« オッペンハイマー:キューバを知らない「キューバ通」 | トップページ | 2011年キューバ10大ニュース (1) »

2011年12月31日 (土)

米国のグローバル覇権主義戦略から見た韓米自由貿易協定とTPP

米国のグローバル覇権主義戦略から見た韓米自由貿易協定とTPP

11月22日、韓国国会において韓米自由貿易協定(FTA)批准同意案が、「奇襲」の形で強行採決されました。「だまし討ち的な」強行採決は、本来、韓米自由貿易協定の必要性が低いこと、経済・食料主権を守ろうとする国民の反対が強いことをうかがわせます。

 もともと経済大国は、世界制覇を強固にするために自由貿易を強要するものです。18世紀の半ば、マルクスは、自由貿易が持つ本質を次のように喝破しています。
「なるほど(イギリスは、自国の農業を守っている)穀物法を廃止すれば農業は破滅するだろうが、しかし、ほかの国がわが国の工場から必要な物を輸入するようになり、それらの国の工場が廃棄されるということにはならないだろう。・・・自由貿易により一国の内部に発生するすべての破壊的現象は、もっと巨大な規模で全世界の市場に再現する。一般的には、保護貿易制度は保守的である。これにたいして自由貿易制度は破壊的である。・・・自由貿易による競争はあらゆる商品の価格をその生産費の最小限まで引き下げ、したがって賃金も最小限まで引き下げられる」(マルクス「自由貿易間題についての演説」全集④一部読みやすく改訳)。

ところで、1990年代以降米国が推し進めている自由貿易は、多国籍企業が進める新自由主義による市場原理主義と覇権主義的世界戦略が結びついたものです。米国は、ヨーロッパ連合にも加盟できず、ラテンアメリカでも米州自由貿易圏(FTAA)を推進できずに、経済支配の地域を太平洋地域に転換してきたのは明白です。そこで、昨年米国は、国家戦略として「世界経済をリードする」ため、5年間で輸出を倍増し、雇用を200万人増大することを決めています。その中心市場が環太平洋地域なのです。

そこで、米国は中核の政策として、「自由で公正な市場アクセスの確保」という名目で、環太平洋連携協定(TPP)や、二国間FTAを推進することと表明しています。その推進力となるのは米国が結んでいる軍事同盟で、いずれの軍事同盟も経済的連携を柱の一つとしています。

したがって、オバマ政権は、軍事同盟を締結している日本(日米安保条約)とオーストラリア(豪米安全保障条約=ANZUS)とは、多国間自由貿易のTPPを、韓国(韓米相互防衛条約)とは二国間自由貿易の韓米FTAを強引に推し進めているのです。

11月27日、オバマ大統領は、オーストラリア議会で、「アジア太平洋における米国のプレゼンスと任務は最優先事項であり」、「他地域では防衛費を削減しつつも、将来の予算では、この地域では強力な軍事力を維持するのに必要な資源を割り当てる」と軍事的戦略を述べつつ、経済面では「韓国との歴史的貿易協定を足場として、米国は、APEC〔アジア太平洋経済協力会議〕を始め、これまでで最も野心的な貿易協定、環太平洋連携協定〔TPP〕を実現する途上にある」と、米国のグローバル国家戦略を明言しています。

それゆえ、韓米FTAでは、米国投資家による国際投資紛争仲裁センター(ICSID)への提訴権を認める条項や、米国企業が期待した利益を得られなかった場合、米国政府が米国企業の代わりに、ICSIDに対して韓国を提訴できる条項、韓国にはほとんど実行不可能なセーフガード条項など、韓国の国家主権を侵害する屈辱的な諸条項を、李明博(イミョンバク)政権は受け入れさせられ、国民の強い批判を浴びているのです。

また、基本的に米国は、協定の目的は、「自由で公正な市場」の実現ですから、今後いかようにも問題が投げかけられることが危惧されます。現在の日本が行っているTPP加盟交渉では、同じような米国の一方的な要求が出されてきますし、もしTPPを締結した後でも「自由で公正な市場」となっていないと際限なく要求がエスカレートする恐れがあります。

しかし、本来、自由貿易は、対等、平等、相互尊重、互恵の原則に立ってはじめて双方の経済発展と国民生活にプラスになるものです。

本稿は、全国商工新聞、2011年12月12日掲載したものを加筆したものです。

(11.12.31 新藤通弘)


|

« オッペンハイマー:キューバを知らない「キューバ通」 | トップページ | 2011年キューバ10大ニュース (1) »

番外編」カテゴリの記事