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2009年6月 1日 (月)

キューバと米州機構(OAS) (1)

キューバと米州機構(OAS)

 第39回米州機構(OAS)総会が、6月2-3日、ホンジュラスのサンペドロ・スーラ市で開催される。第二次世界大戦後、米国は冷戦構造の中で共産主義の「封じ込め政策」を打ち出し、その政策の一環として1948年4月30日、米国主導のもとに米州機構憲章が採択され、それが1951年10月13日に発効し、米州機構が設立された。米州機構に先立ち、1947年共産主義の進出から米州を守る目的で、軍事同盟条約、「米州相互援助条約(リオ条約)」が設立されており、米州機構はリオ条約と対をなしている。

 現在、米州機構の加盟国は35カ国、本部はワシントンにある。事務総長は、チリ人のホセ・ミゲル・インスルサ元チリ外相。組織上、キューバは加盟国として扱われているが、1962年1月米州機構は「キューバをマルクス主義国家であり、米州機構とは相いれない」とした制裁を決議し、機構への参加を排除した。キューバは、1962年米州機構からの脱退を表明した。一方、リオ条約は、現在、加盟国はキューバを含め22カ国、しかしキューバは1962年米州機構理事会の決定で参加を停止された。また、近年になるとメキシコは、条約の現代的意味は失われたとして、2004年9月脱退した。
 
 今回の総会は、オバマ新政権になって初めての総会であること、ラテンアメリカにおいて、キューバを除外した国際的議論・会議はもはや適切ではないし、現実的でもないとの認識が一般的となってきた中で行われることが、その特徴となっている。ニカラグア、ホンジュラスは、米州機構に対して、62年の決議を破棄した無条件のキューバ復帰を提案している。この道理ある提案には、ベネズエラ、ボリビア、エクアドル、ドミニカ国、セントビンセント及びグラナディーン、エルサルバドル、ブラジル、アルゼンチン、ウルグアイ、パラグライなどラテンアメリカ・カリブ海諸国の大多数の国々が賛成している。

 一方、米国は、キューバの民主的複数主義、人権の尊重が不足しているおり、現状では2001年採択の「米州民主憲章」の要件を満たしていないので、それらを改善する必要があると主張している。しかし、この条件つきの復帰を主張しているのは、米国とカナダなど数カ国に過ぎない。先週の米州機構会議では、決着がつかず、この問題を議論するための「作業部会を設置する」ことが決められた。

 ところで、キューバは、この米州機構は、「設立以来米国のラテンアメリカ支配の道具とされ、グアテマラ反革命侵攻(1954年)、キューバのプラヤ・ヒロン傭兵侵攻(1962年)、米海兵隊のドミニカ共和国侵攻(1965年)、米軍のグラナダ侵攻(1983年)を支持し、マルビナス=フォークランド戦争(1982年)、米軍のパナマ侵攻(1989年)などにおいてまったく無力であった。もう機構そのものが腐食しており、役に立たないので復帰するつもりはない」と繰り返しのべている。

 しかし、筆者には、こうしたキューバの原則的ではあるが、かたくなな態度は、キューバの無条件の復帰を主張している国際社会の多くの善意にどう沿うことができるかと危惧される。確かに米州機構は、アメリカのラテンアメリカ支配の道具として使われてきたが、近年ラテンアメリカにおいては自主的な動きが強まり、米国の対キューバ経済封鎖、コロンビア軍のエクアドルへの越境攻撃(2008年)など、問題によっては米州機構の中で米国が孤立する場面もしばしばみられるようになってきている。

 キューバが無条件に復帰すれば、米国は積年の反共主義政策の誤りを認めたことになる。さらには米州機構という土俵の中で正当な議論によって米国やその他の域内の国の不当な覇権主義政策、内政干渉政策があれば、それを批判するなどして国際社会で正しい世論をつくりあげていくこともできる。機構が、歴史的に問題を抱えているにしても、米州憲章は、国連憲章の尊重とともに、紛争の平和的解決、各国の主権と独立の尊重、各国の平等、領土保全をうたっており、加盟国にそれらを文字通り遵守させるよう働きかけることが重要ではないかと思われる。

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