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2010年12月

2010年12月30日 (木)

キューバ、第6回党大会討議文書:経済・社会政策路線案の問題点

第6回党大会討議文書:経済・社会政策路線案の問題点

来年度の4月16日~19日の間に開催されるキューバ共産党第6回党大会の討議文書が、11月9日発表された。ラウル・カストロ議長によれば、「ついに(経済改革)の列車が発車したのである」。「経済・社会政策路線案」は、全部で32ページに及び291項目の政策が提起されている。

全体は、次のように12章に分かれている。
I 経済活動モデル
IIマクロ経済政策
III対外経済政策
IV 投資政策
V 科学、・技術・イノベーション政策
VI 社会政策
VII 農工業政策
VIII 工業及びエネルギー政策
IX 観光政策
X 運輸政策
XI 建設・住宅・水資源
XII 国内商業政策

この中で、これまでキューバ提起されていなかった問題点で重要なものを紹介しよう。これらを見れば、もはやこれらの変革が「経済モデルの更新」であるか、あるいは「経済改革であるか」を議論することは、すでに意味がなくなっていることがわかる。なんとなれば、ラウル議長自身が、12月18日の国会閉会演説でこれらの政策を、「戦略的な変革」と述べているからである。たとえば、最近、数点の政府の農産物買付価格の改訂(値上げ)を行ったところ、それまでの36の政府決議を無効にしなければならなかったという。これらの改革は、キューバの社会経済構造を大きく変革するものであり、中には「革命の中の革命」と呼ぶアナリストもいるが、あながち誇張ではないといえよう。

これらの特徴をまとめれば、
1. これまで長い間放置されてきた歪んだ経済制度を大きく変更するものとなっている。
2. しかし、理念的には、過渡期の社会主義の建設を維持することを目的としている。
3. 計画を優先するが、市場を否定せず、管理した市場を活用する。
4. しかし、市場の管理方法については議論がされていない。
5. 改革を進めるも、所有面では社会的所有を譲らない。
6. 自営業、協同組合、私企業、自営農などを推進し、従来の国営企業を必要最小限にしつつ多様な所有形態を目指している。
7. 所有と経営の分離を図り、生産者の生産意欲を奨励する。
8. 国の過剰な保護主義を改め、企業への補助金、個人への物質への補助金、画一的な無料制度及び配給制度、生活保護を廃止する。
9. 医療、教育、社会保障も国の財政収入に見合った、身の丈に合せた制度とする。
10. 2015年までに180万人及ぶ労働者が再配置されるが、業務団体を新たに結成するか、労働組合の結成をどうするか議論されていない。
11. 180万人に及ぶ再配転者への失業保険期間、職業訓練などが不十分。
12. 新たな自営業、生産・サービス協同組合、農民に対する経営資金の援助を、困難な国家財政の中でどう行うか明確ではない。
13. 政府が、これらの新しい業務への資材の供給網を来年度3月末までに整備できるか、問題である。

第6回党大会討議文書:経済・社会政策路線案の新政策の重要点
 経済モデルの更新においては、計画が市場よりも優先される。
 協同組合は、生産の一部を自由販売できるようにする。
 企業の倒産を認める。
 企業への破産時の国の補助金を廃止し、代わりに企業は貸倒積立金を引き当てる。
 通貨の発行を規制する。
 非国営部門への融資を促進する。
 二重通貨の漸進的廃止。
 税制の再検討。
 社会的支出は国の税収の範囲内で行う。
 輸出補助金、輸入代替補助金を再検討する。
 価格体系を総合的に再検討する。
 国の価格決定は必要最小限にし、企業の価格決定権を増大する。
 経済特区を開設する。
 投資建設において報奨金、遅延罰金制度を検討する。
 政府の投資には入札制度を設ける。
 医療分野の不要な経費を削減する。
 全国の医療サービス施設の配置の再検討。
 国の予算において社会保障費の比率を削減する(年金生活者が増大)。非国営部門の労働者にも負担を求める。
 労働に応じた賃金体系とし、賃金の購買力を回復する。
 国営部門の過剰労働者を削減し、民間部門の労働者を増大する。
 賃金の購買力を回復し、不要な無料制度、過剰な個人への補助金を削減し、真に必要な個人への保障とする。
 配給制度を漸進的に廃止する。
 障害者、家族支援がない人に対し生活保護を保障する。
 土地の使用権を付与された農民の農産物は、大部分自由販売とする。
 住宅の修繕、維持を優先的に行う。そのための資材の販売を非国営商店を通じて行う。
 住宅の交換、売買、賃貸の手続きを簡素化する。
 社会的所有の様々な経営形態を推進する。
 卸売、小売制度の再編成を行う。
 民間の新たな生産・サービス形態の要望に応えるために、卸売流通体系を再検討する。
 配給生活必需品の小売価格を再検討し、補助金を廃止して国内ペソでの自由販売を増やす。
 商業活動の諸規制の撤廃を検討する。

(2010年12月30日 新藤通弘)

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2010年12月19日 (日)

「指令の経済か、利潤の経済か」

「指令の経済か、利潤の経済か」
キューバで経済改革論議が活発に行われている。12月1日からは、職場、居住区(革命防衛委員会CDR)、大衆組織でキューバ共産党第6回党大会の討議資料、『経済・社会政策路線』案が、国民の間で広く討議されている。

一般に、複数政党制となっている国では、共産党の討議資料は公開はされるが、党外の人びとが意見を表明することはあっても、党外の人びとの討議に付されることはない。キューバ共産党員(85万人)以外の人びとの間で討議を進めるという、このキューバ独自の討議方法は、キューバが一党制となっている制約からくるものである。キューバ共産党は、党規約第2条で、「入党は自発的で、模範的労働者の選出会議と各個人の選定によって行われる」と規定している。つまり、非党員が大多数をしめる(党員は、労働者の10%余)職場の会議で、模範的労働者と認められ、選定されることとなっている。綱領と規約を承認すれば、党員の推薦人を得て入党を申請できるという、世界一般の政党への入党手続きとは、異なる珍しい方法である。従って、政府の高官の中でも、いろいろな事情で「模範的労働者の選出会議」にかからなかった場合、非党員であることが、めずらしくない。

本来なら、本年5月に閣僚評議会で承認された「2011-2015年経済5カ年計画」が公開され、職場や、居住区、大衆組織で、広く国民の討議に付されるべきであろう。しかし、この5カ年計画は、未だ公開されていず、8月の国会でも討議されず、経済学者なども知らないという。

この5カ年計画と『経済・社会政策路線』との関連は、ようやく12月の第7期第6回通常国会で、マリーノ・ムリージョ経済計画相によって明らかにされた。それによれば、5月7日―8日に閣僚評議会で「2011-2015年経済5カ年計画」が討議、承認された。11の作業グループが設けられ、5カ年計画、党政治局経済委員会と閣僚評議会執行委員会から出された指針、第5回党大会の経済決議の達成状況報告書の三つの文書を参考にして、291の経済社会政策路線が作成された。8月27日に4種類の報告書が作成され、党政治局経済委員会、閣僚評議会執行委員会がそれらを検討して、9月29日に最終案が承認された。つまり、5カ年計画は別に存在するが、それを基礎として経済社会政策路線が作成されたのである。経済社会政策路線は、今回の国会で15日から4日間にわたり、集中して討議された。

それはともかく、12月5日ラウル議長は、「討議においては、なんら心配せずに適切と考える反対意見を表明してほしい。いろいろな意見の違いを擁護してこそ、最良の解決策がでてくるものである。32ページわたる文書には、われわれが行わなければならない経済での改善案、必要な修正案が盛り込まれている。ついに列車は進行しはじめたので、大いに満足している」と述べた。291項目に及ぶ提案は、相互に関連しており、かつ草案では提案されていないことも、改革の結果としてこれまでにキューバ社会が問題としてこなかった新たな問題を生みだし、まさにキューバ社会の全体に及ぶ改革となり、「経済モデルの更新、あるいは刷新」という範囲に留まらないであろう。

こうした討議の一つとして、キューバ共産党の青年組織であるキューバ共産主義青年同盟(UJC)の機関紙、『フベントゥ・レベルデ』に、12日、キューバのエコノミストの重鎮、ホアキン・インファンテのインタビュー記事、「指令の経済か、利潤の経済か」が掲載された。ホアキン・インファンテ博士は、60年代の革命初期、農業改革庁(INRA)総裁のカルロス・ラファエル・ロドリゲスとともに、財政問題専門家として農業改革を指導し、工業相のゲバラと激しい論争を展開しことで知られている。2000年にキューバ・エコノミスト賞を受賞し、現在は、キューバ・エコノミスト協会の顧問である。以下、同氏の主張を紹介しよう。

「キューバは、ソ連型の現存社会主義モデルを導入したが、それは物質的計画を重視するものであって、価値や財政的結果を重視するものではなかった。われわれは、国も、企業も、国民も成果があったかどうかが、また赤字、能力不足が隠されることに慣れてしまった。

財政を重視すれば資本主義が出てくると考えられ、計画と経済政策において過度の集権化が進められた。一つの例が、国営の経済部門における公式為替レートが、1ペソ=1ドルとなっていることである。この架空のレートでは、真の貨幣価値が考慮されず、生産原価も、輸出入品の原価もわからない。このレートでは、輸出の奨励、輸入の抑制もままならない。権限を分散してこそ、企業は、現実の原価を把握することができるが、そのためにはこの間違ったレートを修正しなければならない。(本ブログ2009年1月10日 (土)、「キューバについての7つの神話(5)6.賃金はわずか17ドル?」を参照)

企業への政府の補助金は、企業の赤字に対して補助するのではなく、本当に国民に原価以下で供給する必要がある品物のみを補助するようにしなければならない。

経済の中央管理が極端になり、外貨管理も外貨残高を管理するのではなく、外貨収入を管理するようになった。これでは、企業の単純再生産さえも保障できない。企業は、資材を使用したあと、国からの資材の供給を待たなければならないということがあっていいだろうか。権限を企業に委譲すれば、企業は収益性、効率を考えるようになる。

卸売価格は、財政価格省が決定するのではなく、収益性を考えて企業間で決定されるように自由化が必要だ。そうすれば企業の赤字も避けることができる。また、原価を正確に把握するようにした後で、小売価格の自由化も必要だ。

改革により2011-2012は、困難と犠牲が生じるであろう。しかし、こうした多くのことを矯正するには、他に方法がない。そうしなければ、社会主義を失ってしまうからである。2013年には成果が現れ始めると確信している。

経済が沈滞している中で、これまでの社会計画を堅持できるかという問題の背景には、近年あまりにも非生産部門が重視され、生産部門が顧みられなかったということがある。

これまで旧い観念で、労働者一人当たりの物質的単位で生産性を考え、財政的な側面を考慮せずに経済を運営してきたが、これは、経済の健康を悪化させている原因である。砂糖がポンド当たり6セントと30セントでは、あるいは砂糖の品質が二等級と三等級では問題が違うのである。

資本主義から社会主義への変革は、本来、何世代にもわたるものであるが、われわれは、短期間に変革することができると考えた。1967年原価の概念を廃止し、経済の諸法則を廃止すれば、(ゲバラが提唱した)「新しい人間」を実現することができると考えた。しかし、一般に人は、労働において刺激を受けなければならないものである。「社会主義の分配法則」を忘れてしまったのだ。社会主義は、権利と機会の平等であり、画一的平等主義ではない。この画一的平等主義では、労働のモチベーションが失われ、中途半端なものとなる。

未だ、理想的な社会主義が建設されたことはない。国民を幸せにしないような、物資を国民により良く再分配できないようなものが社会主義といえるのだろうか。資本主義企業と社会主義企業の違いはどこにあるのか?双方とも、収益を上げなければならないし、原価を考慮しなければならないし、独立採算でなければならない。しかし、資本主義企業では、富は経営者に入り、社会主義企業では国と国民のものとなる。しかし、社会主義企業は効率でなければならない。

「経済・社会政策路線案」では、企業は180度転換しなければならないとされている。労働者は、賃金を企業の経営の結果と結び付けて考えなければならない。企業は、政府との契約を履行したあと、その利益を、企業の発展、労働者への報奨金、外貨の自由使用ができるようにしなければならない。

集団においては、全員の収入は、成果にかかっているので、労働者が政策決定に参加できるようにしなければならない。企業が倒産することもありうるとなれば、労働者、企業幹部全員が影響を受けることとなる。これにより、企業は、経営を適切に行うようにしなければならないようになる。

官僚主義をなくすためには、われわれの経済の観念を変えなければならない。計画が市場よりも重視されるとしても、市場も認めなければならない。基本的な資材は、計画が管理し、供給する。しかし、たとえば、自営農は、特定の農産物の計画が達成されたならば、需要と供給のメカニズムの中で生産をおこなうようにしなければならない。

改革の中で最も困難なことは、二重通貨の廃止である。企業間ではペソとドルは1対1であるが、住民への外貨交換所では1対25である。企業間の交換レートはペソが過大評価されており、住民用の交換レートは、外貨が過小評価されている。したがって、まず初めに企業間の交換レートを改めなければならない。

農業改革庁(INRA)で、カルロス・ラファエル・ロドリゲス総裁の下で、私が財政・価格局長であったころを思い出す。1965年に農業改革庁では、原価を重視することを決め、いろいろなことが改善されたが、その後でたらめなことが行われ、それを現在われわれは、再び矯正しなければならないのだ。しかし、私は楽観している。この世から去る前に、経済が順調に進むようになると思う。」

(2010年12月18日 新藤通弘)

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2010年12月 2日 (木)

キューバ経済の十戒とある知識人の懺悔

キューバ経済の十戒とある知識人の懺悔
「重要なことは、ついにことが始まったということだ」という言葉が、現在、キューバ人の日常の会話で最も聞かれる言葉といわれている。

9月13日、キューバ政府は、職場の過剰人員という歴史的な問題の解決に取り組むことを発表した。国営企業・官庁の労働者490万人のうち、過剰といわれる100万人余を他の部門に、自営業、協同組合などの形で再配分しようというものである。タイム・スケジュールとしては、来年の3月末までに50万人を、12月末までに50万人を再配置することになっている。

引き続き、9月28に政府は、労働力の再配置に伴い、失業保険、社会保障の特別措置を発表した。そして11月8日、ラウル議長は、2011年4月後半に第六回党大会を開催すると発表。党大会は、経済問題に集中して討議が行われるとされ、「経済・社会政策路線案」が公表された。その後、政府関係者、研究者の様々な段階でこの路線案が討議され、12月1日から職場、居住区で一般労働者、市民の討議に付されている。80万人余の党員を擁するキューバ共産党の大会討議文書であるが、一般市民の間で討議されるというのは、キューバ独特の方法である。一般討議は、来年の2月28日まで続けられる。

ラウル議長の言葉を引けば、今キューバで最も重要で中心的な課題は、経済面でのたたかいである。また、満場一致はまやかしで、いろいろな意見があることは、討論の内容を豊かにし、より正しい結論を引き出すことができると、ラウルはことあるごとに力説している。

こうした討議の中で、最近、キューバ共産党中央委員会機関紙『グランマ』に、ジャーナリストであり、作家でもあるフェリックス・ロペス氏の興味深い記事が掲載された。それを紹介しよう。記者は、まず、キューバ社会に広く見られる経済面での罪状を告発する。

「もし経済学に、聖書が信者に与えているような数千年にわたる掟のような、十戒というものがあれば、なんと多くのキューバ人が経済の罪を犯したことであろうか。あるものは規則を破り、あるものは権限外のことを行い、多くのものは無知から罪を犯した。同時にこれら三つのことから罪を犯したものもいる。たしかなことは、大多数の人々が、経済の十戒はわれわれとは何の関係もないように考えているが、実際は毎日の生活で罪が犯されていることである。
 この瞬間にも、少なからずの罪が発見され、無知が分かり、国民の経済問題が無視されていることを悩んでしまう。そう、われわれキューバ人は、家庭内の計数では専門家である。あるものは本来生活費に大きく不足するはずの賃金だけで生活できるように奇跡を生みだし(職場で不正を行い)、あるものは海外からの家族送金に収入を頼り、あるいは『作りごと』によって、働かずに生活するずるいものは後を絶たない。幸いにも『生存の経済』ではあるが、完全にあるべき現実とはかけ離れているのだ」。

続いて、ロペス氏は、犯されている経済上の罪を具体的に描いている。
1. 経済のイロハは、計画、生産性、収益性、投資、効率、節約。これらは相互に密接に絡んでいる。しかし、この基本的概念が理解されていない。
2. 労働は、経済の源泉であるが、働いているもの、非効率に働いているもの、怠惰なもの、働かないものにも、同じ賃金が支払われている。これはキューバ経済のいたるところで見られる現象である。これは持続できない。社会主義の原則、「能力に応じて働き、労働に応じて受け取る」を否定している。
3. 革命の50年にわたり経済の効率を議論してきたが、実現していない。経済学は、マルクスがいう生産諸関係の科学であることを理解していないし、軽視している。効率の文化を作ってこそ企業改革を進めることができる。
4. 経済には秩序が必要。節約し、貯蓄することが重要。種を播いたあとで、刈り取ることができるのだ。しかし、キューバでは、しばしば、種をまく前に収穫し、生産しないものを食べたがっている。
5. 生産諸力を刺激しない経済となっている。資本主義は、効率的でなければ破産するという信賞必罰の制度である。
6. 飛行機の飛行が精密な指針と規律を必要とするように、経済路線の現在の討議により規則と方向性が設定され、それを学習しなければならない。
7. われわれの社会主義では、非効率な企業が、主導権を握っている。国に貢献し、福祉と富を生みだしてこそ、企業の存在価値があるのである。
8. キューバは、経済モデルを更新するが、そのモデルは平等至上主義というものではない。労働者が、生産手段の運営により積極的に参加するモデルである。
9. 指導者及び一般国民が、経済の専門知識をもつようにして、生産諸力をより適切に組織しなければならない。

ロペス記者は、このように問題点を列記して、国民みんなが、経済問題について国技の野球のように関心を持ち、知識をもつようになれば、過剰雇用(労働者の25%)や、不要な投資が行われたり、途中で生産を止めて輸入しなければならなくなるといったことはなくなるであろうと述べている。

ロペス記者は、キューバ経済の十戒として列記はしていないが、その指摘から、キューバの経済の十戒として記せば、次のようになるであろうか。
1. 経済の基礎概念をよく理解しなさい。
2. 労働に応じた賃金を支払いなさい。賃金のみで生活ができない現状は、この法則の違反です。
3. 企業の生産の推進力として常に効率を考え、効率ある国の経済としなさい。
4. 国も企業も、収入に応じて支出し、赤字とならないようにしなさい。
5. 生産力を刺激する経済としなさい。
6. 精密で規律ある経済指針をもちなさい。
7. 企業では、効率性を重視しなさい。
8. 平等至上主義を止め、労働者が生産手段の運営に積極的に参加する経営としなさい。
9. 国民すべてが、特に政府幹部が経済の知識を深め、より適切に生産を組織しなさい。

と、ロペス記者の主張からすればここまでであるが、筆者は、記者の意向を敷衍(ふえん)して、10番目の戒めとして次のことを追加したい。
10. 過渡期社会であるキューバで、市場を恐れてはなりません。管理することを良く考えつつ、市場を活用し、効率ある経済、効率ある企業活動を達成しなさい。

しかし、キューバでは、「経済・社会政策路線案」に記載された291項目の方針を総称して、「経済(モデル)改革」とは呼ばれていない。政府指導部の間では、「改革」ということを避けて、公式には「経済モデルの更新」と呼ばれている。「改革」となれば、それまでのフィデルの政策をラウルが否定する構図となるからであろうか。しかし、内容からすれば、「経済改革」と呼んで差支えないであろう。また、「計画を市場よりも優先する」と述べられているが、新たな方針にはいたるところに市場機能の導入が見られる。効率ある経済とするためには、現実的には避けられないことであるからである。

ロペス記者は、この政策の国民的討議を通じて、「国民の大衆的経済識字化を進めよう」と結んでいる。経済の改革は、懺悔から出発し、経済の十戒を守りつつ進めなければならない。

(2010年12月3日 新藤通弘)

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