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2011年9月14日 (水)

チェンジが必要なオバマ大統領のキューバ認識

チェンジが必要なオバマ大統領のキューバ認識

オバマ米大統領が、相変わらずのキューバ認識を示しました。各種の報道を総合すると、12日にワシントン在住のスペイン語圏の記者との記者会見の席上で、大統領は、次のように述べました。

「キューバ政府は、企業がより自由に活動するように、経済統制をより少なくしたいと述べていた。しかし、その経済政策を変えることに積極的であったという証拠は見られない。キューバが進めている社会主義システムは、時代錯誤である。この6カ月間に中東で見てきた巨大な変化について考えてみると、世界の権威主義的な共産主義国は、もはやほとんど存在しなくなっている。ところが、この小さな島のキューバは、60年代に後戻りしているのである。キューバの政策は、明らかに機能しておらず、生活水準は、著しく改善されているどころか、実際は悪化している。

世界がより開放されているときに、キューバの人びとの自由は、引き続き制限されている。明らかに共産主義の島の政府にとって、チェンジの時期が来たのだ。しかし、現在まで、この機会を利用して、変革を行っているかという点で、われわれが気に入るような証拠を見てはいない。

さらに、キューバ政府は、政治囚を釈放することに、また、彼らに考えを表明する機会を与えることに余り熱心ではない。

われわれが行った、キューバへの渡航制限と家族送金制限を緩和する措置は、引き続き正しいものであり、キューバ国内に一層の市民的自由を拡大するものと考える。

(キューバでスパイ容疑により逮捕され、収監中の)米国人のアラン・グロスへの判決は、証拠や法治国家に基づかないものであり、逮捕者の健康に関する人道的問題もある。グロスは釈放されなければならない。グロスを釈放することをキューバが拒否していることは、キューバ政府が推進している米国への接近政策に影響を及ぼすものとなるだろう。(現在キューバを訪問している)リチャードソン(元ニューメキシコ州知事)は、キューバで、『人道的使命で民間人の資格』で活動しているが、政府を代表するものではないとはいえ、リチャードソンが、どんな形であれグロスの釈放を勝ち取ることを支援する」。

こうした、キューバの内政に関するオバマ大統領の表現は、米国の対キューバ政策が、相変わらず、現実を見ない誤ったものです。オバマ大統領は、米国の内政面で新自由主義政策の弊害に苦しむ社会の状況を、問題が新自由主義政策から来たものであるという認識はないものの、一応は困難を把握し、「チェンジ」を唱えて、政権につきました。また、外交面でも、世界が米国の一極支配から多極世界に変わってきていることを認識して、08年4月の第5回米州サミットでは、「私がここにいることは、長い時間がかかったが、米国は変わった(チェンジした)ということを示しているのである。それは、容易ではなかったが、変わったのだ。われわれは、われわれの関係に上下のない対等のパートナー関係を追求しなければならない」と述べた。

オバマ政権は外交面で、若干の前進もありましたが、オバマ大統領流にいえば、「対等なパートナーシップの構築に熱心ではない」ようです。また私達がのぞむようなチェンジが内政面でも外交面でもあったという証拠は見られません。

オバマ大統領は、キューバ問題の専門家でもありませんので、国務省のキューバ担当者からレクチャーを受けての発言でしょうが、それにしても国務省の対キューバ認識は、ブッシュ政権の時代と余り変わりません。それは、今年8月に発表された、「世界テロリスト報告2010年」にも見られます。同報告では、「メキシコやコロンビアで麻薬テロに対して積極的な努力が払われている」と積極的に評価する一方、キューバを、イラン、スーダン、シリアとともにテロ支援国家と規定しています。このリストがいいかげんなことは、適否は別として、北朝鮮との政治交渉の中で、北朝鮮をリストから除外した方法にも見られます。

キューバは、このテロ支援国家に1982年のレーガン政府以来、指定されています。本年度の報告では、次のように述べています。
「キューバは、2010年でもテロとテロリズムに財政支援を継続している。しかしFARC(コロンビア革命軍)との関係、またバスク祖国と自由(ETA)との接触についてのメディアの報告の証拠はない。3月、キューバ政府はスペイン警察にキューバ国内でETAの調査することを許可した。キューバは、引き続き、米国の世界における反テロ活動を批判している」。

そうであれば、証拠がないのに、どこから、キューバがテロ支援国家と規定できるのでしょうか。すでに、1996年のキューバに関する報告では、「米国政府は、もはやキューバが積極的にはラテンアメリカアメリカや世界のその他の部分での武装闘争を支持していないことを確認しています」(H. Michael Erisman, Cuba's Foreign Relations in a Post-Soviet World, University Press of Florida, Miami, 2000. 270, p.170)。オバマ大統領流にいえば、国務省の認識は「時代錯誤であり、80年代に後戻りしている」ということになるでしょうか。

オバマ大統領は、08年4月の第5回米州サミットでは、「対等のパートナー関係は、相互尊重、共通の利益、共通の価値観に基づいた約束である」と、正しく述べています。しかし、今回の発言は、利益や、価値観は違っても、とても「相互尊重」に基づいたものとはいえません。利益や価値観は違っても、「相互尊重」があれば、双方で平和が追求できるものです。

現在、キューバでは、少しずつながら、経済改革が進められています。経済活動の自由度、市場開放度は、米国の基準が模範的であるというものでもありません。各国にはそれぞれ固有の歴史的な条件があります。民主的な課題については、米国が主張する民主主義の形態が模範的、唯一であるいうものでもありません。むしろ、米国の干渉政策そのものが、キューバ国内の人権などに制限をもたらしている歴史的事実を見なければなりません。また、今回の発言は、大統領選で第4番目の大票田であるフロリダ州のキューバ系米国人対策の発言であるかもしれません。しかし、米国は、先ずは干渉政策をやめて、キューバの民主化の努力を黙って見るのがあるべき米国の態度でしょうか。

経済改革の速度、範囲、深さ、方法は、キューバ国内の歴史的、現実的条件にもとづいて、キューバ国民が自主的に決定することで、いかなる他国も指図することではありません。

(2011年9月13日 新藤通弘)

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