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2010年5月 8日 (土)

キューバ情勢をめぐるジグソーパズル

キューバ情勢をめぐるジグソーパズル
キューバ国内が揺れているようだ。最近、これまでにあまり見られなかったニュースが続いている。憶測や推測を入れず、キューバ当局により報道されているものと明らかな事実として認められていることのみを列記してみよう。

3月4日、全国会計検査庁、「キューバの企業の40%に会計処理上問題あり」と発表。半数近くの企業に不正があるということである。

3月8日、キューバ民間航空庁長官、国家評議会議員のロヘリオ・アセベド・ゴンサーレス旅団将軍が解任されたとだけ公式に報道される。解任の理由は説明されず。しかし、経理不正の疑いで、アセベドの妻オフェリア・リプタック、キューバ・チリ合弁企業の「リオ・ササ食料社」の販売部長が逮捕され、また同じグループの旅行社「ソル・イ・ソン社」の役員、ルーシー・レアルも逮捕される。なお、両企業ともキューバ政府とチリ人のマックス・マランビオの合弁企業ING社に属している。マランビオは、60年代チリの左翼革命運動(MIR)に属し、キューバで武装闘争の訓練を受け、チリに帰国。アジェンデ大統領の護衛隊長を務め、軍事クーデター時サンチャゴのキュ-バ大使館に居住し、出国したキューバ人が館内に残した大量の武器を管理し、MIRに渡した。マランビオはフィデルの友人として知られている。しかし、彼は、昨年12月のチリ大統領選挙で独立系候補マルコ・エンリケス・オミナミ(現キューバ体制を強く批判)を支援した。アセベドは、マアンビオと親友であった。

4月4日、キューバ共産主義青年同盟第9回大会の閉会演説で、ラウル「違法行為、いろいろな汚職に対する断固とした社会的な拒絶を確立しなければ、大多数の人々の汗の犠牲で、ひきつづき少なからずのものが富裕になるであろうし、そのことは、社会主義の本質を直接攻撃するものとなっている」と汚職問題を厳しく批判する。

4月12日、エステバン・モラーレス前米国研究所所長、「現在、キューバ政府・企業の幹部の中には、ソ連の崩壊前のように、現在の体制が崩壊したさい、企業の株を買うため、海外の銀行に預金をしているものがいる。アセベドの件も詳細を明らかにすべきである。汚職こそ、真の反革命である」とキューバ作家・芸術家全国同盟(UNEAC)のホームページに論文を掲載する。こうした現状批判は、これまでキューバの公式な新聞、雑誌、ホームページに記載されたことがなった。これに対する批判、反論、キューバの新聞に掲載されず。

4月13日、チリ・キューバ合弁企業リオ・ササ食料社の代表、チリ人のロベルト・バウドゥラン59歳(マランビオの部下)、キューバの自宅で死亡したと国際的に報道される。しかし、キューバ政府、何の報道もせず。翌日、チリ政府、キューバ政府に徹底した調査を要求したとチリで報道される。

4月15日、キューバ政府、沈黙を破り、公告で「バウドゥランの死亡原因は、麻薬とアルコールによる呼吸困難症による。事故か自殺か特定せず、引き続き死亡について調査中。チリ政府には協力する。またリオ・ササ食料社が違法行為を行っていたので、現在、全国会計検査庁が調査中、一連のチリ人幹部も調査中」と発表。キューバ人2名も拘置中と各種の国際通信社で報道。チリ側のニュースとして、チリ大統領選翌日の12月15日からリオ・ササ食料社の会計監査が行われ、バウドゥランは、3月には3度にわたり、一日7時間に及ぶ尋問を受け、キューバからの出国を許可されず、心身ともに疲弊していたと報道される。
同日、キューバ全国会計検査庁、4月19日より5月22日まで750企業の経理の監査をアトランダムに行うと発表。

4月25日、169の基礎行政区議員選挙実施。16歳以上の有権者数8 468 144 人が、15,093の選挙区で立候補者34,766 人に投票、投票率94.69%で前回を2%近く下回った。国民の現状批判が、投票率の減少に影響したと推測される。

5月3日、国会評議会は、ラウル議長の提案にもとづき、ホルヘ・ルイス・シエラ(49歳、キューバ共産党政治局員・書記局員)を「執務上の誤り」により閣僚評議会副議長、運輸相の役職を解任、後任の副議長としてアントニオ・エンリケ・ルソン・バトル(80歳)共産党中央委員、師団将軍、元革命軍特殊部隊長を任命。運輸大臣に革命軍輸送・兵站部長セサル・イグナシオ・アロチャ・マシド(51歳)を任命。
また、ルイス・マヌエル・アビラ・ゴンサーレス砂糖産業相(59歳、08年11月に就任)が「活動の弱点を認め、辞任を申請した」ことで解任される。後任にオルランド・セルソ・ガルシア・ラミレス現第一副大臣53歳を任命。アビラ前大臣は、自らも認めたように、砂糖生産の著しい不振の責任を取った形であった。しかし、砂糖生産の不振は,様々な要因があると一般には考えられている。
シエラ前大臣は、「執務上の誤り」が何であるか説明されていないが、気骨のある人物として知られ、懸案の都市交通問題もかなり緩和し、閣僚評議会副議長の中で最も若く、現在の長老幹部の次世代の有力幹部として期待されていた。この結果、8名の閣僚評議会議長・副議長の平均年齢は70.4歳から74.3歳に、軍人は4名から5名となった。

5月5日、グランマ紙、キューバの砂糖収穫は、1905年以来最悪の見込み、その原因は「砂糖工業省および製糖企業グループの管理と要求指導の不足」にあると指摘。収穫量は、市場最低の100万トン程度になると関係者を推測している。

さて、こうした事実から、ジグソーパズルのようにどういう真実を組み立てることができるであろうか。これらの事件は、反体制のハンストの問題や、「白い貴婦人」のデモ問題と並行して進んでいるが、それらとは直接の関係は見られないことも付け加えておこう。(2010年5月8日)

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