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2016年7月

2016年7月15日 (金)

(続)経済困難に直面するキューバ

(続)経済困難に直面するキューバ

先週の7月8日第7回通常国会(ANPP)が開催され、ラウル・カストロ国家評議会議長、マリーノ・ムリージョ経済・計画相の発言などにより、外貨事情、石油の供給の減少、電気消費量削減の現状が詳細に明らかとなりました。

ラウル議長は、キューバの外貨事情がひっ迫していることを認めつつ、①リスケで合意した支払い分は、必ず期日通り実行する、②通常の貿易支払いが遅れているが、遅れても必ず支払する、③支払いの見通しが立たない契約は、中断し、見通しが立ったところで実行すると述べています(別添、ラウル議長演説参照)。ベネズエラとの関係では、原油の供給の減少があることを認めながらも、ベネズエラとの関係の維持を強く確認しています。

ハバナ市の各地では3~4時間の停電が散発的に起きていますが、発電所の老朽化によるものがほとんどで、電気消費削減計画から直接生じた計画停電ではありません。政府は、①住宅地区、病院、観光施設、輸出産業部門は、削減対象から除外し、②残りの従来の消費量の28%を占めた機関に消費電力の削減を指示しています。すべての機関が50%削減というものではありません。この点は、添付のムリージョ発言に詳しく述べられています。

それでも社会・経済生活の面では、国営期間は、勤務時間を12時まで、冷房使用時間は3時間、自動車燃料は50%減、職場勤務バスは運航停止と制限されています。市民の重要な交通手段となっている民間タクシー(アルメンドロン)は、ほとんどが闇ディーゼルを安く買って使用していますが、国営機関への自動車燃料の供給の減少により、闇に流れる量が激減し、値上げがうわさされています。飲食業の自営業、自営農も、燃料供給の削減、電気消費の制限が今後ないのか、キューバ経済全体の緊縮の中でどう活気を維持するか、困難な課題を抱えています。

ベネズエラからの原油供給量の削減は、一般に報じられているような40%ではなく、今年上半期は原油及び精製油合わせて19.5%減少で83,130バレル/日となっています(16.07.08 Reuters)。ムリージョ発言と呼応します。

こうした緊迫した経済状況の中で、7月12日、国家評議会は、経済関係閣僚2名の移動と解任を発表しました。発表によれば、マリーノ・ムリージョ経済・企画相、閣僚評議会副議長(55歳)は、現在全国的に討議が進められている重要な課題である、「キューバの社会主義発展の経済・社会モデルの刷新」の導入委員会の責任者としての任務に専念するため経済・企画相を解任さされました。後任には、リカルド・カブリサス閣僚評議会副議長(79歳)が任命されました。カブリサス副議長は、長年貿易相を務め、その後各国とのリスケ交渉に責任者として貢献しました。現在、外貨事情が極めて苦しい中で、各省庁から様々な要望が集中する経済・企画省で練達した調整能力が買われたものと思われます。

「16.07.08 ラウル議長、国会演説要旨.pdf」をダウンロード


「16.07.08 第7回通常国会でのマリーノ・ムリージョ・ホルヘ閣僚評議会副議長の発言要旨 .pdf」をダウンロード

(2016年7月15日 新藤通弘)

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2016年7月 7日 (木)

経済困難に直面するキューバ

経済困難に直面するキューバ

先月、6月30日、ロイターのマーク・フランク記者は、キューバ政府が、合弁企業、国営企業に、7月からガソリンと電気消費の50%削減を要請した報道しました。この点について政府の正式な発表は7月6日現在ありませんが、7月4日に開催された国会の経済委員会の席上、ムリージョ経済企画相は、外貨事情がひっ迫しており、数字は示さないながら大幅な電気消費、ガソリン消費の節約を行い、住民への停電を避けるよう呼びかけました。ムリージョ経済企画相の説明では、外貨事情が悪化した原因として、次の4点を挙げています(数字はすべて筆者推計)。

① 石油価格の下落:キューバは、ベネズエラから石油を年間500万トン程度を、医者などの派遣とのバーターで輸入していますが、このうち120万トン程度を再輸出し、年間7~8億ドル獲得しています。しかし、最近、国際石油価格の大幅な下落で、輸出額は5億ドル以下に大幅に減少しています。ベネズエラでは石油の増産が始まり、先週計画停電を解除しており、ベネズエラからの石油の供給が減少したわけではありません。国内での石油の節約を図り、再輸出の量を増やし、輸出額を確保しようという目論見と考えられます。
② ニッケル価格の下落:ニッケル価格は、2014年は16,000ドル/トン(輸出額は9億ドル程度)、2015年は12,000ドル程度でしたが、今年は9,000ドル(輸出額は5億ドル程度)と低迷しています。
③ 砂糖生産の減少:本年度の砂糖生産の目標は190万トンでしたが、目標を19%下回りました。輸出には国内消費70万トンを除き、80万トンを輸出しますが、現在の相場では、1億ドル程度の減収となります。
④ その他の外貨収集の減少:詳細は述べられていません。

キューバの財(モノ)の年間輸出額は170億ドル程度ですから、輸出による外貨収入の6%程度にあたり、今回の措置を実施するものと考えられます。この結果、ムリージョ経済企画相は、「昨年末にはL/Cの支払い期限を守れなくなった、輸入を削減し、在庫を12億ドル取り崩して使用している、今年度の経済成長の目標2%は達成できない」と述べています。

実際、貿易決済の信用状(L/C)の開設の遅れ、決済の遅れ、新たな契約の遅れが見られます。ハバナ市では、停電が報告されている地区も出ています。一方で、累積債務の繰り延べ分は、努力を続け期日通り支払っています。急成長する観光業、順調に発展している自営業者の営業、都市交通の重要な役割を担っている自営のタクシー業などにどう影響するか、心配されるところです。

こうした事情を背景に、6月28日、カリーナ・マロン共産党機関紙「グランマ」副編集長は、キューバ・ジャーナリスト同盟(UPEC)総会で、「現在のキューバでは93年、94年の社会的騒擾は許されない。当時のようにフィデルが鎮圧に出動することもない。政府指導者、メディアはしっかりとこの事情と向き合い、国民にはっきりと説明する必要がある」と警鐘を鳴らしました。

90年代の「非常時」の再来かと、過敏に事態を報道するものもありますが、外貨事情のひっ迫の規模としては比較にならない低い水準です。しかし、当時と違って多くの観光客がキューバを訪問し、国民は様々な経済活動、生活の自由を享受しています。マロン副編集長が指摘しているように、国民に十分な説明をして、国民とともに困難を乗り切る必要があるように思われます。

(2016年7月7日 新藤通弘)

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