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2010年7月30日 (金)

ラプソディア・クバーナ

ラプソディア・クバーナ

最近読んだ、二つの記事を紹介しよう。いずれも、キューバのどこかで、毎日のように起こっている、あるいは話題にされている、キューバの市井を良くあらわしているものである。一つは、キューバ共産党中央機関紙『グランマ』に掲載された読者の投稿、もうひとつはキューバ青年共産同盟中央機関紙『フベントゥ・レベルデ』に掲載された評論家のホセ・アレハンドロ・ロドリゲスの記事である。それぞれ要約であることを、ご了承いただきたい。

(1)二つの問題についての意見。
私は、本紙でわれわれの社会の困難についていろいろな意見が交わされているのを読んでいる。また、わが国が直面している問題は、大変解決が困難なものであるが、少しずつ解決しなければならないという意見が交わされているのを耳にする。

問題は、最近少し改善してきたものの、これまでメディアが、勝利主義で良いところだけを報道してところにある。

私は、1959年(革命勝利の年)13歳で、働き始めた。マタンサス県の小さなマナグア町には、当時製靴工場が三つあった。当時キューバの人口は、6-700万人だった。その上、民間の製靴工場があった。私は、工場労働者として働き、幸運にも23年して工場の保守責任者までになった。80年代には、これらの工場は、最新の技術と設備を装備した最新の工場であった。今日でも最新の設備といえよう。

しかし、どうなったか。マナグアには製靴工場はひとつもなくなった。あまり品質も良くない輸入品に席を譲ったからだ。輸入された靴は、キューバで生産するよりも安いからだという。中国からの運賃、労賃はどうなのか、失われた雇用、靴作りの誇りは?と考えてしまう。こうした結論を出したのは、軽工業省及び製靴企業連合の重大な間違いだと思う。今や前に述べた最新工場は廃墟となっており、キューバの他の県で手芸品として完全に手作業で非生産的に靴が作られている。わが町では、手作業でさえ、工業的に靴は作られなくなったのだ。

私は、キューバでどのくらい工場が閉鎖されたかという数字をもっていない。しかし、サンアントニオ・デロスバーニョス、キビカン、サン・ニコラス、カラバサールなどで閉鎖されたことを知っている。いつの日か、われわれが履く靴の多くが、キューバ製であるというニュースを聞くことができるだろうか。

もう一つの問題は、行政上の決定権の中央集権化である。これは米国の経済制裁と同じ程度にわが国に弊害を与えている。私が、ハバナ市での企業で働いていた時、私の企業が銀行口座に多くの外貨ペソ(CUC)をもっていても、電線を被覆するためにビニール・テープを買うにも、その金がビニール・テープ用に割り当てられていなかったので、買うことはできなかった。

さらに銀行口座は、架空のものだった。というのは、小切手さえも銀行が作らなければならず、問題を解決するには、次のように時間がかかったからだ。

① 買付公団は、ハバナ市まで契約書をもらいに行かなければならない。
② 外貨委員会の会議の開催を待たなければならない。
③ その後、銀行が企業を応対する日を待たなければならない。
④ その後、小切手を受け取り、品物を受け取りに行かなければならない。
⑤ もし、企業の契約書に不備があればどうなるか。銀行は、書類を突き返し、再度契約書をもらいに行かなければならない。

最終的に、銀行は小切手を発行することになるが、その小切手にタイプミスがあれば、供給公団は、それを受け取らず、銀行に小切手の再発行を依頼しなければならない。こうして、いろいろ面倒なことが終わったとき、品物は売り切れとなっている。ガソリンを何リッター使ったのだろうか。しかし、こうした問題は、依然として続いているのだ。

その他の多くの例をしっている。企業にはもっと迅速性が与えられなければならず、企業長にはもっと強い権限を与えなければならない。またもっと人を信用することも必要である。
R・ペレス・ベラ

(2)価格がないので販売できない
ハバナ市の革命広場地区に住むフアン・ロペスは、まったく期待もせずに、プラヤ地区の総合技術サービス公団に電話をした。サンヨーの洗濯機のタイマーが壊れていたからだ。

驚いたことに、そこにはLG社が提供する問題の部品があるではないか。しかし、修繕できない、もう数カ月も前からLG社から部品の価格が連絡されていないからだという。

ロペスは、これにくじけず、LGサービス社と話したところ、財政・価格省が、同社に公式価格を連絡してきていないのが原因だとのこと。

ロペスは、ひるまず、同省の住民担当の法務部に電話をしたところ、文書で問題を出すようにと言われた。そこでロペスは、メールで連絡。しかし、1週間あまり過ぎても何ら回答も、メールを受け取ったとの連絡もなかった。そこで、ロペスは、再度法務部に電話をしたところ、専門担当員が出たが、名前も言いたがらず、回答ももらえなかった。そこでロペスは法務部局長に電話をしたところ、彼女は秘書に問題を説明し、秘書は担当部長に回し、彼女もまた名前を言いたがらず、未回答の件が多くあり、順番を60日待たなければならないという。

ロペスは、洗濯機の部品があるのに、官僚機構の遅れのために、故障を解決できないというのは理解できない。ロペスは、また法的には国営公団は、60日以内にユーザーのクレームや提案を回答しなければならないことを知っている。しかし、だからといって、60日間待ってほしいとはどういうことか。そのことは、公式価格の承認の遅れの弁解にはならない。それとも、価格の決定は、それほど複雑なものであろうか。
ホセ・アレハンドロ・ロドリゲス

この(1)(2)の事例とも、似たような事例は、キューバで普段に聞くことである。(1)の外貨小切手取得は、まだ単純化されている。供給公団は、輸入のための外貨予算割り当ての申請をまずはしなければならない。そのためには、県の上級の省の許可、スーパーバイザーの点検、省全国会議での許可、スーパーバイザーの点検、そして、そのあと輸入、契約、販売となるのである(実際はさらに複雑であるが、あまりに煩雑となるのでここでは省略する)。少額なら実務者外貨委員会は、週に一度開催されるが、多額の場合1カ月に一度開催される閣僚レベルの外貨委員会まで待たなければならない。ユーザーが輸入の要請から商品の受け取りまで約6カ月かかる。

(2)の場合は、そもそも交換部品があることが珍しい。輸入公団や、外貨販売店は、交換部品を保証していない。ここでは、サンヨーの洗濯機の部品でLGの部品と交換性があったのが奇跡的である。洗濯機のみならず、自動車、テレビ、ビデオ、パソコン、クーラー、扇風機など、交換部品がないので、海外に出る友人に頼むか、海外の親戚、友人に頼むことになる。

さて、こういう社会を社会科学的にどう規定したらよいだろうか。いずれにせよ、どこかの過程で疲れてあきらめたら希望は実現しない。

(2010年7月30日 新藤通弘)

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