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2010年11月 1日 (月)

キューバと核廃絶

キューバと核廃絶

気になるニュースがある。9月27日付の朝鮮中央通信(KCNA)によると、キューバ訪問中の北朝鮮のキム・ヒョン・ジュン外務次官が、24日フィデルと会談し、その席上、フィデルが次にように述べたと報道されていることである。

「キューバは、キム・ジョン・イルの先軍政治を、米国の核脅迫から国家主権と社会主義を守るために核兵器を含む強力な戦争抑止力を持つにいたったことを、全面的に支持すると、フィデル・カストロ、キューバ共産党第一書記は述べた」

なお、奇妙なことに、9月22日の朝鮮代表団のキューバ訪問については、キューバ国内で報道されているが、この件については、会談の事実さえ報道されていない。もちろん、朝鮮中央通信の虚偽の報道と考えることはできない。

キューバは、核不拡散条約(NPT)は核保有国の核独占に問題があるとして、批准しなかったが、2002年11月、同条約を批准した。また、2008年11月には、ロシアとの共同声明で、NPT再検討会議の成功を期して核拡散に反対で一致したと述べている。さらに、本年5月5日には、キューバは、国連のNPT再検討会議で、具体的な行動計画として、2025年までに核兵器の全廃、中東での非核地帯の創設、イスラエルのNPT加盟を提案した。また、その後、5月末までのグランマ紙でのNPT再検討会議についての報道も、それを積極的・肯定的に評価するものであった。こうした従来のキューバの非核政策は、世界の多くの人々の関心と賛同を呼ぶものであった。

こうしたキューバの従来の政策からすれば、北朝鮮の核保有を全面的に支持するという態度は、どのように整合するのであろうか。NPTには、既存の核保有国に核保有を許しつつ、新たな核保有国を禁止するという矛盾点はあるが、世界の流れは、その矛盾を克服するために再検討会議が開かれ、核保有国も核廃絶に向かうことを承服せざるをえなくなっているところである。米国の核脅迫を受ければ、核保有はやむをえないという論理が通れば、次々と核保有国が増え、核兵器の廃絶に向かって議論している世界の世論の流れと、またNPTそのものと矛盾するのではないだろうか。

6月以降、フィデルが独自の核問題の意見を主張するようになってから、NPTについての肯定的言及がグランマ紙にみられなくなっているのも気になるところである。

最近(10月15日)、フィデルは、「核戦争に反対するメッセージ」を発表した。そこでは、次のように述べている。

「今日、核兵器の使用による戦争の差し迫った危機が存在している。米国とイスラエルによるイランに対する攻撃が、不可避的に世界核戦争になることはいささかの疑いもない。
各国国民は、生存する権利をそれぞれの政治指導者に要請する義務がある。一刻の猶予もなく生存の権利の尊重を要求しなければならない。明日では遅すぎるのだ。
われわれは、核兵器あるいは通常兵器、すべての戦争に役立つものを廃棄すべきだと宣言する勇気をもとう」。

フィデルは、今回も、期日を示さないものの、持論の「核戦争緊迫論」を展開している。これまで、フィデルは、オバマが核戦争の引き金を握っているので、オバマを説得することが重要だと述べていたが、ここでは、各国国民がその国指導者を動かすことが必要だと、論点が変わってきている。願わくば、「各国でまた世界で政治指導者も含め、大きな反核運動を展開して」と述べてほしいものである。

また、フィデルは、今回は、通常兵器の廃棄も提案している。もちろん、核兵器のみならず、通常兵器の廃棄も望ましいものであるが、段階的な通常兵器廃棄の軍縮の提案でなく、一気に通常兵器の廃棄の宣言となるとどれだけ現実性があるだろうか。キューバが米国の様々な干渉政策に直面している現在、果たして、キューバが率先して通常兵器の廃棄を宣言し、実行できるであろうか。

フィデルが、核兵器の廃絶、通常兵器の廃絶を提唱することは、評価されることである。しかし、世界の運動の現実を背景にして、綿密な、現実的な論理の展開によって、その内容がより大きな意味をもつであろう。

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