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2012年2月27日 (月)

第6回米州首脳会議とキューバの参加問題

第6回米州首脳会議とキューバの参加問題

来る4月14日―15日コロンビアのカルタヘナで開催される第6回米州首脳会議の開催へのキューバの参加をめぐって、米州諸国民ボリーバル同盟(ALBA)諸国と米国との間に応酬が続いています。ことの発端は、2月4日、第6回ALBA首脳会議において、エクアドルのラファエル・コレア大統領が、4月の第6回米州首脳会議に、キューバが招待されなければ、ALBA諸国は出席しないように呼びかけたことから始まります。それに対し、チャベス大統領は、考慮すると回答しました。

一方、米国務省は、2月6日すぐさま反応し、ウイリアム・オスティク同省報道官は、「キューバは、政治的・民主的改善が見られないので、首脳会議への参加の条件を満たしていない」と述べ、キューバの首脳会議への参加に反対の意向を示しました。

2月8日になると、ホスト国であるコロンビアのマリア・アンヘラ・オルギン外相が、訪玖し、ラウル議長(午後)、ブルーノ外相(午前)と会談し、米州首脳会議へのキューバの参加問題を話し合いました。オルギン外相は、キューバに参加要請するも、オブザーバーの資格ということでした。会談の結果は、双方は、関係を一層発展させることで合意しましたが、結論には達しませんでした。オルギン外相は、「明らかにキューバは参加に興味を示した。キューバの参加は、参加国のコンセンサスが必要。コロンビアの招待だけであれば、すべての議論にキューバは参加できないし、キューバはそれを望まない。ALBA加盟国が参加しようとすまいと、われわれはできるだけのことを行っている」と述べました。

15日には、第8回ALBA政治評議会がキューバで開催され、キューバの米州首脳会議への全面的な参加を支持することを決議しました。ブルーノ外相は、もしキューバが米州会議に招待されるなら、出席すると述べました。他方では、その他の国々でキューバは、米州機構(OAS)のメンバーでないので、参加する資格はないという議論も出ています。

しかし、ここには、米州機構(OAS)と米州首脳会議との混同があるようです。OASは、第二次世界大戦後、米国が冷戦構造の中で共産主義の「封じ込め政策」を打ち出し、その政策の一環として1948年4月30日、米国主導のもとに米州機構憲章が採択され、それが1951年10月13日に発効し、設立されたたものです。米州機構に先立ち、1947年共産主義の進出から米州を守る目的で、軍事同盟条約、「米州相互援助条約(リオ条約)」が設立されており、米州機構はリオ条約と対をなしています。

現在、米州機構の加盟国は35カ国、本部はワシントンにあります。事務総長は、チリ人のホセ・ミゲル・インスルサ元チリ外相。組織上、キューバは加盟国として扱われていますが、1962年1月米州機構は「キューバをマルクス主義国家であり、米州機構とは相いれない」とした制裁を決議し、機構への参加を排除しました。そこで、キューバは、1962年米州機構からの脱退を表明しました。一方、リオ条約は、現在、加盟国はキューバを含め22カ国、しかしキューバは1962年米州機構理事会の決定で参加を停止されています。また、近年になるとメキシコは、条約の現代的意味は失われたとして、2004年9月脱退しており、事実上機能していません。

一方、米州首脳会議は、第一回サミットは、1994年12月マイアミで開催され、米州のキューバを除く34カ国が参加ました。開催の意図は、米国が進める米州自由貿易圏構想(FTAA)の同意を取り付けようとするものでした。その後、2005年11月の第4回アルゼンチンのマル・デ・ラ・プラタ会議で米国のFTAA構想がとん挫したことは良く知られているところです。前回の会議は、2009年4月に開催されたトリニダード・トバゴでの第5回サミットでした。その会議で、8カ国がキューバの米州首脳会議への参加を求める意見をだしました。しかし、その際、OASに復帰することが条件であるとはされませんでした。そして、1カ月後の第39回米州機構(OAS)総会で、1962年1月31日にOAS外相会議で採択された、キューバ排除決議が、35カ国中、34カ国の賛成で(キューバは出席せず)無効であることが満場一致で決議されました。

このように歴史的にみると、OASと米州首脳会議は、別組織なのです。米州首脳会議には書記局もあり、そのホームページでは、次のように会議を紹介しています。
「米州首脳会議は、西半球諸国の国家・政府首脳が集まるものである。・・・首脳会議設立の当初から、西半球諸国の優先事項、必要事項を適切に討議するように、広範な種類の優先事項が設定されてきた」。

つまり、米州首脳会議は、OASの付属物、OAS総会、OAS首脳会議とは述べていないのです。この点を、エクアドルのパティニョ外相は、「米州首脳会議は、OASの機構内にはない」と、適切に指摘しています(Terra, Febrero 9, 2012)。したがって、OASのメンバーではないキューバが米州首脳会議に参加することは、何ら矛盾しないのです。

ところで、キューバは、この米州機構(OAS)は、「設立以来米国のラテンアメリカ支配の道具とされ、グアテマラ反革命侵攻(1954年)、キューバのプラヤ・ヒロン傭兵侵攻(1962年)、米海兵隊のドミニカ共和国侵攻(1965年)、米軍のグラナダ侵攻(1983年)を支持し、マルビナス=フォークランド戦争(1982年)、米軍のパナマ侵攻(1989年)などにおいてまったく無力であった。もう機構そのものが腐敗しており、役に立たないので復帰するつもりはない」と繰り返しのべています。

しかし、筆者には、こうしたキューバの原則的ではあるが、かたくなな態度は、キューバのOASへの無条件の復帰を主張している国際社会の多くの善意にどう沿うことができるかと危惧されます。確かに米州機構は、アメリカのラテンアメリカ支配の道具として使われてきましたが、近年ラテンアメリカにおいては自主的な動きが強まり、米国の対キューバ経済封鎖、コロンビア軍のエクアドルへの越境攻撃(2008年)など、問題によっては米州機構の中で米国が孤立する場面もしばしばみられるようになってきています。キューバが無条件に復帰すれば、米国は積年の反共主義政策の誤りを認めたことになります。さらには米州機構という土俵の中で正当な議論によって米国やその他の域内の国の不当な覇権主義政策、内政干渉政策があれば、それを批判するなどして国際社会で正しい世論をつくりあげていくこともできるでしょう。機構が、歴史的に問題を抱えているにしても、米州憲章は、国連憲章の尊重とともに、紛争の平和的解決、各国の主権と独立の尊重、各国の平等、領土保全をうたっており、加盟国にそれらを文字通り遵守させるよう働きかけることが重要ではないかと思われます。

今回の議論は、キューバがOASに復帰していないことも問題を複雑しているように思われます。米国が出席する米州首脳会議には参加するが、米州機構には参加しないというのも一貫性が欠けているように思われます。キューバは、双方の機構に参加し、米国もOASのキューバ復帰には反対していないのですから、双方の機構へのキューバの参加を認めるべきではないでしょうか。

(2012年2月27日 新藤通弘)

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