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2014年7月

2014年7月27日 (日)

ASEANは何を考え、何をめざそうとしているのか?

ASEANは何を考え、何をめざそうとしているのか?
日本アジア・アフリカ・ラテンアメリカ連帯員会(日本AALA)ASEAN訪問団の報告会

日本AALAは「東アジアに平和の共同体」をどう実現するかという課題を探求しています。
その一環として、6月22日から29日まで、東南アジア諸国連合(ASEAN)書記局があるインドネシアとASEANの現議長国であるミャンマーを訪問し、各ASEAN担当者、国際問題専門家の見解を聞きました。東南アジア、東アジアで緊張感が高まっている現在、これらの地域で平和を求める関係者の方々の意見は、大変印象的で、貴重なものでした。
今回の報告会では、それらの内容を紹介したいと思います。
会員外のどなたでも、参加できます。是非、多くの方のご参加をお待ちします。

日時:2014年8月9日(土)午後2時~午後5時
場所:全国教育文化会館 エデュカス東京、地下会議室
〒102-0084 東京都千代田区二番町12-1 電話番号 03-5210-3511
最寄り駅東京メトロ有楽町線麹町徒歩2分、都営新宿線市ヶ谷徒歩7分、中央線四ツ谷徒歩7分
報告者:訪問団に参加のみなさん
資料代:300円

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2014年7月14日 (月)

Aがあるので、Bはできない

またまた、キューバ、ラテンアメリカ研究と直接関係がありませんが、どうしても腑に落ちないことを書きます。

Aがあるので、Bはできない。
という論理は単純明快で、詭弁を使わなければ、この論理を崩すことはほぼ不可能です。
たとえば、次のような明快な論理あるとき、Aを維持して、Bを言い換えると、論理が矛盾して罪になります。
結婚しているので、あなたとは結婚できない。
結婚しているけれども、あなたとは結婚できる。⇒重婚罪
前に電車が停車しているので、この電車は発車できない。
前に電車が停車していても、この電車は発車できる。⇒衝突事故
飲酒運転禁止なので、酒を飲んだ今は運転できない。
飲酒運転禁止でも、酒を飲んだ今でも運転できる。⇒飲酒運電罪

防衛省のHPで7月7日までは、このような解釈です。あるいは7月14日現在でも防衛省のHP内のその他の文章でも同じ内容の文章が少なからずあります。

A: 憲法9条があるので、B: 集団的自衛権は行使できません。

これが、7月7日以降は、削除。こうなるのでしょうか。
A: 憲法9条があっても、B: 集団的自衛権は行使できます。⇒他国のための戦争となり、戦争犯罪人となる。
安倍さん、このことをお覚悟ですか?
多くの防衛省、自衛隊の人々は、真面目に日本の国民を守ることを考えていると聞いています。シビリアンコントロールとは、このような人々を政治家の勝手な信念で振り回すことではないはずです。これらの人々が、政治家を信用できないと考えるとき・・・安倍さん、このことをお覚悟ですか?

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2014年7月12日 (土)

ASEANを学ぶ学習会

日本AALA三鷹支部学習会
憲法第9条とASEAN(東南アジア諸国連合)の平和理念を学ぶ

このたび、日本AALA訪問団は、インドネシア、ミャンマーを訪れ、東アジアで平和の共同体づくりをめざすASEANの神髄を学ぼうと、ASEAN本部(インドネシア)、現ASEAN議長国外務省ASEAN局を訪問し、懇談しました。ASEAN流は、徹底した対話と相互尊重、意見の違いはあくまで話し合いで解決し、どんなに対立しても、戦争を起こさないというものです。この学習会は、ASEANが今何を考え、何を目指しているか、そのホットなレポートです。緊迫した解釈改憲問題をご一緒に考えませんか。どなたでも参加できます。

日時:2014年7月19日(土)
PM6:30~8:30
会場: 三鷹市三鷹駅前地区公会堂 (消費者活動センター)  
三鷹市下連雀三丁目22番7号 最寄駅:JR三鷹駅南口徒歩:4分
電話番号 0422-43-7874
講師:
日本AALA代表理事 小松崎 栄さん
日本AALA三鷹支部事務局長 後藤ひろみさん
主催:日本アジア・アフリカ・ラテンアメリカ連帯委員会(日本AALA)三鷹支部
連絡先
*小川: 0422-47-5777
*後藤: 0422-43-5730

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2014年7月 7日 (月)

憲法第18条と徴兵制

内閣官房のHPに、『「国の存立を全うし、国民を守るための切れ目のない安全保障法制の整備について」の一問一答』というのがありました。

http://www.cas.go.jp/jp/gaiyou/jimu/anzenhoshouhousei.html

友人の一人は、「まったく問答の体をなしていない一問一答ってのも珍しいですね。僕が寄生しているマスゴミ界でこんな記事を書いたらまずゴミ箱行き。たちまち失職です」とコメントしていました。

しかし、これは、傑作ですね。どんなに安倍さんが変なことをやっているのかわかるように、官僚のささやかな抵抗の文章ととると理解できますねえ。これを作成した役人のパロディ感覚、あっぱれ!なかでも大傑作は、次の徴兵制の恐れとの関係です。

【問10】 徴兵制が採用され、若者が戦地へと送られるのではないか?
【答】 全くの誤解です。例えば、憲法第18条で「何人も(中略)その意に反する苦役に服させられない」と定められているなど、徴兵制は憲法上認められません。

確かに、この憲法18条の解釈で徴兵制が否定されているという通説や政府見解もありますが、この条は徴兵制を念頭においたものではなく、18条から23条にかけての基本的自由権を述べたグループに当たるものです。憲法9条で戦力の保持を否定していますので、徴兵制の問題は述べる必要がないのです。

憲法論の標準的教科書である、芦部信喜、高橋和之補訂『憲法』(岩波書店、2007年)には、このように述べられています。
 I 奴隷的拘束からの自由
 憲法一八条は、「何人も、いかなる奴隷的拘束も受けない。又、犯罪に因る処罰の場合を除いては、その意に反する苦役に服させられない」と定め、人間の尊厳に反する非人道的な自由の拘束の廃絶をうたっている。
 ここに「奴隷的拘束」とは、自由な人格者であることと両立しない程度の身体の自由の拘束状態(たとえば、戦前日本で鉱山採掘などの労働者について問題とされたいわゆる「監獄部屋し、「その意に反する苦役」とは、広く本人の意思に反して強制される労役(たとえば、強制的な土木工事への従事)を言う。もっとも、消防、水防、救助その他災害の発生を防禦し、その拡大を防止するため緊急の必要があると認められる応急措置の業務への従事は、本条に反しない(災害対策基本法六五条・七一条、災害救助法二四条・二五条等参
照)。しかし、徴兵制は「本人の意思に反して強制される労役」であることは否定できないであろう(228-229ページ)。

 そのまま読めば、長時間労働、過労死、遠隔地配転、強制リストラのための配転、労働保護がなされていない場所での労働などが思い浮かばれますね。しかし、憲法上考えられない想定を、解釈で変えることは、安倍政権の得意とするところですから、「国防の業務もこの18条の解釈に入れ、本条に反しない」とするでしょう。上記の一問一答を読むと、解釈には「何でもあり」の考え方ですから、この18条で徴兵制が禁じられているというのは、品のない言い方ですが(彼らの主張点が品のない内容ですから、『大辞林』にはありますので許していただければ、)、「屁のツッパリ」にもなりません。憲法9条が戦力の保持を禁止していることが、判断の大原則でしょう。

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2014年7月 6日 (日)

自衛隊練習艦隊のキューバ寄港

長年の友人から、このようなメールをいただきました。

「練習艦隊のキューバ寄港のニューズ、事の是非は別として練習艦「かしま」、護衛艦「あさぎり」は懐かしい名前です。
1997年7月、20年ぶりの練習艦隊のペルー訪問ということで、両艦がカヤオに寄港した際に埠頭に出迎え、歓迎のフォルクローレの舞踏団と一緒に踊りました。その様子をビデオ撮影していましたので、帰国後防衛庁にコピーを欲しいと依頼しました。
ところが、帰途ハワイ沖で「あさぎり」が実弾演習をした際に砲身抑え外さずに発射したものですから、自艦の艦首をぶち抜き、日本に戻ってそのままドック入りし、ビデオは送られてきませんでした。ハワイ沖ではその数年前、日米合同演習の対空実弾射撃で米軍の標的曳航機をバルカン砲で撃墜し、パイロットはパラシュートで脱出したので、命に別条ありませんでしたが、大問題になりました。海上自衛隊の実力はこの程度だと「米艦の護衛」などと言って米国から「小さな親切、大きな迷惑」と断れるのでは。
また、「かしま」には多くの美人士官候補生が乗艦していて、艦内見学を楽しみに乗艦しましたが、いつの間にか隠れてしまい残念でした。
シリアスな問題提起にこんなメールで失礼しました」。

(幸いにして?)実戦経験がない海上自衛隊ですが、キューバ訪問に際して、艦内見学で日本食で「おもてなし」し、ブラスバンドで心をうきうきさせ、武道実演で感嘆させても、「実力」はやはりあなどれず、戦争のプロとして、有事の際の軍事情報をちゃっかりこの際集めておこうというものでしょう。

ラテンアメリカで一番ありうるシナリオは、過去70年の歴史が教えるところでは、米国に反抗する(本当は自主的な立場)反米政権をテロ支援国家、悪の枢軸国、ごろつき国家、麻薬国家と決めつけ、その政権を打倒するために侵攻し、その国が反撃すれば、戦力の圧倒的な差から短期間ですが、「戦争」となります。そうすると米国の同盟国の日本は、集団的自衛権行使の原則からいえば、その国の敵国となるのです。米国が苦々しく思っているそれらの国とは?ブラジル、アルゼンチン、ウルグアイ、アルゼンチン、ボリビア、エクアドル、ペルー、キューバ、ニカラグア、エルサルバドルとなります。
どのような理由にせよ、ラテンアメリカから米国を攻撃したことは一度もありません。

第二次大戦後のラテンアメリカにおけるアメリカの干渉
2012年まで14件、内、米軍の直接侵攻3件、傭兵による侵攻3件。
1954年 グアテマラのアルベンス左翼政権、CIA(米中央情報局)支援の傭兵の進入により倒壊。
1961年 キューバのカストロ政権打倒をねらい、アメリカのCIAに支援された傭兵がキューバのプラヤヒロンに侵攻するも、撃退され失敗に終わる。
1963年 英領ギアナで、マルクス主義者のチェッディ・ジェーガンが指導する人民進歩党が主導権をもって独立する動きに対し、ケネディ政権干渉し、バーンハム親米勢力が選挙で勝利する 。
1964年 ブラジルの民族主義的グラール政権、CIAの支援を受けた軍部により打倒される 。
1965年 ジョンソン政権下、ドミニカのボッシュ民族主義政権、カーマニョ大佐を指導者とする民主勢力、米軍侵攻より掣肘される。国連安保理、米州機構(OAS)は、米軍の即時撤退を要求。OASでは米軍を米州平和維持軍に交代させえる案でかろうじて過半数を獲得。チリ、エクアドル、メキシコ、ウルグアイ、ペルー反対、ベネズエラ棄権 。
1971年 ボリビアのトーレス左翼軍事政権、CIAの支援を受けた軍部クーデターにより倒壊。
1973年 チリ、アジェンデ政権、CIAと呼応したピノチェットの軍事クーデターにより倒壊。国際世論から非難される。
1983年 10月25日、グレナダのモーリス・ビショップ左翼政権、米軍侵攻により倒壊。国連で非難される。12月2日の国連総会で、108対9、棄権27で侵略軍の即時撤退が可決される。
1989年 12月20日、パナマ民族主義政権、米軍侵攻により倒壊。国連で非難される。12月20日開かれた国連総会では、米軍の軍事介入を国際法違反として、米軍の即時介入停止、撤退を要求した決議が、賛成75、反対20、棄権40の圧倒的大差で可決された。
1990年 ニカラグア、サンディニスタ政権、CIAの傭兵コントラとの長期干渉戦争により経済が疲弊し、選挙で敗北、下野する。アメリカの干渉ハーグ国際法廷で非難され、全面敗訴する。86年10月、ニカラグア、安保理事会にアメリカの干渉を提訴し国際法の遵守を訴えるも、米国一国反対し、拒否権発動。86年11月3日、国連総会で、コントラへの援助の中止緊急決議、賛成94、反対米国、イスラエル、エルサルバドルの3カ国、棄権47の圧倒的大差で可決。
2002年 ベネズエラ、チャベス左翼民族主義政権に対し、アメリカが支援したクーデター勃発するも失敗に終わる。
2009年 ホンジュラスで、国内の寡頭制勢力、軍部に自主的な立場をとるセラヤ大統領を放逐させ、国外に追放。
2010年 エクアドルの国家警察、ルシオ・グティエレス元大統領を扇動し、コレア大統領を一時軟禁。
2011年 ボリビアの「イシボロ・セクレ国立公園先住民領域」(TIPNIS)の保存事件。
2012年 パラグアイで、大土地所有者と提携し、ルーゴ大統領を弾劾、失職させる。

【ハイチ番外編】
1994年 9月18日 クリントン政権、カーター特使団をハイチに派遣、同特使団とセドラ将軍は、アリスティッド復帰、国連軍、米軍の上陸で合意に達する。しかし、セドラ、退任日を明確にせず、午後6時、クリントン、業を煮やし、ハイチ侵攻を指令。9月19日 米国ハイチに無血上陸、2万人の米兵。
 2004年2月29日 米軍、大統領府に入り、アリスティッドを連行し、国務省さしまわしの飛行機で中央アフリカに。国連安保理事会が軍隊の派遣を討議するために開催されたとき、すでに200名の海兵隊が派遣されていた。

(2014年7月6日 新藤通弘)

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2014年7月 5日 (土)

自衛艦隊のキューバ親善訪問

支倉常長、遣欧使節キューバ到着400年を記念して、自衛隊の練習艦「かしま」(4000トン)、「せとゆき」(2950トン)、護衛艦「あさぎり」(3500トン)が7月5日キューバを親善寄港します。日本とキューバの友好が一層深まると、素朴に受け止める人は幸せです。2隻の練習艦はもとより護衛艦は、最新装備の「軍艦」なのです。キューバ訪問がどういう「練習」になるのでしょうか。キューバの海岸の防衛能力は丸裸となるでしょう。

想い出されるのは、昨年9月のこのニュースです。

13.09.20朝日新聞朝刊
自衛隊「地球の裏側」にも 集団的自衛権で官房副長官補
 安倍政権で安全保障政策と危機管理を担当する高見沢将林(のぶしげ)・官房副長官補は19日の自民党の安保関係合同部会で、集団的自衛権の行使が認められた場合の自衛隊の活動範囲について「『絶対、地球の裏側に行きません』という性格のものではない」と述べ、日本周辺以外での武力行使の可能性を示した。
 高見沢氏は、自民党議員が「(集団的自衛権で自衛隊が)地球の裏側に行って戦争をするのか」と質問したのに対し、「日本の防衛を考えていくとき、地球の裏側であれば(日本は)全く関係ない、ということは一概には言えない」と述べ、内閣の判断によって遠隔地で集団的自衛権を行使する可能性に言及。一方で「米国が行くから全部そこについて行くわけではない」とも述べた。

そして、つい2日前、この高見沢氏が、集団的自衛権行使容認に踏み切った安倍内閣の法整備担当の責任者に選ばれています。

14.07.02 朝日新聞
集団的自衛権行使、関連法案準備へ NSCに担当チーム
 政府は、集団的自衛権の行使を認める閣議決定を踏まえ、関連法案の制定を準備する30人規模の担当チームを、国家安全保障会議(日本版NSC)事務局の「国家安全保障局」に作り、作業を始めた。設置は1日付。
 チームは内閣官房副長官補で同局次長を兼ねる外務省出身の兼原信克氏、防衛省出身の高見沢将林(のぶしげ)氏を筆頭に、武力攻撃事態への対処についての法改正などを検討する班と関係省庁との調整をする班からなる。

「密接な関係の他国(米国)に武力攻撃が発生し」という「新3要件」によれば、キューバは日本の敵国となるではありませんか。どうしても親善訪問と私には素朴に喜べないのです。

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2014年7月 2日 (水)

コスタリカ新政権1か月

コスタリカについての近況が、菅原啓さんにより、素晴らしいレポートで紹介されました。

しんぶん「赤旗」2014年6月24日掲載 掲載写真割愛

4月の大統領選で保守・中道右派の二大政党の支配に反対する新興政党市民行動党(PAC)のルイス・ソリス大統領を誕生させた中米コスタリカ。新政権発足(5月8日)から1ヵ月の首都サンホセを訪ね、政権交代の背景や今後の課題と展望を探りました。             (サンホセ=菅原啓)

コスタリカ新政権1か月
貧困克服に市民期待

 「期待したのは何より汚職の一掃、生活向上だ」-ソリス氏に投票したという公務員のアルペルトーサラスさん(59)はいいます。
 サンホセ中心街を歩くと、軒先で寝ているホームレスや物ごいの姿が目立ちます。1949年の憲法で常備軍の廃止を決め、軍事予算を教育・福祉に回してきたというコスタリカ。確かに国民の生活水準は、内戦で苦しんできた周辺の中米諸国よりは高いものの、都市部での貧困は十数年前に訪れたときと比べて、目に見えて深刻化しています。
 
過去30年間で失業率が最悪
 失業率は2000年の5%から上昇傾向が止まらず現在10%。過去30年間で最悪と報じられています。政府発表の貧困層の割合は約25%。労働者の半数は最低賃金以下の給与しか得ておらず、実際の貧困率はさらに高いといわれています。
 ソリス氏勝利の背景は、悪化する生活条件と前政権与党・国民解放党(PLN)がからむ汚職への国民の拒否反応でした。
 2月に実施された大統領選第1回投票では、変革を求める国民の世論を背景に、左派政党拡大戦線党(PFA)も17%の得票と善戦。PFAは同時に実施された議会(1院制57議席)選挙でも1議席から9議席に躍進しました。
 選挙前の世論調査で一時はトップに立った同党の元大統領候補ビジャルタ氏は、「選挙
結果は左翼勢力にとって歴史的な勝利。とりわけ二大政党状況が崩れたことが重要だ」と指摘します。
 政治評論家らは、最終盤でビジャルタ候補支持票がソリス候補に流れたと分析。元共産党員らが所属するPFAに対し、「PFAが勝利したら外国企業が撤退し、雇用が失われる」などとマスコミが反共・反左翼宣伝を展開したことが影響したとみています。
 
見直しを公約 自由貿易協定
 大統領選で勝ったPACですが、国会議員選では13議席にとどまり、過半数に遠く及びません。同党はPFAや保守政党などと個別に協力協定を結び、課題ごとに政策を進める方針です。
 こうした議会情勢からみて、ソリス政権が選挙公約を実践できるのか疑問視する声もあります。特に、ソリス氏が見直しを公約した自由貿易協定の問題が注目されています。
 コスタリカは、米国と中米諸国の自由貿易協定(CAFTA、08年発効)に加盟しています。しかし、米国や多国籍企業の利益を優先し、自国の伝統産業を破壊するとの懸念から、07年には大規模な反対闘争が起きました。
 与党PACの幹部にはCAFTA反対運動の先頭に立っていた人も多いといいます。
 自由貿易協定反対の運動を続ける市民団体「左派代案運動」(MAIZ=トウモロコシの意味)の幹部ロシオ・アルファロさんは「ソリス氏を勝利させたのは、CAFTA反対運動と国民の世論だ。新たな自由貿易協定を結ばないよういっそう運動を広めるつもりだ」と語気を強めました。
 1ヵ月間のスト闘争のすえ、遅延していた給与支払いを教育省に認めさせた中等教育教員迎合(APSE)のアナ・ゴンサレス議長はいいます。
 「契約教員の拡大など教育の民営化を許さない。自由貿易協定などさまざまな課題で、ソリス政権が公約を誠実に実行するよう圧力を掛けていく。それが選挙結果を生かす唯一の方法だ」


 コスタリカの左派政党・拡大戦線党(PFA)の経済政策顧問で経済学者のセルヒオ・レウベン氏(コスタリカ国立大学元教授)に、同国経済の問題点とソリス新政権の経済政策について聞きました。
     (サンホセ=菅原啓 写真も)

経済学者(コスタリカ国立大学元教授)
 セルヒオ・ レウベン氏に聞く
 国民生活本位ヘの転換を

コスタリカで現在実施されている開発モデルは、新自由主義政策と結びついたものだ。
 コスタリカには、1970年代まで約30年間続いた社会民主主義的なモデルがあったが、これが新自由主義導入で修正されてきた。市場が中心に置かれ、主人公になった。多国籍企業、とりわけ米系企業の支配確立につながった。
 コスタリカでは電力公社などさまざまな政府機関を通じて行われてきた。国民の不平等を解決するためには、このモデルが今でも有効だ。
 米国と中米諸国との自由貿易協定(CAFTA)は、新自由主義プロジェクトの集大成だった。賛否を問う国民投票では、わずか2㌽の差で賛成が上回り、当時のアリアス政権が署名・批准にこぎつけた。これで社会民主主義的な政策が完全に変質し、資本の支配が貫かれることになった。
 それまでコスタリカは平等な国だという権威があっだのに、不平等が急速に広がった。多国籍企業が国の経済を牛耳る事態となっている。これに対して国民の不満が高まり、今回の市民行動党(PAC)の勝利につながったといえる。
 ただ、PACは勝利したものの、モデルの転換をどうやるのか明確になっていない。
 拡大戦線党(PFA)は、革命的社会主義的な方向性を持っている。国民はモデルの転換を望んで、PACに投票した。PFAが勝利できなかった理由は、国民が別のモデルを望んだものの、極端なモデルを望まなかった結果だ。
 新自由主義から国民生活本位のモデルヘの転換には、大企業寄りの政策を減らし、中小企業を支援することが重要だ。経済で中央・地方の政府機関が中心的役割を果たして、改革を進めることが求められている。

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