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2011年4月 1日 (金)

カーター元大統領の良心

カーター元大統領の良心

3月29日から、キューバを訪問中の、カーター元米大統領(1977-81)が、30日、ハバナで記者会見を行った。会見の全文が、キューバ共産党機関紙『グランマ』に掲載された。カーター元大統領は、任期中ワシントンとハバナに相互の利益代表部を開設したり、SR-1スパイ飛行の停止、米国市民のキューバ訪問の許可、米国経済水域内での漁業の許可などを進め、両国の関係は大きな改善がみられた。

発表された記者会見で、カーター元大統領は、米玖関係の諸問題について、自論を全面的に展開した。その内容は、安易に政治的な観点からバランスを取るのではなく、実際に米国、キューバ双方に見られる誤りを真摯に分析し、双方が克服すべき問題を率直に指摘し、説得力ある良心的な提案となっている。なお、より良く理解するために、他のマスコミでのインタビューから若干補足した箇所もある。

言及された主なテーマは、
① 米国の対キューバ経済封鎖
② 相互の訪問の自由、
③ キューバにおける人権の改善
④ ヘルムズ=バートン法
⑤ アラン・グロス、ハバナに収監中の米国人
⑥ 米国に収監中の5人のキューバ人
⑦ テロ国家リストへのキューバの記載
である。

以下、要点を紹介しよう。

 大多数の米国民はキューバとの関係正常化を望んでいるので、米国は、経済封鎖を即座に解除すべきである。また、米国からキューバに、またキューバから米国に何らの制限なく旅行できるようにすべきである。
 将来、すべてのキューバ国民が、国際的な人権基準にもとづいて表現、集会、旅行の完全な自由をもつように希望する。
 ラウル議長と、詳細にわたり会談した。フィデル・カストロ前議長は健康のように見えた。古い友人として話しあった。
 ラウル議長の指令と枢機卿の協力により最近釈放された囚人でキューバに残った人たち、12名と会った。釈放され出国した人たちは、出国したスペインや、その他の国々から、キューバに帰国したいと願っている。(筆者注:出国後11カ月を超過すると自由に帰国できなくなる)
 5名のキューバ人の拘留は意味がないと思う。米国での裁判所においても、世界の人権組織の間でも疑問があった。すでに12年拘留されており、罪があろうとなかろうと、近い将来釈放され、家に帰されるものと期待している。
 スパイ活動容疑でキューバで収監中の米国人、アラン・グロスと会った。彼は、キューバ国民とキューバ政府に対して脅威をもたらしたという意味では無実であるが、長期の収監という判決を受けた。彼もまた近いうちに釈放されると期待している。
 アラン・グロスと5人の交換釈放を交渉するという考えを持って、キューバに来たのではない。グロスは、重大な犯罪を犯してはおらず、5人のキューバ人はすでに12年間収監されており、裁判当初の状況、判事、米国の司法制度には疑問があった。従って、二つの問題は別々の違った問題で、関連付けてはならない。グロスは、判決された罪は犯しておらず、将来、恩赦されるか、人道的理由で釈放されるように期待している。
 この記者会見で述べた考えと、私と米国政府高官との間にのみ知っておくべき、より内密なことは、帰国後、オバマ大統領とクリントン国務長官に述べるつもりである。
 関係改善の第一歩は、米国の側からのキューバへの旅行制限の解除である。また、キューバへの人道基金の送金についての諸制限は、ヨーロッパ連合の国々が困っているので、これも解除すべきである。
 ヘルムズ=バートン法を承認し、署名したのは、クリントン大統領の重大な誤りである。この法律は、カストロ体制を打倒すること、体制を変革することを目的としている。しかし、困難は、キューバ政府にではなく、キューバ国民に与えるもので、逆効果である。キューバ系米国人議員の米議会指導者たちは、少数であるが、政治的には強力な勢力であり、キューバの体制に制裁を課そうとしているが、逆で制裁を課しているのはキューバ国民に対してである。
 テロ支援国家リストから、キューバを除外すべきである。キューバと米国の諜報機関は、非常に緊密に協力してアルカイダや湾岸地域のその他の組織の脅威に対決している。米国の唯一の論拠は、コロンビア革命軍(FARC)とバスク祖国と自由(ETA)であるが、コロンビア、スペイン政府とも、キューバにおいて友好的にこれらの組織と話しあえる機会があるという点では、肯定的にとらえているのである。

今回、ラウル議長は、ハバナ空港で、カーター元大統領を見送ったあと、「米国の歴史上、最良の大統領であった」と述べた。双方の問題点を率直に指摘し、良心的な提案をしたカーター元大統領の誠実な態度にふさわしい評価といえよう。米国政府や、米国の有力な研究者達の間にある、今度はキューバが、人権改善の「譲歩」を行うべきだという主張と違って、関係悪化の原因を米国側の対キューバ「制裁」政策にあることを認識して、まずは、米国側からキューバ旅行のあらゆる制限の撤廃を主張していることは、正当でもあり、現実的でもある。米玖関係の改善の根幹は、この指摘にある。
(2011年3月31日 新藤通弘)

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