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2010年4月18日 (日)

反体制派ブロガー、ヨアニ・サンチェス

ヨアニ・サンチェスのブログ
2010年4月18日

キューバにヨアニ・サンチェスという反体制ブロガーがいる。彼女のブログは、同時に18カ国語に訳され、世界で読まれている。折りに触れてキューバ政府の政策、キューバの社会事情を鋭く批判し、少なからずの海外の人びとの関心を呼んでいる。彼女によれば、毎月1000万件以上のアクセスがあるという。

そのせいか、キューバでもあまり知られておらず、また世界でも一般にはさほど知られていない彼女だが、2008年には雑誌『タイム』誌により、ブッシュ大統領、胡錦濤主席などとともに、世界で最も影響力のある人物に、またCNNにより世界のベスト25ブログに選ばれている。さらに同年、スペインの保守系有力紙『エル・パイス』によりオルテガ・イ・ガセット、ジャーナリズム賞を受賞し、1万5000ユーロの賞金を得ている。2009年11月にはオバマ大統領にブログで質問を行い、翌日大統領から回答を送られている。

 その彼女に、米玖関係の専門家であるソルボンヌ大学のサリム・ラマラニ教授がインタビューを行っている。テーマは、2009年11月6日のキューバ当局による彼女の「拘束・暴力」事件、2002年のキューバ移住出国から2004年のキューバ帰国にいたる経緯、米国の対キューバ経済「制裁」、数々の国際的受賞とオバマ大統領からの彼女への返書、5人のキューバ人政治囚と反体制派、米国によるキューバ人反体制派への資金援助、キューバにおける社会的成果、ルイス・ポサーダ・カリーレス及びキューバ人地位調整法と移民、という多岐にわたり質問が行われている。

 ラムラニ教授は、実に精緻にヨアニの議論の矛盾をつき、インタビューが進む。ヨアニは、さすがに国際的にもてはやされるだけあり、論理の展開は巧妙であるが、ラムラニ教授は、彼女の説明の矛盾、論理の飛躍を逃がさず、克明に彼女の立論の根拠に迫っていく。息をつかせぬ丁々発止のやりとりの迫力に、A4で31頁の長さが気にならない。

 ヨアニは、その回答で、米玖関係の悪化の原因を、キューバの米国資産の接収に見て、キューバの教育・医療改革の成果は、マイナス面が多く積極面を見いだせず、むしろ革命前とあまり違わないとまで述べ、米国政府による反体制派への資金援助の事実の提示には言葉が詰まり、ポサーダ・カレーラスのキューバ航空爆破テロ行為には、政治には関心がないと言明を避け、キューバ人地位調整法(詳細は本ブログにあり)は望ましいものと弁護し、オバマ政権とラウル政権との関係ではオバマが一定の関係改善措置をとったが、ラウル政権は改善を望んでいないと批判し、米国のキューバ国内への変革の要望は正しいので、それは内政干渉には当たらないと述べ、最後にキューバは資本主義社会に変革しなければならないと結論付ける。

 なんのことはない。彼女は、時機をえたブログを発信するものの、彼女独自の分析、見解、世界論はなく、米国政府の意見を代弁しているだけである。キューバ国内からそれに応えることにその価値があり、そこに国際的評価の基盤があるのである。

スペイン語であるが、関心のある方は、http://www.rebelion.org/noticia.php?id=104205&titular=conversaciones-con-la-bloguera-cubana-yoani-sánchez-
をご参照こう。

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