« 2009年11月 | トップページ | 2010年1月 »

2009年12月

2009年12月31日 (木)

『ニューズ・ウィーク』誌による2010年の世界の10大事件の予測

『ニューズ・ウィーク』誌による2010年の世界の10大事件の予測
『ニューズ・ウィーク』誌の予測
師走も押し詰まった12月23日、日本でも発行されている著名な雑誌『ニューズ・ウィーク』英語版に2010年の世界の10大事件の予測が掲載された。経済の予測、政治の予測は、大枠の予測でも難しいものであり、慎重に行わなければならない。年初にエコノミストたちがその年度の経済の予測を行うが、当たり外れの多いことはよく知られているとおりである。いわんや、政治のかなり具体的な展開までは、天才的な学者やジャーナリストでも無理であろう。真摯な人なら、それを避けるであろう。

しかし、『ニューズ・ウィーク』は、大胆にというか、乱暴にというか、狡猾にというか、10大事件の予測を行っている。その中には、②中国経済が破綻するとか、⑨ヨーロッパが新たな金融危機に見舞われるとか、という予測とともに、ラテンアメリカに関しては、④チャベスが、新たなクーデターで放逐される、⑦ブラジルが新たな「中国」となる、⑩フィデル・カストロが死亡し、米国との関係が改善されるというものがある。

来年一気に、ブラジルが新たな「中国」となるとは、だれも信じないが、ブラジル経済のファンダメンタルズの良さから、かなりの経済成長が予測される。このことが、ラテンアメリカ経済全体に少なからず貢献することは十分予考えられ、ラテンアメリカの経済統合の進展のためには好ましいことである。しかし、問題は、キューバとベネズエラに関する記事である。記事は、センセーショナルなタイトルから読者をひきつけ、雑誌の販売の増加に寄与するかもしれないが、内容は具体的な政治的予測となっており、当たるも八卦、当たらぬも八卦といって無責任に済ますわけにはいかないものがある。

まずは、ニューズ・ウィークの趣旨を紹介しよう。

同誌の予測⑩キューバの事例
キューバについては、「フィデル・カストロ前議長は、病症が悪化して死亡する。フィデルの死亡により、キューバに急激な変化はないが、フィデルの硬直した政策(新聞の自由の欠如、国外への移住の制限、個人崇拝、同性愛者への迫害)は、失われる。ラウルは、米国との関係改善による経済的可能性を認識しており、反米的言辞を弱める。オバマ政権は、国務省、国防省、商務省の次官補からなる代表団を派遣し、年度末までにはクリントン国務長官が、2013年までにキューバとの国交を回復すると発表する」というものである。

まず、フィデルの健康については、1927年生まれ*のフィデルも83歳となり、高齢ではある。しかし、彼は、本年9月以降でも毎月、5~8本の論文を執筆し、チャベスや呉邦国、中国共産党中央政治局常務委員などと長時間会見していることからも、体調の急激な悪化は現時点では予測されえない。
*http://estudio-cuba.cocolog-nifty.com/blog/2009/01/post-ebcc.html

孤立しているのはだれか
重要なことは、ここには、米国の対キューバ政策は絶対に正しく、キューバ側の変化によってのみ、両国の関係改善が行われるという論理の陥穽があることである。しかし、国際的には、米国の経済封鎖には国連の192カ国のうち187カ国が反対し、賛成なのはイスラエルとパラオの3カ国のみである。また、米国内でも70%の国民が経済封鎖に反対している。むしろ孤立しているのは米国政府なのである。キューバ側は、ラウルも含めて、常に対等、平等、相互尊重、内部問題不干渉を基礎とした包括的交渉を呼びかけており、これはフィデル個人が指示している政策ではない。ラテンアメリカでも最も強い国民意識をもつキューバの原則なのである。米国との経済関係では、すでに農産物の輸入では毎年5億ドル程度が米国から輸入されており、経済的利益から交渉の原則をキューバ側が放棄するというのは浅薄な見方である。

キューバ国内で様々な改革が必要であることは、現指導部によっても十分認識されている。問題は、改革の速度と範囲であるが、改革により混乱が生じた場合、それに便乗した米国の介入が予測されることから、失敗しないためには、あせることなく着実に、よく議論をしてから進める必要があるとラウルは述べている。米国政府が、キューバに改革を望むなら、何よりも拱手傍観(手も口も出さずにただ見ておくこと)する方が適切であるという論理をオバマ政権もジャーナリズムも理解しなければならない。

両国の関係改善は、オバマ政権が、ラテンアメリカに対して目下の「パートナー」としての見方が通用しないことを理解したとき、伝統的な「裏庭」意識を拭いさり(それは簡単なことでなく、本当の意味でのチェンジであるが)、キューバに対し無条件の対等、平等の話し合いが当然と悟ったときのみ、可能となろう。

同誌の予測④ベネズエラの事例
ベネズエラに関しては、「これまで、原油価格の高騰でチャベスは、政策を維持できた。しかし、不況から、政策の維持は不可能となり、『ラテンアメリカの21世紀の社会主義』も失墜しつつある。過大な財政支出と価格凍結が、30%以上にのぼる高いインフレを招き、2010年もその傾向は続く。公共投資はできなくなり、政府財政赤字が増大し、コロンビアとの冷戦が始まり、経済はマヒし、工場は閉鎖され、スーパーは空になる。牛乳、牛肉、床上用扇風機は贅沢品となる。GDPは二年連続して急落し、2010年は2%成長となる。国民の支持が激減し、貧困層、中間層の支持を失う。軍部が立ち上がりチャベスを放逐し、秩序を回復する」というものである。

ここには、インフレの真の原因、その対策、チャベス政権の社会政策が、詳細に吟味されることなく、単にポピュリズム的な過大な財政支出⇒政府財政の赤字急増⇒インフレの増大⇒国民の不満増大⇒秩序回復のための軍事クーデターという、かつてラテンアメリカに典型的に見られた図式を提示し、その中にベネズエラの事象を当てはめるという、よくある非科学的な、時代錯誤的な、あるいは自らの期待を込めた主観主義的な考え方である。

インフレが年率30%に上るのは、確かに生活に厳しく影響する。もとより、このインフレは、消費物資の輸入依存度が極めて高いベネズエラが抱えている歴史的な構造的問題である。世界の経済危機の中で、食料価格の高騰、石油関連資材の高騰も、財政支出の拡大とともにインフレに大きく作用していることも忘れてはならない。しかし、政府の援助により市価の5-6割で生活必需品が買えるメルカル・スーパー、2割程度の価格で買えるペデバル・スーパー、20%に上る最低賃金・年金の増額などにより、貧困層へのインフレの影響の軽減が図られている。

こうしたチャベス政権の社会政策は、貧困率の劇的な低下となって現れており、かつて60%あった貧困率が30%余に激減している。国民の不満は、むしろ失業、社会暴力、汚職にある。90年代末に15-16%あった失業率は昨年6%台まで下がったが、本年は再び上昇し7%台となっている。社会暴力と汚職は、政府がキャンペーンを行っているが著しい改善は見られない。今後の課題となっている。

したがって国民のチャベス政権に対する支持率は、比較的信頼度の高いイバッド社の世論調査によると本年度8月、12月の調査ともに60%近い支持を示している。

2010年度は、国会議員選挙が予定されている。反チャベス勢力は、前回の選挙では敗北が濃厚と見て、投票2日前に支持率40%を投げ捨てて選挙をボイコットするという誤りを犯した。反対派は、チャベス政権に対する不満があれば、この国会議員選挙でそれを示せばいいのである。それが、反政府派が強調する民主主義というものである。

クーデターを起こすのはだれか
軍部によるクーデター勃発の危険性は、確かにある。しかしそれは、国民の不満を代表してというよりも、現在ラテンアメリカで失地回復を懸命に図っている米国の指図のもとに起こる可能性があるのである。それは、本年6月のホンジュラスによるクーデターで示された。米国のシナリオのもとで、民主的に選ばれた大統領を軍部クーデターで放逐し、ありようもないクーデター派と合法政権の統一和解政府樹立を掲げつつ、その後大統領選挙を「民主的に」行い、みそぎをすませて、親米文民政権を発足させる方法である。そのマニュアルがベネズエラやボリビアで実行されようとしていると、チャベスやモラーレスが繰り返し述べている。ニューズ・ウィーク誌の予測は、こうした可能性について、メディアによる地ならしかもしれない。

|

2009年12月26日 (土)

経済危機への対応と歴史的な課題に取り組むキューバ

経済危機への対応と歴史的な課題に取り組むキューバ
2009年12月22日 西尾幸治

本年度の経済成長は1・4%の見通し
 昨年来の世界的な経済危機は、キューバにも深刻な影響を及ぼしています。政府の経済予測を見ても、当初は経済成長率を6%としていたのに、その後2・5%、1・7%と二度にわたって下方修正されています。今年12月に開かれた国会におけるマリーノ・ムリージョ経済・計画大臣の報告では、最終的に1・4%になるとの見通しです。
成長率にブレーキを駆けているのは、ニッケル、観光、タバコなど、外貨収入をもたらす分野に大きな影響が出ているからです。また、食料品価格の上昇も、輸入コストを増大させる要因となっています。

詳細は、別添PDFを参照。
「09.12.22 西尾 経済危機とキューバ.pdf」をダウンロード

|

2009年12月22日 (火)

キューバ情勢講演会のお知らせ

「現代キューバ研究所」第2回公開講演会のお知らせ

~革命勝利50周年を経て 2009年の回顧と2010年の展望~

無料の医療制度や教育制度の成果は世界的に注目を集め、ここ数年、日本でもひそかなキューバブームが起こりました。しかし、革命勝利50周年を経たキューバは、貿易収支の大幅な赤字、農業、製造業の低迷などで経済的に大きな岐路に立たされています。キューバは、そうした困難な中でも博愛の精神を維持し、新しい形の社会主義を模索し続けています。新藤通弘さんは、長年、ラテンアメリカ諸国を訪問し、研究し続けてきたキューバ研究の第一人者です。その新藤さんが、キューバの2009年を振り返り、新しい年の展望を語ります。キューバは、今後どこに向かうのか、改革はどう進むのか。非常に興味深いテーマです。ぜひ、ご参加ください!

日 時:2010年1月21日(木) 19:00~21:00(受付 18:30~)

場 所:明治大学お茶の水校舎リバティ・タワー10階 1075教室
東京都千代田区神田駿河台1-1
(最寄り駅/JR線・御茶の水駅、東京メトロ・御茶ノ水駅、新御茶ノ水駅、神保町駅)
会場までの地図:http://www.meiji.ac.jp/koho/campus_guide/suruga/access.html

資料代:1,000円

詳細は、別添ファイルご参照ください。
「10.01.21 第2回講演チラシ.pdf」をダウンロード

|

2009年12月14日 (月)

オバマ政権の対ラテンアメリカ政策の本質は何か?(2)

これが、「対等なパートナーシップ」か?オバマ政権の対ラテンアメリカ政策の本質は何か?(2)

また、キューバのラウル・カストロ国家評議会議長は、第8回米州ボリーバル的同盟(ALBA)首脳会議の席上で、米国の新たな軍事戦略との関係で厳しく批判した。
「ラテンアメリカにおける米国の軍事基地の設置は、覇権主義的攻勢であり、すべてのラテンアメリカ諸国への侵略的行為である。この地域を自らの裏庭と考え、どんな犠牲を払ってでも領域を占領し、支配しようという政治的・軍事的ドクトリンを実行しようという意図は明白である。
また、第四艦隊の復活は、他国の領海でさえ演習を行うことを通知しているのは、その目的の達成には手段を選ばないということである」。

ベネズエラのチャベス大統領も、クリントン国務長官の発言を脅迫であり、ALBA諸国の結束を訴えた。
「クリントン国務長官の発言は、公然とした脅迫であり、明らかに帝国的攻勢の表れのひとつであり、コロンビアにおける7つの軍事基地の設置、ホンジュラスのクーデターを想起させるものである。ラテンアメリカの進歩的勢力の前進を押しとどめ、自らの裏庭を回復しようというものである。この宣言は、特にベネズエラとボリビアに対する、したがってまたALBAに対する脅迫である。
エボが述べたように、彼らが消化不良だからといって、われわれが薬を飲まなければならないことはない。彼ら自身が飲めばいいことだ」。

―続く―

|

オバマ政権の対ラテンアメリカ政策の本質は何か?

これが、「対等なパートナーシップ」か?オバマ政権の対ラテンアメリカ政策の本質は何か?

去る11日、ヒラリー・クリントン米国務長官が、国務省の記者会見で、米国のラテンアメリカ政策について語った。ブッシュ政権時代同様の覇権主義丸出しの見解に、さすがにすぐさま、ボリビア、ブラジルなどのラテンアメリカ諸国の首脳は反論した。今後も痛烈な反論が続くであろう。

まずは、クリントン国務長官の見解を紹介しよう。同長官は、次のように述べている。
「われわれは、ベネズエラ、ニカラグアについて、われわれの懸念を明確に表明したことがある。われわれは、この懸念を引き続き表明する。というのは、人びとや指導者たちに民主主義の大道に実際に立つように強く呼びかけることが重要であるからである。・・・それほど遠くない時期に民主的なキューバを見ることができるよう、明らかに、われわれは希望している。そうしたことは、われわれの西半球にとって極めて良いことである」。

「イランが、ベネズエラやボリビアなどの多くの国々に接近することに関心をもっていることを、われわれは、また、知っている。こうした国々が巻き込まれるのはまったく悪い考えだとだけ、われわれはいうことができる。イランは、今日の世界でテロの最大の支持国、推進国、輸出国であることを認識してほしいと、われわれは思っている。・・・もし人びとがイランに媚を売りたいと望むなら、彼らがどういう結果になるかを見ることになるだろうと私は考えている。われわれは、彼らが二度にわたり良く考えるように希望する。そうすれば、彼らを支援しよう」。

これに対し、ボリビアのエボ・モラーレス大統領は、すぐさま反論した。
「こうした警告は、何の役にも立たない。断固拒否する。米国は、彼ら自身が他国に軍隊を送ったり、国外に軍事基地を設置したりして、テロを行っているとき、テロについて語る資格はない。わが国は主権国家であり、どの国とも関係を持つことができる。帝国主義や、資本主義がなければ、ボリビアはもっと良い国となっているであろう」。

また、同国のフェルナンデス副外相は、ユーモアをもって反論した。
「米国がイランと消化不良だからといって、他の国が医者に行く必要はまったくない。イランもベネズエラも他国に軍隊を派遣していないし、キューバは、友好国に医師を送り、貧しい地域で支援をしているだけである。米国にとって悪い考えが、世界の他の国々にとっても悪い考えだと思うのは間違いである」。

ブラジルのガルシア、ルーラ大統領特別補佐官は、明確に述べた。
「これは、ブラジルへの伝言ではなかった。もしそうなら、間違っている」。
ブラジル政府は、不快感を隠さず、13日にブラジルを訪問する米国のバレンスエラ国務次官補(ラテンアメリカ担当)とのアモリン外相との会談を中止し、格下げをして、ガルシア特別補佐官との会談を行うと発表した。

キューバとの関係で私見を述べれば、1995年10月クリントン大統領は、対キューバとの関係で新しい措置を発表した。その際に、彼は「民主主義に抵抗しているキューバ」を「自由な開かれた社会にするためにするためだ」とのべたことがある。とすれば、15年も元大統領の願望は実現していないことになる。民主主義を押し付けることそのものが、もはや民主主義的でないことを米国の指導者が理解するのはいつになることであろうか。

|

2009年12月13日 (日)

キューバ、本年度の経済成長率、1%の見込み

キューバ経済は、昨年度の世界経済危機の影響を受けて、GDP成長率は、昨年12月末に国会で決められた6%が、4月には2.4~2.5%に下方修正され、さらに7月には1.7%に再度下方修正された。今回の発表では、一段と減少し、1%となっているが、10月段階の推計値であり、一層減少するとの見方もある。

経済の停滞の原因は、貿易依存度が高いキューバ経済が、昨年後半からの世界的経済危機の影響をまともに受けたことによる。その一つは、輸入の15%を占める食料価格が、若干下がったものも引き続き高価格であること、第二に主要な輸出品目であるニッケルの価格が前年度比40%下がったこと、観光収入が減少したこと、第三に、こうしたことから国際収支が悪化し、貿易代金の未払いが著しく増大し、短期の貿易クレジットが大きく減少したこと、第四に、そのために輸入を36%もドラスチックに減少させたことなどによる。

キューバ経済、主要経済指標速報値(推計)
項 目 2007 2008 2009
前年度変化率%
GDP 7.3 4.1 1.0
一人当たりGDP 7.2 4.1 1.0
消費者物価 10.6 -0.1 -1.7
実質平均賃金 -0.9 -1.8 --
通貨供給量M1 3.9 9.9 --
通貨交換レート(交換通貨=国内通貨) 2.5 9.4
各年度平均%
都市失業率 1.8 1.6 1.6
GDP比政府財政赤字 -3.2 -6.7 5.0
対企業貸付金利(年利) 9.1 9.0

出所:国連ラテンアメリカ・カリブ海経済委員会、2009年。

|

2009年12月 7日 (月)

ボリビアの大統領選挙でエボ候補(MAS)圧勝

6日、ボリビアで大統領選挙、上下両院選挙が行われた。各種の出口調査によると投票率は80%以上で史上最高で、国民の高い政治への関心を示した。

選挙結果は、社会主義運動(MAS、左翼)の現職エボ・モラーレス候補(副大統領候補も現職のアルバロ・ガルシア)が、62~63%を獲得し、野党のボリビア進歩計画党(PPB、右派)のマンフレド・レイエス候補(23%)に39ポイント余の差をつけて圧勝した。3位は国民統一党(UN、右派)のメディーナ候補で得票率は、9%であった。モラーレス候補は、9県のうち6県で圧倒的勝利を収め、レイエス候補は、反中央の南部地域のサンタクルス、パンド、ベニの3県で勝利を収めたにすぎなかった。

同時に行われた国会議員選挙でも、社会主義運動(MAS)は、上院で36議席中25席を獲得し、議席は3分の2近くとなった。続いてボリビア進歩計画党(PPB)が10議席、社会同盟(AS)が1議席を獲得した。

下院でもMASは、130議席中88議席(68%)を獲得し、圧倒的な勝利を収めた。続いてPPが40議席、国民統一党(UNが4議席、社会同盟(AS)が3議席を獲得した。

このように、今回の選挙で、ボリビア国民は、過去4年間のモラーレス政権の自主的な外交、自立的な国民経済の追求、新自由主義の負の遺産とたたかい、大多数の国民の福祉を考える社会変革に取り組む姿勢を強く支持したのである。ラテンアメリカにおける自主的な外交の追求、新自由主義と決別し国民本位の経済政策を実施する流れは変わらないことが、11月のウルグアイにおける大統領選挙での拡大戦線(FA、左翼)のムヒカ候補の勝利とともに示されたのである。

モラーレス政権は、本年1月新憲法を制定し、立法権でも地歩を固めた。安定した行政権、立法権を基盤にようやく社会改革を進める条件ができつつあるといえよう。しかし、寡頭制勢力、軍部の反動派、司法権の抵抗、米国政府の干渉政策もあり、改革は、必ずしも楽観を許さない。

|

2009年12月 5日 (土)

ペレス教授講演会

日本各地で講演し、好評を博したハバナ大学教授のオマール・ペレスさんが、今回日本で最後の講演を行います。皆さま、ふるってご参加ください。

講師:オマール・ペレス、ハバナ大学教授、キューバ経済研究所副所長
タイトル:キューバの政治・経済を語る―キューバ革命50周年によせて―
場所:国分寺労政会館、3階第3会議室、中央線国分寺駅下車徒歩5分
資料代:500円
通訳付き
主催:三多摩AALA、三多摩革新懇

詳細は、別添案内をご参照ください。「prof_perez_lecture.jpg」をダウンロード

|

2009年12月 3日 (木)

セラヤ大統領の大統領復帰についての国会審議

12月2日、ホンジュラスの国会で、セラヤ大統領の復帰についての動議が議論された。国会の周りは軍隊に取り巻かれ、厳戒態勢の中で国会は開会された。各国会議員が意見を述べ、投票した。現地時間の午後10時過ぎ各議員の意見表明が終わり、復帰反対が111票、復帰賛成が14票で、128票の過半数を上回り、復帰反対が国会で決議された。国民党(右派)は全員反対し、自由党(中道右派)の一部が分裂して賛成に回り、民主主義統一党(左派)の5名が賛成した。

この審議は、10月末にセラヤ大統領とクーデター派の間に締結されていた合意にもとづいて行われたものであるが、合意当初は、すぐさま国会で審議が行われ、セラヤ大統領が復帰し、一応の民主主義を回復したもとで、大統領選挙が行われ、正常化が進むものと期待されていた。しかし、政権の実権を握っているクーデター派は、巧妙に合意の不明確な点を利用し、国会の審議を回避し、大統領選挙を実施し、「民主的な」選挙の実施という既成事実を作り、その後に国会で復帰問題を審議するという策を弄した。恐らくは最初からのシナリオである策略は、功を奏したように思われる。

もともと、国会は、圧倒的に保守的な構成であり、6月28日の早朝のクーデター実行の午後、セラヤ大統領の解任を強行していた。その同じ議員が復帰を議論したのである。その際は、124人が賛成(4人が反対)したことからすれば、今回は米国が、選挙実施が正常化の道を開いたとして、「新大統領」を承認し、セラヤ大統領の復帰をさけようとする圧力の中で審議が行われ、その後セラヤ大統領支持が増えたことが注目される。

今月1日ポルトガルで開催されたイベロ・アメリカ首脳会議で、ホンジュラス大統領選挙について議論され、ブラジルのルーラ大統領とコスタリカのアリアス大統領との間で激烈な議論が交わされた。

アリアス大統領は、「今回の選挙結果を支持し、ホンジュラスは、過去に囚われず、未来を見る必要がある。国際社会は、イランやアフガニスタンの選挙を受け入れるのであれば、ホンジュラスの選挙も受け入れなければならない。ラテンアメリカでも、80年代軍事政権は選挙を通じて民主化に向かったではないか」と主張した。

これに対し、ルーラ大統領は、「ホンジュラスとイランを比較することはできない。大統領に当選したロボは、クーデターを起こした人物であり、このクーデターの批判とセラヤ大統領の復帰は、コスタリカも含め米州機構で満場一致で賛成されたものである。常識の問題であり、民主主義の原則的な問題である。ラテンアメリカで政治的暴力行為を認めないという合意である」と反論した。

筆者は、アリアス大統領がいう「ラテンアメリカの軍事政権が選挙を行い、民主化に向かった」のは、クーデター当事者の軍人が選挙を行ったのでなく、国民の軍事政権に対するたたかいが強く行われたこと、軍事政権では経済危機に立ち向かえなかったことなどから行われたものであり、今回のホンジュラスの状況とはまったく異なるものであると考えている。しかし、それはともかく、読者自身が、どちらの議論が正当であるか、判断できるであろう。

この問題は、民主主義の原則をめぐる議論であり、民主主義の原則は交渉で決めることができない問題である。
第3国の利害と思惑がからんだ仲裁でなく、ホンジュラスの国民自身が、民主主義の原点に立ち返り、違法な選挙で当選したロボ「大統領」の不信任、今後の自主的な政権づくりのための新たな憲法制定議会の設立に向かい、たたかいが進めれられるであろう。

|

2009年12月 1日 (火)

ホンジュラスの大統領「選挙」結果をどうみるか

29日、ホンジュラスで、クーデター政府は、合法大統領のセラヤ氏の大統領職復帰を実現することなく、大統領選挙を強行した。国会議員選挙、地方首長選挙も同時に行われた。約3万人にのぼる軍隊、警察、予備役兵が動員され、厳戒態勢のもとで実施された無法選挙であった。

6月28日早朝、軍事クーデターにより、セラヤ大統領は拉致、連行されて、コスタリカのサン・ホセに追放された。憲法制定議会の招集など、憲法違反が決めつけられた理由であった。直ちに、米州諸国、世界の国々は、一致してクーデターを批判し、セラヤ大統領の即時復帰を要求した。この暴論が通れば、民主的に選出された政権が、政策の違いで暴力的に転覆されるという民主主義の根幹に関わることがおろそかになるからであった。

しかし、まもなく、セラヤ大統領の自主的な外交を嫌う、米国政府の巻き返しが始まり、コスタリカのアリアス大統領を抱き込み、協調して合法大統領と無法クーデター政権を同列に置き、和解交渉が進められた。さらに最近の米国の大陸的反攻戦略の中で米国寄りを強めたコロンビア、パナマ政府を弄して、ミチェレッティ・クーデター政権を支持させるにいたった。

10月末には、米国が、和解交渉の仲介の主役に躍り出て、セラヤ大統領の復帰、和解政府の樹立、11月29日の選挙の実施を柱とする両勢力の合意を取り付けた。しかし、これは、巧妙に仕組まれた罠であることが時間とともに明らかとなった。ミチェレッティは、頑としてセラヤの大統領復帰を実現せず、選挙が「危機の出口」として、米国や、コスタリカ、コロンビア、パナマ、ペルーの支持を得て、選挙の実施に邁進した。

選挙の結果は、最高選挙裁判所(TSE)の発表は、投票率は61.3%に達したと報告したが、反クーデター派の投票所ごとの集計では、投票率はわずか30~35%ということである。TSEの発表は、数回にわたる集計延期の結果の報告であり、何らかの操作があったことをにおわせるものである。

TSEの発表では、右派国民党のポルフィリオ・ロボ候補が56%を獲得し、中道右派の自由党のエルビン・サントスに18%の大差をつけて「勝利」を獲得した。直ちに、米国、コスタリカ、コロンビア、パナマ、ペルー、日本、イタリア、フランスが選挙結果を承認した。しかし、アルゼンチン、ブラジル、ボリビア、チリ、キューバ、エクアドル、エルサルバドル、グアテマラ、ニカラグア、パラグアイ、ウルグアイ、ベネズエラなどのラテンアメリカ諸国の大多数は、違法政権のもとでの選挙自体を不当なものとして、選挙を認めないと言明した。

クーデター派は、12月2日に国会でセラヤ大統領の復帰を認め、形式的な正常化を図る予定といわれているが、セラヤ大統領は、選挙強行後のこの復帰決議を承諾しないと述べている。米国=コスタリカ=クーデター派のこうした一連の策謀は、無理が通れば道理が引っ込むの論理で、民主主義を蹂躙した汚点は消えない。

全国反クーデター人民抵抗戦線(FNRPCGE)は、違法な選挙結果を認めないとして、国内での抗議を強め、新たな憲法制定議会の招集を要求して、引き続きたたかいを続けるとしている。ホンジュラス問題の真の解決策は、民主主義の原則に帰って、セラヤ大統領の無条件復帰、選挙の非合法性を認めること以外にはない。

|

現代キューバ研究所、第1回定例研究会開催

11月26日、現代キューバ研究所(所長早川幸子)第1回定例研究会が、東京池袋で開催されました。講師は、中南米国際協力問題研究家の前田恵理子さん。前田さんは、去る9月、ハバナで開催された第11回キューバ・アジア・オセアニア研究所主催の日本・キューバ合同シンポジウムに、パネラーとして参加されました。報告テーマは、「日本の対ラテンアメリカODA政策」でした。その他にも、ラテンアメリカ医学校(ELAM)にて、学生に対して「放射線医学概論」を特別講義されました。

前田さんは、今回は、日本のODA政策の特徴をとして次の点を挙げられました。
① 借款に重点を置き、贈与比率(OECDのDAC=開発援助委員会諸国中で最下位)が低く、グラント・エレメント(援助条件の度合い)が厳しい
② 国内総生産(GDP)中に占めるODA額がDAC諸国中最下位
③ 日本企業の海外進出を支援するため、社会インフラよりも、経済インフラを重視
④ ODA予算が、政府予算の中で、1997年をピークとして、著しく削減傾向にあること
⑤ アジア重視で、戦略的に米国の肩代わり支援の側面があったこと
⑥ アジア重視の結果、アフリカのようなもっとも必要な後発開発途上国でなく、低所得国、あるいは低中所得に重点が置かれていること
⑦ ひも付き援助が多く、日本企業支援の姿勢が強い
⑧ 被援助国に自助努力を強要するきらいがある
⑨ 援助の持続性に欠ける
⑩ 援助計画の決定過程の不透明さ、予算の妥当性の検証の不十分さ、実施後の第三者による検討の欠如

以上を前田さんは、豊富なデーターを駆使して述べられました。また、今回のキューバのアジア・オセアニア研究所の合同シンポ、ELAMでの講演についても報告されました。

なお、詳細は、12月初頭発売の雑誌『経済』2010年新年号掲載の前田さんの論文「日本のラテンアメリカへのODAの現状と課題」をご参照ください。

|

« 2009年11月 | トップページ | 2010年1月 »