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2009年7月10日 (金)

ホンジュラスにおけるクーデターの真実(2) 加筆版

 28日午後、クーデターに対する国民の抗議に対し、警察は催涙ガスで鎮圧した。大統領公邸を包囲する軍隊に対し、大統領支持者2000名が抗議した。クーデターに反対する労働組合ナショナルセンター、農民組織、青年組織、学生組織、女性組織、人権擁護組織によって、直ちに「人民抵抗戦線(FRP)」が結成され(後に「反クーデター国民戦線(FNCGE)」と改称)、抵抗運動を始めた。

 米州機構は、問題を討議するため暫定常設理事会を開催、全会一致でクーデターを違法と強く糾弾した。インスルサ事務総長は、クーデターを非難し、ホンジュラス大統領はセラヤ氏であることを再確認した。ミゲル・デスコト国連総会議長もクーデターを非難した。

 ところで、この日、早朝、スタインバーグ、シャノン米国務省高官は、米国大使館及びパルマロラ軍事基地に連絡し、クーデターを起こさぬよう説得するように指示した。ロダス外相は、ロレンス米大使に何度も電話したが、一度も返事がなかったという。米国はクーデターの計画を知っていたのである。また、元米州担当国務次官のオットー・ライヒ(02年4月のベネズエラのクーデター未遂事件に関与)が、今回のクーデターに関与しているとも指摘されている。クーデター発生後、オバマ米国大統領は、ホンジュラス国民に民主主義と法の尊重を呼びかけた。この日以降、ホンジュラス軍部と米国政府との交信は途絶えたといわれている。

 ミチェレティは、48時間の夜間外出禁止令を布告した。ALBA加盟の再検討を言明した。またセラヤが帰国すれば、犯罪人として逮捕すると述べた。最高裁は、軍部は憲法に従って行動したとテレビ・ラジオを通じて声明を発表した。一方、選挙管理委員会は、11月29日の総選挙は維持されると発表した。

 29日、中米統合機構会議(SICA)、またALBA首脳会議は、相次いでセラヤ大統領追放クーデターを非難した。ALBA諸国は、ホンジュラス駐在大使の召還を決定した。また、リオ・グループ(中南米諸国21カ国加盟)も、クーデターを非難し、ミチェレッティ「暫定大統領」の違法性、セラヤ大統領が軍最高司令官であること、セラヤ大統領の無条件復帰を主張した。オバマ米大統領は、セラヤ大統領追放をクーデターと述べ、違法であり、セラヤ大統領が民主的に選出された大統領である、これが許されればラテンアメリカにおいて恐るべき前例となると述べた。ルーラ・ブラジル大統領は、セラヤ大統領は直接投票によって選ばれた大統領であり、民主主義の規則を守っており、いかなる他の政権も認められないと述べた。南米諸国連合(12カ国加盟)、南米南部共同市場(メルコスル)もクーデターを糾弾した。米州大陸の35カ国すべての国々、ほとんどの国際機関がクーデターを強く批判したのであった。史上はじめてのことであった。

 セラヤ大統領は、国民とともにクーデターに反対し、復帰するため7月2日に帰国すると発表した。テレビ・ラジオはクーデター政府系の放送に限られ、ほとんどの国民は政府発表の事実しか知らされず、セラヤ大統領は辞任したと考えた。

 この日までは、大統領公邸付近の抗議デモも、平穏のうちに行われた。3つの労働組合ナショナルセンター、農民組織、青年組織、人権擁護組織が参加する反クーデター国民戦線は、無期限のゼネストを開始した。

 6月30日、第63回国連総会は、ブラジル、ボリビア、カナダ、コロンビア、キューバ、ベネズエラ、米国などの共同提案決議案で、満場一致でセラヤ大統領の追放を明確にクーデターと規定し、その違法性とセラヤ大統領の合法性、ミチェレッティ「大統領」の違法性、セラヤ大統領の即時・無条件の復帰、違法政権の非承認を決議した。キューバと米国が共同提案国となるのも珍しいことであった。セラヤ大統領は、国連総会で、クーデターの拉致による追放は違法であると演説した。米州開発銀行は、ホンジュラス向けの新規融資の凍結を発表した。また、世界銀行も援助の凍結を発表した。クーデターは、政治的にも、経済的にも国際的に一致した批判を受けたのである。090630_zelaya_en_la_onu
国連で演説するセラヤ大統領

 一方、ルビ・ホンジュラス検事総長は、セラヤ氏に逮捕状を発行したと述べた。しかし、国内では、セラヤ大統領復帰要求の街頭デモが強まった。警察・軍隊は、これを催涙ガスで鎮圧した。反クーデター国民戦線は、労働組合、農民組織、青年・女性組織などを動員し、一万人が参加して、クーデター抗議集会を開催した。クーデター支持派の民主主義市民連合は、セラヤ批判街頭デモを組織し、3000人が参加した。エンリケ・オルテス「新外相」は、セラヤ氏が大統領として帰国するなら違法で許可が必要と述べた。ミチェレッティは、セラヤ大統領はチャベス主義にホンジュラスを変えようとし、ホンジュラスでは否定されたのだとロイター通信に述べた。6月28日の国民投票問題は、単にいいがかりであり、クーデターの本音がどこにあるかを示す発言であった。ホンジュラス私企業理事会のアミルカル・ブルネス会長は、セラヤ氏の帰国は危機を激化させるだけであると述べた。「暫定政府」は、夜間外出禁止令を3日まで延期した。

 オバマ大統領は、ワシントンでコロンビアのウリベ大統領と会談後、クーデターは合法的でなく、セラヤ大統領が唯一の合法的大統領であると再確認した。しかし、米国務省のケリー報道官は、米国政府は事件をクーデターと表現しているが、事件を法的にクーデターと規定したわけではない、法的にクーデターと規定すれば米国はあらゆる軍事的・経済的援助を停止しなければならないと説明した。

 パトリシア・ロダス外相が、メキシコに亡命した。セラヤ大統領は、大統領の任期が満了すれば、農業生活に戻る予定であると述べた。そもそも11月29日に予定されていた大統領選挙には、セラヤ氏は、現行憲法から出馬は不可能であり、彼が属する自由党の候補者は、エルビン・サントス氏であり、国民党の候補者は、ポルフィリオ・ロボ氏であった。この大統領選挙の実施時に、新たな憲法を制定する憲法制定議会を招集する(そのためにはさらに国会議員選挙を行わねばならない)ことを国民投票にかけるというものであり、憲法違反ときめつけられないものであった。したがって国際的にはセラヤ大統領の合憲性を問題にする国はなかったのである。

 7月1日、米州機構(OAS)総会(米州大陸34カ国出席、キューバは未復帰)でも、史上初めて米州民主主義憲章に基づき、満場一致でセラヤ大統領の追放を明確にクーデターと規定し、その違法性とセラヤ大統領の合憲性、ミチェレッティ「大統領」の違憲性、セラヤ大統領の即時・無条件の復帰、違法政権の非承認、セラヤ大統領の復帰を受け入れない場合、ホンジュラスの加盟資格の停止(4日を期限)を決議した。

 セラヤ大統領は、ホンジュラスへの帰国を4日に延期すると表明した。同大統領は、クーデター派が望むなら命を捧げる用意があるし、逮捕されるなら、収監されるつもりであり、国民が望むなら来年1月までの大統領に復帰するつもりである、と述べた。一方、ミチェレッティは、当然のことながら、OASの決議を拒否し、セラヤ大統領は帰国すべきではない、同氏には検察により18件の罪の告発が行われている、国際的孤立の中で、神に世界から孤立させないでほしいとお願いすると述べた。セラヤ大統領の言動に比べ、一貫性のない発言であった。

 ホンジュラス国会は、一般市民の集会、個人住宅の不可侵権、国内の移動の自由を停止し、令状なしの拘束権限を認める大統領令を多数決で承認した。全国から数千人がクーデターに抗議して、テグシガルパに参集、これまでで最大のデモとなった。サンペドロスーラ市でも数千人がクーデター抗議デモを行った。80年代に左翼勢力を弾圧した準軍事組織「死の部隊316」が活動を復活した。クーデター派の正体が次第にはっきりと見えてきたのである。米国防総省は、ホンジュラス軍との合同演習の凍結を発表。ホンジュラスの空軍基地には約600名の米軍顧問が駐在している。

 2日、EU加盟国大使全員が本国に召還された。大使の召還は、国交断絶の一歩手前の強い抗議の意思の現れである。米国は、ホンジュラス駐在大使の召還は適切でないと判断した。実は、ヒューゴ・ロレンス駐在大使は、ベネズエラで反チャベス・クーデターが起こされた時、ブッシュ政権のベネズエラ問題顧問であり、軍事問題の経験の深い人物であると指摘されている。その彼が、今回のクーデター前にクーデター派の人物たちと接触していたことが米国務省によって認められている。米国のケリー報道官は、セラヤ大統領の復帰を目標とするも、帰国は時期尚早と述べた。一方、セラヤ大統領の国外の友人の指導者たちは、帰国して国内で反対の指揮をとるのが重要と考え、即時の帰国を支持している。

 国内の抗議運動一層激しくなり、テグシガルパ、サンペドロスーラで数千人が参加した。約300人が違法に逮捕された。一方、クーデター派に従わない軍部の部隊が、4部隊大西洋地区にあると報道された。ミチェレッティ、サンペドルスーラ市長を解任し、逮捕を命じ、市長に自らの甥を任命した。違法な人事権の乱用であった。

 インスルサ米州機構事務総長は、3日にホンジュラスを訪問するが、交渉のためでなく、決議を受け入れるよう要請するために訪問する、最高裁長官、検事総長との会談を予定し、ミチェレッティ暫定大統領との会見の予定はないと述べた。原則的な態度であった。

 3日、インスルサ米州機構事務総長が、ホンジュラスを訪問し、リベラ最高裁長官と会談した。同氏はセラヤ大統領の逮捕状を取り消せないと説明した。ミチェレッティは、事態の打開のため11月29日の総選挙(大統領、国会議員選挙)の前倒し実施を提案した。事態の解決の見通しのない、思いつきの域をでない提案であった。

 チャベス大統領は、ホンジュラスへの原油の輸出の停止を検討すると表明した。反クーデター国民戦線は、支持者が増えて、数万人が抗議活動を行った。同戦線は、軍隊/警察との衝突を避けて、一定の間隔を維持してデモ行進を行った。一方、軍隊・機動隊が、全国に配置され、デモの鎮圧にあたり、首都への移動を阻止しようとした。

 4日、米州機構は、インスルサ事務総長の報告を受け、ホンジュラスが米州機構のセラヤ大統領復帰受け入れ勧告を拒否したことから、特別総会で同国の加盟資格停止を満場一致で決議した。議論の中で、ベネズエラ、ボリビア、エクアドル、ニカラグアは、セラヤ大統領の復帰まで加盟国は経済関係を断絶する決議を主張したが、米国、メキシコ、コロンビア、カナダはそれに反対した。メキシコ、コロンビア、ペルーなどの右派政権も、EU全体も、ホンジュラス駐在大使を召還したが、米国政府は、依然として駐在大使を維持し、暫定政府との接触を継続した。
 
 セラヤ大統領は、5日にフェルナンデス大統領、コレア大統領の同行のもとに帰国すると発表した。カナダ政府は、セラヤ大統領の帰国は生命の安全の保障がなく時期尚早と述べた。テグシガルパのオスカル・アンドレス・ロドリゲス枢機卿は、セラヤ大統領が帰国すると流血の惨事を生み出すので、帰国しないように要請するとともに、ミチェレッティ政権の米州機構提案拒否を支持した。抗議勢力へのクーデター派の力による弾圧を非難し、抑制させるのでなく、弾圧を容認して事態を避けるようにという主張は、本末転倒の主張であった。午前中、地方からの数千人が首都でミチェレッティ政権抗議デモを行った。午後、セラヤ大統領支持者十数万人が、大統領の帰国を歓迎するために空港に移動した。緊張が一挙に高まった。(続く)

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