程度積み立て預金されており、相応の報酬を受けている。
社会・経済の困難な中で
しかし、現在、キューバの社会・経済は、90年代に入ってからの経済困難とその解決策としての経済改革の中で、かなり複雑な歪んだ状況となっている。医療インフラは、劣化しており、2001年から集中投資が行われ、全国病院、総合診療所の建物の改修、医療機器の更新が進められているが、資金の問題から、すべての病院、診療所を一斉に対象とすることはできない。少なからずの医療施設、機器が老朽化したり、故障したりしている。硬直化した輸入制度・流通制度から、医療資材の供給は、不安定で、不足するものも少なくない。
医師の賃金は、比較的恵まれたほうであるが、それでも月の必要な生活費の4分の1程度しか満たせない。そうしたことから、薬の横流し、診察・手術に伴う金品の受領や仲間主義の横行、闇歯科医の存在など、医療倫理・モラルの低下も見られる。設備と人的な面での医療サービスの質の低下が、国民の中で厳しく批判されている。
医療制度の基盤となっている家庭医制度も、海外に3万人余の医師が派遣された結果、各家庭医は、かつての3倍の1500名から2000名を担当としなければならなくなっており、過重労働となっていたり、閉鎖されている診療所も少なからず見られる。そこで、最近、4月になって政府は、家庭医診療所の半数以上を閉鎖し、現状の医師の数に相応して、初期診療体制を再編成することを決定した。
人の命を守り、救う行為は、もっとも民主主義的な行為ではないかと筆者は考えている。生きていれば、良いことも期待できるが、死んでしまえば、表現や、結社の自由など享受できないからである。そうした意味では、キューバ革命が国民すべてに医療を保障する政策を、いろいろな困難を抱えているものの、高い評価に値するであろう。
3月以降、ラウル・カストロ政権は、積年の深刻な社会・経済問題を解決するために、通貨、農業、市民生活の分野で矢継ぎ早に改革を進めている。社会福祉政策も、国民すべてが恩恵を受ける従来の生活物資への補助でなく、個人への補助に切り替える方針を打ち出している。そうした中で、キューバ国民は、これまでの高いヒューマンな意識、つまり連帯的で民主主義的な意識、平等性や普遍性、無料制度を維持しつつ、医療制度をどう再編成するか、革命勝利後の2度目の大きな課題に直面している。
(2008年4月12日)
帰国者の治療。患者は亡命キューバ人で、マイアミに居住。家族にあうため一時帰国中に心臓の調子が悪くなり、近所から緊急に来て応急処置を受けた。ここまでは無料。容態は安定したので、その後外国人専用のシラ・ガルシア病院に送られる。そこでは有料。
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