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2010年9月23日 (木)

「第7期第5回通常国会」でのラウル・カストロの閉会演説。要旨

キューバの経済改革について注目が集まってきているようです。特に最近発表された50万人にのぼる過剰雇用の問題、労働力の再配置の問題は、60年代からの歴史的課題です。キューバ国内でも、賛否、疑問、不安などいろいろな議論が巻き起こっています。しかし、この問題に取り組まないで、キューバの経済改革は進みません。この問題を考えるには、8月1日のラウル演説が重要です。以下、簡単に紹介しましょう。

2010年8月1日「第7期第5回通常国会」でのラウル・カストロの閉会演説。要旨 (新藤通弘訳)

7・26の演説をマチャド・ベントゥーラ同志が行ったことに驚いた人もいた。この演説は、全く素晴らしいものであった。これまでこの日は、フィデルが、またまれに私が演説を行ったが、重要なことは、弁士ではなく、演説の内容である。それは、全国の重要な問題について党と国家の指導部の集団的な意見を述べるものである。

多くの国外のメディアが、わが国の経済・社会の予想される改革や、経済を調整するための資本主義的な対策の適用を報道していた。中には、革命指導部に諸傾向があり、それらの間の闘争を述べるものもあったりしたが、社会主義路線を解体する路線で急速かつ徹底した改革を要求する点では一致するものであった。

55年余の革命闘争の経験からすれば、われわれはそれほど悪い状態ではないし、あきらめと不満が毎日われわれに付き添っているものでもないように思われる。マチャド同志が7・26の演説でのべたように、思いつきや、急ぎ過ぎず、一歩一歩責任をもって対処しなければならないのだ。

革命内部、指導部、大多数の国民の団結は、われわれの最も重要な戦略的武器である。今日われわれの団結は、かつてなく強固であり、いつわりの満場一致、日和見的な欺瞞の結果ではない。団結は、真摯な意見の相違を排除するものでなく、異なった意見ではあるが、同じ社会的公正と民族主権という最終目的をもった討議を前提とするものである。その方が常により良い結論に至ることができるのである。

キューバの経済モデルを現実的なものにするために数カ月検討したあと、7月16日―17日に拡大閣僚会議を開催した。それには、複数の国家評議会副議長、党政治局員、党書記局員、県党第一書記、県行政評議会議長、キューバ労働者センター(CTC)幹部、大衆団体、青年共産同盟指導部、各省庁の幹部も参加して、国家部門の膨大な過剰人員の削減について漸進的に採用する方式について議論し、合意に達した。

まず、第一段階、2011年の第一四半期に過剰労働者への労働・賃金措置を修正し、丸抱え主義を廃止し、雇用の期間と関係ない平等主義の賃金、長期間の非勤労時の賃金の保障など、非生産的な政府の出費を削減する。そのためには、党の指導の下にCTCの積極的な参加、労働者との透明な対話が必要。

誰が、職場に残るかは、見びいきや、性差別などで決めてはならない。

閣僚会議は、また自営業を拡大すること、過剰労働者の雇用の方法として利用することも決定した。そのためには、免許を交付するあるいは生産物を販売するうえでの現行のいろいろな禁止条項を廃止し、また労働力の契約を柔軟化する。

同時に、自営業の税制の適用も承認された。自営業に携わる人びとが社会保障費を支払い、個人所得税と売上税を支払い、労働者を雇用するものは労働力雇用税を支払うことも承認された。近くCTCの全国委員会を開催し、詳細を討議し、実際の構造的改革となる。それは憲法の社会主義的性格、政治、社会的制度は後戻りできないという意思を達成することである。

こうした措置の実現には、労働者階級、農民、その他の社会分野の人びとの支持が決定的である。効率と生産性の向上なくしては、賃金を増額し、輸出を増大し、輸入を代替し、食料を増産し、われわれの社会主義制度の膨大な支出を支えることはできないのである。

この合意を実行するにあたり、だれも投げ出される人はいず、社会主義国家が尊厳ある生活のために必要な支援を行う。キューバは、働かなくても生活ができるという世界でも唯一の国であるという観念は、永久に消し去らなければならない。また、第6回党大会経済政策委員会の任務において検討が進められ、提案の作成のために作られたいろいろな作業グループが継続的に活動している。それらは、事前に党員及び国民全体と検討することになるだろう。

国際経済分野を述べると、国内経済での砂糖と農牧畜生産は、指導上の誤りと干ばつの結果目標は達成されなかったが、上半期は元気づけられる結果であった。外国人観光客は増加し、石油生産は維持ないしは若干改善し、国内通貨は均衡し、労働生産性は、平均賃金を上回った。これは数年なかったことである。輸出は若干増加し、エネルギー消費が減少した。電気消費は、国家部門では減少したが、民間の住居部門では予想を上回った。

一年前には、国外への支払いを制限したが、それにより支払いが蓄積し、債務の繰り延べをしなければならなかった。支払繰延では交渉が若干前進し、繰延した債務は新しい期日で確実に支払う意思がある。当時の外国への支払いの停止額は、現在3分の1となっている。その結果外国銀行のキューバ国内での預金額が増加している。

最近2003年に国家安全保障に違反したため処罰された53名のうち最初の21名が釈放された。2004年から22名が釈放されていた。これらは思想で処罰されたのではなく、米国政府、経済封鎖政策、撹乱政策に奉仕してわが国の法律に違反したため逮捕されたものどもである。祖国の敵に利してわれわれの独立を危険にしようとするものに無実はない。

米玖関係について、本質では何ら変わっていない。つまり、われわれの大事な5人の英雄は不当に収監され、過酷な取り扱いを受けている。非難はより少なくなり、特に限定された問題で二国間の協議が時折行われているが、現実には経済封鎖は引き続き継続されている。

簡単な新藤コメント
1)経済問題では、具体的方針としては、過剰労働者の問題と自営業拡大の問題を提起しているのみです。しかし、この二つは複雑な問題で、いろいろな改革が派生します。

2)53人の釈放問題では、なぜ、超法規的に、法律を無視してまで、行政で釈放したかという説明がありません。EUのクレジットの取得、対米関係の改善ということは言えないでしょうから。

3)米玖関係では、「本質では何ら変わっていない」という慎重な言い回しに注意する必要があります。水面下では、キューバ人5人とグロス諜報員との交換交渉が行われているようです。フィデルがそれをにおわすことを言っていますが、公式には発表されていません。ただし政府系ブログにビデオで出ています。これは、いずれ書きます。

4)ラウルが海外のメディアの動向、国内の指導部の団結について言及していますが、この二つは、これまで触れたことがなかったと思います。この点を相当気にしたようです。海外のメディアは、国内の国民の不満を取材していますので、改革への期待を必要以上に強調し、逆にラウル指導部は、それにガードを固める、マチャドに至っては、ポピュリスト的な解決はしないとまで、国民の意向に背を向けたような発言を行っています。

5)7月16日―17日に拡大閣僚会議が開催されました。これは、複数の国家評議会副議長、党政治局員、党書記局員、県党第一書記、県行政評議会議長、キューバ労働者センター(CTC)幹部、大衆団体、青年共産同盟指導部、各省庁の幹部も参加した重要会議でしたが、キューバの公式メディアは、同日のフィデルの外務省での講演は大々的報道したものの、この会議についてはまったく報道しませんでした。海外メディアも報道せず、参加者に報道管制が敷かれたようです。国民は、8月1日のラウルの演説までまったくこの会議を知らなかったことになります。詳細に報道しなくても、会議の開催や討議項目程度は、会議の重要性から国民に知らせるべきではないでしょうか。

6)また、5月に閣僚評議会で2010-2015経済計画が策定されたと、マヌエル・ムリージョ経済・計画相が述べているが、発表されていません。当然、こうした重大な路線は、国民にしらされるべきでしょう。

7)フィデル独自の核戦争の緊迫主観主義的情勢論(勃発期日の予想)、米国、イスラエルが、北朝鮮、イランを核攻撃するというものに関しては、7・26の記念演説(マチャド・ベントゥーラ国会評議会副議長)、7月28日から開催された、第7期第5回通常国会の12の常設特別委員会(国際委員会もあり)、7月31-8月1日の本会議、ラウルの国会閉会演説でも、核戦争の緊迫した危機は、全く触れられませんでした。

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