« フィデルの言動から目が離せない | トップページ | フィデルの言動から目が離せない(3) »

2010年9月10日 (金)

フィデルの言動から目が離せない(2)

ある友人から、「フィデルの発言に対する新藤さんの批判のポイントはどこでしょうか?」、
「フィデルの発言のスタイルといったものに対する批判ですか」という質問をいただきました。

昨日の文章は、抑制して書いたものだったので、文意があいまいだったかもしれません。以下に、少し、明確に書いてみましょう。記者の質問とフィデルの回答は次のようでした。

質問:「あなたは、今もキューバ・モデルを、輸出する価値があると思っているのか」
回答:「キューバ・モデルは、キューバにとってさえも機能していない」

ゴールドバーグは、フィデルの回答に驚いて、同席のアメリカ人のキューバ専門家のジュリア・スイッグにフィデルの発言の解釈を聞いて、それを記事で紹介していますが、それは、ジュリアの解釈で、フィデルの発言の真意は、発言以上のものでも、以下のものでもありません。国内問題については触れないというインタビューの前提があったと思われますが、なんとか、「モデルの輸出」という国際問題にからめて、国内問題を発言させようというゴールドバーグの巧妙な作戦が伺われます。フィデルも、国内問題を長々と説明するわけにもいかず困ったものでしょう。

「モデル」という意味が、キューバ経済だとすると、「もはや機能していない」ことは、ラウルの近年の度重なる発言で、明白です。「キューバは、働かなくても生活ができるという世界でも唯一の国であるという観念は、永久に消し去らなければならない」と、ラウルは、今年の8月の国会の演説で適切に指摘しました。「わが国の経済モデルを改革するために数カ月検討したあと、7月16日―17日に拡大閣僚会議を開催した。それには、複数の国家評議会副議長、党政治局員、党書記局員、県党第一書記、県行政評議会議長、キューバ労働者センター(CTC)幹部、大衆団体、青年共産同盟指導部、各省庁の幹部も参加した」とラウルは、同じ演説で述べており、国と政府の総力をあげて、経済モデルの改革に取り組んでいるところです。それでも、毎日の生活に苦しんでいる一般の国民の目からは、改革の速度が緩慢であるという批判が少なくありません。

問題は、今のキューバ経済は、そういう否定的な段階に留まっておらず、したがって、その問題を議論する意味もなく、歴史的な誤りから脱出しようと、不十分ながらも様々な努力を行っている段階です。そこを言えばいいので、歴史的な誤りを再確認するだけでは、現在の改革をぼかすことにもなりかねません。

「キューバ・モデルは、もはや機能していない」という発言は、キューバ・モデルという、「代表的なモデル」がそもそも存在しないうえに(中央指令型経済で、ソ連、中国、ベトナムなどにも存在しましたが、特にキューバ・モデルとはいえません)、モデルというあいまいな表現から、「キューバの体制そのものが機能していない」という全否定の解釈を生みだす恐れがあります。実際、国際ニュースでは、「社会主義そのものが機能しないことを認めた」という論調も多く流れています。

私ならば、「キューバ・モデルというものはないし、ラウル他指導部が困難の克服に努力しているところだ」とでも言っておくでしょうか。
(2010年9月10日 新藤通弘)

|

« フィデルの言動から目が離せない | トップページ | フィデルの言動から目が離せない(3) »

経済・政治・国際」カテゴリの記事