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2009年7月12日 (日)

ホンジュラスにおけるクーデターの真実 (終)

ホンジュラスにおけるクーデターの真実
ささやかな分析

 セラヤ大統領が実施しようとした「国民投票」に、今回のクーデター事件は端を発しているように一般には論じられているが、はたしてそうであろうか。

 まずはっきりしておかなければならないことは、セラヤ大統領が、6月28日に実施を提唱していたのは、国民協議投票(Consulta popular)であり、レフェレンダム(Referéndum: 国会で承認された案件を国民に賛否を問う国民投票)でもプレビシット(Plebiscito: 政府の構成や国の政体など国にとって最重要な課題で、事前に承認されていない案件について国民に意見を問う国民投票)でもないということである。この二つの国民投票の定義と実施方法は、現行憲法の第5条に峻別され詳述されている。
 
 しかし、セラヤ大統領が、6月28日に国民に意見を聞きたかったのは、「あなたは、2009年11月の総選挙において、新しい憲法を制定する全国制憲議会を招集することを決定するために第四の投票箱を設置することに賛成かどうか」であった。セラヤ大統領の再選規定はおろか、大統領の任期の改正なども含め、新憲法の内容はまったく提起されていなかった。つまり、レフェレンダムでも、プレビスシトでもなかったのである。もちろん、11月29日の大統領選挙には立候補していなかった。つまり、国民協議投票は、憲法第5条とは関係なく、11月29日の別の国民協議投票の是非についての事前の協議投票であった。
 
 ところが、6月23日、国会は、セラヤ大統領が自身の再選を考えているとして、28日の国民協議投票の実施を多数決で禁止したが、国会は、憲法第5条では二つの国民投票の実施と、その細則を決定する権限をもっているが、憲法第5条とは関係がない国民協議投票を禁止する権限はもっていないと憲法学者により指摘されている。また、最高選挙裁判所も最高裁判所は、本来、国民協議投票そのものを違法とする権限もなければ、国会決議に基づき国民協議投票を違法とするのも法的にはおかしなことであった。
 
 また、26日に大統領の指令に不服従のかどで、解任されたバスケス統合参謀総長を最高裁が復職させたが、行政権に属する軍隊の人事に司法権の最高裁が介入する権限はないのは明らかである。さらに、国民協議投票が違憲であり、それを実施する大統領を逮捕して国外に追放するのも、また国外追放という既成事実の後で、国会が偽の辞職手紙を代読して(ベネズエラのクーデター未遂事件の折も、偽のチャベスの辞職手紙が流布されたことがある)、現職の大統領を解任したことも、順序が逆であるだけでなく、いかなる法律にも基づかない違法行為である。国民協議投票に意見があれば、それは法的に争えばいいことであり、かつそれが実行された場合には、投票において次回の制憲議会招集を否決すればいいことである。さらには、今回、制憲議会招集是非投票が承認されても、次回の国民協議投票で、道理があれば制憲議会の招集を否決することができるのである。したがって、セラヤ大統領が、18件の違法行為をおかしていると強弁しているが、実際に数々の違法行為は、クーデター派にあることは明白である。
 
 さらには、セラヤ大統領と、ミチェレッティの数日間の発言を比較してみれば、セラヤ大統領が、ホンジュラスの自決権の堅持、民主主義の擁護、民主主義的手続きの重視、社会改革への熱意を一貫して主張しているのに比べて、ミチェレッティの発言は、デマが少なくなく、民主主義は口にするが、内実はホンジュラスの少数支配を擁護するために、チャベス、モラーレス、オルテガ、キューバの介入を批判して、クーデターを正当化しているにすぎないことがわかる。
 
 ところで、ホンジュラス(人口730万人)は、自由党と国民党の2大政党が政権を担ってきた二大政党制のもとにある。一院制の国会は、中道右派の自由党(PLH)が62議席、右派の国民党(PNH)が55席、左翼の民主主義統一党(PUD)が5議席、その他キリスト教民主党(PDCH)が4議席、中道右派の刷新統一党(PIU)が2議席を占めている。つまり、民主主義統一党を除き、すべて保守政党である。したがって、セラヤ大統領は、新自由主義経済に破壊され、ラテンアメリカで最も遅れて貧しいホンジュラス社会(2002年国民の77%が貧困)の変革をするにあたって、常に、バナナ共和国を築いてきた少数富裕層、それらが支配する保守政党と衝突せざるをえない。その結果は、国会において、大統領の推進するほとんどの改革が否決され、大統領の非難決議が多数決で可決されてしまうのである。司法権も伝統的な保守支配層から構成されている。

 セラヤ大統領が、大統領という行政権の長を獲得しても、行政権の内部には、従来の保守支配層が存続しており、依然として、立法権の国会、司法権の裁判所は、保守支配層の牙城である。軍隊の上層部の多くは、米国の軍事学校の卒業生である。ホンジュラスのニュースを読むときに、このことを忘れてはならない。
そしてこの保守支配層を支えているのが、3億ドル近い(GDPの約5%)、膨大な米国の軍事・経済援助、年間8億ドルにのぼる米国の投資、80万人にのぼる米国在住のホンジュラス人からの20億ドル近い(GDPの約25%)送金である。

 さらに、ホンジュラスには、パルメローラ(ソト・カノ)基地に米軍の統合タスクフォース本部があり、戦闘機18機を装備し、約600名の軍事要員が駐在している。この基地は、80年代オリバー・ノースが対ニカラグア作戦の本部として使用したことがある。この基地の米軍高官とホンジュラス軍指導部は、密接な連絡をクーデターの前後も維持していることが指摘されている。報道されている事実のひとつひとつからして、米国政府がクーデターに関与していなかったと主張するのは困難であろう。ランヘル元ベネズエラ副大統領が述べているように、国務省ルートの外交説明と国防省の最前線の行動にかい離があると思われる。
 
 アリアス大統領と提携して、ミチェレッティをセラヤ大統領と同格に扱い、双方から譲歩を引き出して、和解させようとしたクリントン国務長官の浅薄な覇権主義的意図は、はたして、ラテンアメリカ諸国との新たな対等のパートナーシップを求めるオバマ大統領と相談した結果の政策なのか、さすがに厳しい批判を行うチャベス大統領さえも、疑問を表明しているほどである。
 
 ホンジュラス内部では、日に日に、クーデター反対の意見が高まり、反クーデター国民戦線が支持を拡大し、数万人のデモを組織するに至っている。ギャラップ世論調査から類推すれば、実際のクーデター反対は、70%以上に達するであろう。国際的にも孤立し、国内でも民主主義と社会変革を求める大多数の国民に追い詰められているクーデター勢力は、強権で支配を維持しているだけである。時代錯誤の彼らに未来はない。(終わり)


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