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2012年5月 2日 (水)

ヒバーラ国際貧者映画祭

ヒバーラ国際貧者映画祭

この数十年、映画製作は、ハリウッドを中心にますます大規模となり、総制作費が何十億円と宣伝され、興行収入もそれを上回る何十億円と報道されたりします。しかし、一方で、今年になって「スター・ウォーズ」や「インディ・ジョーンズ」シリーズなどの大作映画で知られるジョージ・ルーカス監督が大作映画の制作からの引退し、小規模の実験映画に挑戦したいという意向をもっていると報じられています。

大作制作の商業主義がまかり通ってしまうと、発展途上国や、良心的な独立プロの映画人は、映画製作が困難となります。市場至上主義の新自由主義グローバリゼーションが拡大するなかで、高制作費映画と低制作費映画の差が拡大し、途上国あるいは少数民族の民族的、文化的多様性が犠牲になる傾向が生み出されました。そして映画人や民族性の自立の必要性が叫ばれるようになりました。

キューバでも、90年代に入り、「非常時」における経済危機から、映画予算の獲得が難しくなり、ほとんどの場合、スペイン、フランス、メキシコなどとの合作映画が制作されるようになりました。しかし、資金協力を得ると、当然、投下資金の回収を確保するため、協力者の側から映画の内容に意見が出され、キューバ側の映画監督は、資金と制作の目的との板ばさみにあうことが少なくないといわれています。

一方、近年映画制作の過程では、デジタル撮影技術、ビデオ映写技術の発展で、技術革新がめざましく、そうした技術を適用すれば、映画制作プロセスが著しく短縮され、低制作費で良心的な映画制作(貧者の映画)が可能となってきました。そこで、2003年、キューバ映画界の重鎮、「ルシア」、「成功した男」、「オチュンのための蜜」の監督、ウンベルト・ソラス監督(1941–2008)が、低制作費(低予算)で映画を制作する運動を提唱し、貧者の映画と題して、キューバの東部のオルギン県のヒバーラ市で、「ヒバーラ国際貧者映画祭」が開催されるようになりました。

ソラス監督の提唱によれば、「貧しいとは、理念や芸術水準が貧しいという意味ではなく、制約された資金の中で制作する映画」という意味です。したがって、低制作費映画は、途上国や恵まれない組織で作成されるものとされています。しかし、制作された映画を上映するには、独占的な映画配給網にも挑戦する必要があります。ところが、デジタル映画や、ビデオ映画は、小さな映画室でも可能で、一般の映画館も含め様々な形の上映が行われています。

こうして低制作費映画は、収益も必要であるが、それよりも作品の制作に関心をもつ映画人が、制約なく自由に制作できることに、大きな魅力があるといわれています。今回来日する「カサ・ビエハ(古きわが家)」の監督、レスター・ハムレット監督(1971-)は、今年の第10回ヒバーラ国際貧者映画祭の実行委員長を務めている、新進気鋭の映画人です。今年の第10回映画祭では、ヨーロッパ、ラテンアメリカ、アジアの20カ国から113作品が参加しました。そのうち、劇映画は、38本(11カ国)、長編11本、短編27本、ドキュメンタリーは31本(長編16本、短編15本)、シナリオは、11本、ビデオ作品は30本でした。劇映画部門の最優秀作品賞は、アルゼンチンのマリア・ラウラ・カサベ監督の「ペロンの寓話」が獲得しました。筆者は、大型画面で迫力ある映画を鑑賞することを否定するものではありませんが、ヒバーラ国際貧者映画祭が、ますます発展するように願っています。

「カサ・ビエハ」は、セルバンテス文化センター東京が開催します「キューバ映画上映会5月10日―12日」の初日、5月10日に上映されます(要予約)。また、上映前にハムレット監督の挨拶もあります。筆者は、3月にハムレット監督と面談しましたが、中々の好印象を受けた礼儀正しい映画人でした。

(2012年5月2日 新藤通弘)
「12.05.10 Casa Vieja 鑑賞のしおり.pdf」をダウンロード

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