« ボリビア新憲法(2009年)、邦訳される | トップページ | ボリビア、住民の生活向上か、自然環境維持か。問われているもの。 »

2011年9月29日 (木)

米玖、丁々発止の非難合戦?

米玖、丁々発止の非難合戦?

9月28日、オバマ米国大統領が、ヒスパニック系ジャーナリスト(MSNラテン、AOLラテン、Huff-Postラテン、Yahooスペイン)とのラウンド・テーブル懇談で、ラテンアメリカについて言及しました。その中で、キューバに関して次のように述べました。

「キューバ国民は、これまで50年にわたって、自由を享受してこなかった。現在、世界のどこでも民主化運動が見られる。ラテンアメリカ全体で、民主主義が、以前の権威主義体制から生まれたのである。キューバにも同じことが起きる時が来たのだ。

われわれは、もしキューバ政府が自らの国を開放するように踏み出し、人権を尊重し、自国民が自らの運命を決定するのを許すならば、キューバとの新しい関係を開くというサインをキューバに送っている。

われわれは、家族送金を緩和し、家族訪問を緩和したし、教育目的の渡航も緩和した。われわれは、三つの修正を行い、われわれは、柔軟であり、冷戦思考に固執していないとのサインを送った。他方で、われわれは、キューバ政府から、サインが帰ってくるのを見なければならない。それは、政治犯の釈放、国民の基本的人権の容認である。しかし、少なくとも、禁輸措置(経済封鎖)を解除することができるようなキューバ国内の変化を示す精神はまったく看取されない。

来年度何が起きるか、私には分からないが、キューバに何が起きるのか注視している。もし、われわれが、積極的な動きを見るなら、積極的な方法で応えよう。私が大統領である限り、キューバ政府が自国民に自由を与えるという真摯な意図が見え始めれば、われわれのキューバ政策を変更する用意がある。

自由と経済改革を分離するのは大変難しい。もし国民が政府を通じてでなければ食べる方法がないならば、政府は、国民に対して非常に厳格な統制を持つようになり、国民は、どんな手段で自らの意見を表明するすると罰されてしまう。それは、われわれが禁輸措置を解除する条件は、彼らが完全な市場制度をもつことであるということではない。というのは、明らかに、われわれは、自由な民主主義が欠けている多くの国々と、貿易と交流を行っているからである。

しかし、基本は、労働し、仕事を変え、教育を受け、ビジネスを始めるという国民の人権の承認である。つまり、いくつかの自由の要因には、どのように経済制度が働いているのかということが含まれる。現在、キューバにおいていかなるそうしたものも見られない。

明らかに、もし政治囚が釈放され、国民が意見を表明し、政府に請願することができるのが見て取れれば、もしこれらの重要な前進が見て取れれば、われわれは注意を払い、疑いもなくキューバ政策を再検討するであろう」。

一見、もっともそうな論理ですが、そもそも1962年に米国政府が、キューバに経済封鎖を敷いたのは、キューバの革命体制を一方的に認められないとしたからでした。しかし、イギリス、フランス、ドイツ、スペイン、日本などの「自由世界」の国々でさえ、キューバとの貿易を継続し、米国の経済封鎖に同調することはありませんでした。

1990年代にはいると、1992年よりキューバ政府は、米国のキューバ禁輸措置の解除を国連に訴え、毎年国連総会では討議され、決議されています。1992年には、賛成59カ国(33%)、反対3カ国、棄権71カ国、欠席46カ国だったものが、2010年には、賛成187カ国(97%)、反対2カ国、棄権3カ国、欠席0カ国となりました。この投票動向の変化に、世界の流れと、考え方は明白に示されています。米国の禁輸措置政策は、もはや時代錯誤となっているのです。

米国の禁輸措置は、米国が世界でも稀な価値観で一方的に設置したものです。その措置を解除するに当たって、被害者に何らかの譲歩を要求するのは、筋が通らないことです。米国が、キューバにもし何らかの変化を要求するならば、まずは、何らの条件も付けずに禁輸措置を解除し、普通の立場に立ち、自由、対等、平等、互恵、相互尊重、内部問題不干渉の原則に基づいて、自由に自らの意見を展開すれば良いことです。同じことは、キューバ側にも言えることです。

9月21日のオバマ大統領の国連演説を、フィデル・カストロ前国会議長は、最近の25日・26日の『省察』、「チャベス、エボ、オバマ」で、「わけのわからないおしゃべりを誰が理解するであろうか。信じがたい論理の矛盾と混同を出席者に披歴しただけだ。彼の演説は、空虚で、道徳的権威に欠け、意味不明である」と酷評しました。

一方、9月26日、キューバのブルーノ・ロドリゲス外相は、国連総会演説で、パレスチナ加盟問題、リビア空爆問題で、厳しく米国を批判しつつも、最後に、「キューバ政府は、米国との関係正常化が前進することに関心がある。二国間の諸問題、つまり、人道的問題、麻薬輸送・反テロ取り締まりでの協力協定の締結、人身売買、自然災害、環境保護、メキシコ湾における石油汚染の問題の解決に向かって対話を開始するよう提案する」と述べました。フィデルの発言とは異なった、現実的で建設的な論調のブルーノ外相の発言に、むしろキューバ政府側の真意があるとの見方をする研究者もいます。

そのあと、このオバマ発言です。双方が丁々発止の批判を行っていますが、お互いに背を向けての非難合戦ではありません。前を向き合っての姿勢です。これまでの歴史が示しているように、このようなとき、水面下では意外に冷静に両国が話しあっているものです。
(2011年9月29日 新藤通弘)

|

« ボリビア新憲法(2009年)、邦訳される | トップページ | ボリビア、住民の生活向上か、自然環境維持か。問われているもの。 »

外交」カテゴリの記事