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2014年7月 7日 (月)

憲法第18条と徴兵制

内閣官房のHPに、『「国の存立を全うし、国民を守るための切れ目のない安全保障法制の整備について」の一問一答』というのがありました。

http://www.cas.go.jp/jp/gaiyou/jimu/anzenhoshouhousei.html

友人の一人は、「まったく問答の体をなしていない一問一答ってのも珍しいですね。僕が寄生しているマスゴミ界でこんな記事を書いたらまずゴミ箱行き。たちまち失職です」とコメントしていました。

しかし、これは、傑作ですね。どんなに安倍さんが変なことをやっているのかわかるように、官僚のささやかな抵抗の文章ととると理解できますねえ。これを作成した役人のパロディ感覚、あっぱれ!なかでも大傑作は、次の徴兵制の恐れとの関係です。

【問10】 徴兵制が採用され、若者が戦地へと送られるのではないか?
【答】 全くの誤解です。例えば、憲法第18条で「何人も(中略)その意に反する苦役に服させられない」と定められているなど、徴兵制は憲法上認められません。

確かに、この憲法18条の解釈で徴兵制が否定されているという通説や政府見解もありますが、この条は徴兵制を念頭においたものではなく、18条から23条にかけての基本的自由権を述べたグループに当たるものです。憲法9条で戦力の保持を否定していますので、徴兵制の問題は述べる必要がないのです。

憲法論の標準的教科書である、芦部信喜、高橋和之補訂『憲法』(岩波書店、2007年)には、このように述べられています。
 I 奴隷的拘束からの自由
 憲法一八条は、「何人も、いかなる奴隷的拘束も受けない。又、犯罪に因る処罰の場合を除いては、その意に反する苦役に服させられない」と定め、人間の尊厳に反する非人道的な自由の拘束の廃絶をうたっている。
 ここに「奴隷的拘束」とは、自由な人格者であることと両立しない程度の身体の自由の拘束状態(たとえば、戦前日本で鉱山採掘などの労働者について問題とされたいわゆる「監獄部屋し、「その意に反する苦役」とは、広く本人の意思に反して強制される労役(たとえば、強制的な土木工事への従事)を言う。もっとも、消防、水防、救助その他災害の発生を防禦し、その拡大を防止するため緊急の必要があると認められる応急措置の業務への従事は、本条に反しない(災害対策基本法六五条・七一条、災害救助法二四条・二五条等参
照)。しかし、徴兵制は「本人の意思に反して強制される労役」であることは否定できないであろう(228-229ページ)。

 そのまま読めば、長時間労働、過労死、遠隔地配転、強制リストラのための配転、労働保護がなされていない場所での労働などが思い浮かばれますね。しかし、憲法上考えられない想定を、解釈で変えることは、安倍政権の得意とするところですから、「国防の業務もこの18条の解釈に入れ、本条に反しない」とするでしょう。上記の一問一答を読むと、解釈には「何でもあり」の考え方ですから、この18条で徴兵制が禁じられているというのは、品のない言い方ですが(彼らの主張点が品のない内容ですから、『大辞林』にはありますので許していただければ、)、「屁のツッパリ」にもなりません。憲法9条が戦力の保持を禁止していることが、判断の大原則でしょう。

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