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2010年11月 8日 (月)

科学的社会主義と軍備撤廃

科学的社会主義と軍備撤廃

先月10月15日、フィデルが核戦争に反対するメッセージで、「われわれは、核兵器あるいは通常兵器、すべての戦争に役立つものを廃棄すべきだと宣言する勇気をもとう」と呼びかけたことは、11月1日付、「キューバと核廃絶」で紹介した。

核兵器廃絶、通常兵器廃絶は望ましいことだけに、少なからずの人々がこの提案を善意あるものとして高く評価しているであろう。

しかし、科学的社会主義の創始者たちは、軍備撤廃、常備軍の廃止について、どう考えていたのであろうか。

エンゲルスは、1845年『エルバーフェルトにおける二つの演説』において、未来社会の共産主義社会では、常備軍は財政の面からも不要で、廃止されると、次のように述べている。

「今日の社会になくてならない、きわめて費用のかかる施設の一つは、常備軍である。常備軍は、住民中のもっとも強壮で有用な部分を国民から奪い、このようにして不生産的にされたその部分を養うことを、国民に強制する。・・・共産主義社会では、常備軍のことを考えようとする人間などは、一人もいないであろう。・・・防衛戦争をやるためにか? そのためなら常備軍はいらない。なぜなら、軍務に耐える社会の全成員に、日常の仕事のかたわらで、国土の防衛に必要な範囲で、観兵式用ではなく、実戦用の兵器の扱い方をならわせることは、たやすいことだからである。・・・文明国民が軍隊によって奪われているこの無数の労働力は、共産主義的組織のもとでは労働に返還されるであろう」(全集第2巻)。

マルクスは、1871年、パリ・コミューンの経験から、資本主義から社会主義への過渡期の社会では、国民軍が存在すると述べている。

「旧政府の抑圧的な諸機関は取り除かれ、正当な諸機能は取り戻される。常備軍を解体し、国民軍を創設する」(全集17巻)。

レーニンも、1916年12月レーニン、「『軍備撤廃』のスローガンについて」において、軍備撤廃は、社会主義の理想ではあるが、現実の社会の歴史的条件のもとでは、軍備が必要であることを力説している。

「軍備撤廃のための基本的な前提の一つは、・・・われわれは、戦争に反対であり、およそあらゆる戦争に反対である。そして、われわれのこの見かたをもっとも明快に、はっきりと明瞭に表現したものこそ、軍備撤廃の要求である、というのである。
この考えは、まちがっている。社会主義者は、社会主義者であることをやめないかぎり、あらゆる戦争に反対することはできない。・・・
軍備撒廃は社会主義の理想である。社会主義社会には、戦争はないであろうし、したがって、軍備撒廃が実現されるであろう。だが、社会革命とプロレタリアートの独裁をほかにして、社会主義の実現を期侍する人は、社会主義者ではない。・・・『軍備撤廃』を綱領にいれることは、われわれは武器の使用に反対だ、と一般的に言うことを意味している。ここには、われわれは暴力の行使に反対だ、というばあいと同様に、マルクス主義のひとかけらもない!」(全集第23巻)。

しかし、レーニンは、軍備撤廃と軍縮とを区別して考えた。1922年、レーニンは、ジェノバ会議でソ連代表として活動しているゲ・ヴェ・チチュリンに指示して、通常兵器の削減を提案すると同時に、毒ガスなどの大量殺戮兵器については、廃絶を提案した。チチュリンへの手紙で、レーニンは次のように述べている。

「私には、平和主義的なプログラムを、君自身この手紙のなかでみごとに述べたように思われる。
(六)われわれは、わが国で、共和国革命軍事会議いらい定まっているテーゼから出発して、全般的軍備縮小を提案する。
(七)われわれはさらに、ハーグ条約、ジュネーヴ条約の伝統を発展させて、戦争法規を、さまざまな禁止条項、潜水艦の廃止、毒ガス、迫撃砲、焼夷弾、空中戦の廃止などで補足するよう提案する」(『ゲ・ヴェ・チチュリンへの手紙』全集第45巻)。

このソ連の代表の道理ある提案は、世界政治に非常に大きな影響をあたえ、三年後の1925年には「窒息性、毒性またはその他のガスおよび細菌学的方法を戦争に使用することを禁止する議定書」が結ばれることになった。以降、大量殺戮兵器を通常兵器と切り離して、廃止するということは、科学的社会主義の立場となり、それはまた歴史のうえで実証された理論となっている(吉岡吉典『戦後軍縮交渉と核問題』(新日本新書、1985年)。

一つの例は、1959年にフルシチョフ・ソ連首相が提案した軍備全廃案である。同首相は、同年9月、突然、国連総会において三段階四ヵ年で軍備を全廃するという全面完全軍縮を提案した。第一段階では通常兵器を削減する、第二段階で通常兵力を解散全廃する、第三段階で核兵器を全面廃絶するという内容であった。しかし、それを実施すると、第三段階では既存の核保有国のみ(米ソ英)が、核兵器という軍備をもつことになる。この提案は、こうした矛盾した内容をもつもので、実現性の薄いものであり、結局は世界の世論の同意を得られなかった。

現在の核廃絶問題でも、まずは、大量破壊兵器の核兵器を緊急問題として廃絶し、通常兵器は、段階的に削減交渉で廃止するというのが、科学的社会主義の原則となっている。

(2010年11月7日 新藤通弘)

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