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2014年7月 2日 (水)

コスタリカ新政権1か月

コスタリカについての近況が、菅原啓さんにより、素晴らしいレポートで紹介されました。

しんぶん「赤旗」2014年6月24日掲載 掲載写真割愛

4月の大統領選で保守・中道右派の二大政党の支配に反対する新興政党市民行動党(PAC)のルイス・ソリス大統領を誕生させた中米コスタリカ。新政権発足(5月8日)から1ヵ月の首都サンホセを訪ね、政権交代の背景や今後の課題と展望を探りました。             (サンホセ=菅原啓)

コスタリカ新政権1か月
貧困克服に市民期待

 「期待したのは何より汚職の一掃、生活向上だ」-ソリス氏に投票したという公務員のアルペルトーサラスさん(59)はいいます。
 サンホセ中心街を歩くと、軒先で寝ているホームレスや物ごいの姿が目立ちます。1949年の憲法で常備軍の廃止を決め、軍事予算を教育・福祉に回してきたというコスタリカ。確かに国民の生活水準は、内戦で苦しんできた周辺の中米諸国よりは高いものの、都市部での貧困は十数年前に訪れたときと比べて、目に見えて深刻化しています。
 
過去30年間で失業率が最悪
 失業率は2000年の5%から上昇傾向が止まらず現在10%。過去30年間で最悪と報じられています。政府発表の貧困層の割合は約25%。労働者の半数は最低賃金以下の給与しか得ておらず、実際の貧困率はさらに高いといわれています。
 ソリス氏勝利の背景は、悪化する生活条件と前政権与党・国民解放党(PLN)がからむ汚職への国民の拒否反応でした。
 2月に実施された大統領選第1回投票では、変革を求める国民の世論を背景に、左派政党拡大戦線党(PFA)も17%の得票と善戦。PFAは同時に実施された議会(1院制57議席)選挙でも1議席から9議席に躍進しました。
 選挙前の世論調査で一時はトップに立った同党の元大統領候補ビジャルタ氏は、「選挙
結果は左翼勢力にとって歴史的な勝利。とりわけ二大政党状況が崩れたことが重要だ」と指摘します。
 政治評論家らは、最終盤でビジャルタ候補支持票がソリス候補に流れたと分析。元共産党員らが所属するPFAに対し、「PFAが勝利したら外国企業が撤退し、雇用が失われる」などとマスコミが反共・反左翼宣伝を展開したことが影響したとみています。
 
見直しを公約 自由貿易協定
 大統領選で勝ったPACですが、国会議員選では13議席にとどまり、過半数に遠く及びません。同党はPFAや保守政党などと個別に協力協定を結び、課題ごとに政策を進める方針です。
 こうした議会情勢からみて、ソリス政権が選挙公約を実践できるのか疑問視する声もあります。特に、ソリス氏が見直しを公約した自由貿易協定の問題が注目されています。
 コスタリカは、米国と中米諸国の自由貿易協定(CAFTA、08年発効)に加盟しています。しかし、米国や多国籍企業の利益を優先し、自国の伝統産業を破壊するとの懸念から、07年には大規模な反対闘争が起きました。
 与党PACの幹部にはCAFTA反対運動の先頭に立っていた人も多いといいます。
 自由貿易協定反対の運動を続ける市民団体「左派代案運動」(MAIZ=トウモロコシの意味)の幹部ロシオ・アルファロさんは「ソリス氏を勝利させたのは、CAFTA反対運動と国民の世論だ。新たな自由貿易協定を結ばないよういっそう運動を広めるつもりだ」と語気を強めました。
 1ヵ月間のスト闘争のすえ、遅延していた給与支払いを教育省に認めさせた中等教育教員迎合(APSE)のアナ・ゴンサレス議長はいいます。
 「契約教員の拡大など教育の民営化を許さない。自由貿易協定などさまざまな課題で、ソリス政権が公約を誠実に実行するよう圧力を掛けていく。それが選挙結果を生かす唯一の方法だ」


 コスタリカの左派政党・拡大戦線党(PFA)の経済政策顧問で経済学者のセルヒオ・レウベン氏(コスタリカ国立大学元教授)に、同国経済の問題点とソリス新政権の経済政策について聞きました。
     (サンホセ=菅原啓 写真も)

経済学者(コスタリカ国立大学元教授)
 セルヒオ・ レウベン氏に聞く
 国民生活本位ヘの転換を

コスタリカで現在実施されている開発モデルは、新自由主義政策と結びついたものだ。
 コスタリカには、1970年代まで約30年間続いた社会民主主義的なモデルがあったが、これが新自由主義導入で修正されてきた。市場が中心に置かれ、主人公になった。多国籍企業、とりわけ米系企業の支配確立につながった。
 コスタリカでは電力公社などさまざまな政府機関を通じて行われてきた。国民の不平等を解決するためには、このモデルが今でも有効だ。
 米国と中米諸国との自由貿易協定(CAFTA)は、新自由主義プロジェクトの集大成だった。賛否を問う国民投票では、わずか2㌽の差で賛成が上回り、当時のアリアス政権が署名・批准にこぎつけた。これで社会民主主義的な政策が完全に変質し、資本の支配が貫かれることになった。
 それまでコスタリカは平等な国だという権威があっだのに、不平等が急速に広がった。多国籍企業が国の経済を牛耳る事態となっている。これに対して国民の不満が高まり、今回の市民行動党(PAC)の勝利につながったといえる。
 ただ、PACは勝利したものの、モデルの転換をどうやるのか明確になっていない。
 拡大戦線党(PFA)は、革命的社会主義的な方向性を持っている。国民はモデルの転換を望んで、PACに投票した。PFAが勝利できなかった理由は、国民が別のモデルを望んだものの、極端なモデルを望まなかった結果だ。
 新自由主義から国民生活本位のモデルヘの転換には、大企業寄りの政策を減らし、中小企業を支援することが重要だ。経済で中央・地方の政府機関が中心的役割を果たして、改革を進めることが求められている。

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