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2009年6月 5日 (金)

キューバと米州機構(OAS) (2) 加筆版

6月3日、第39回米州機構(OAS)総会で、1962年1月31日にOAS外相会議で採択された、キューバ排除決議が、35カ国中、34カ国の賛成で(キューバは出席せず)無効であることが満場一致で決議された。
 
決議は、米州の安全保障、民主主義、民族自決権、不干渉、人権、発展の原則にもとづいたOAS憲章およびその他のOAS関連機関の目的と原則を尊重し、第5回米州首脳会議(2009年4月)の対話と協力精神にもとづいて、次の2項を決定した。

1. 1962年1月31日にOAS外相会議で採択された、キューバ排除決議をOAS内では無効とする。
2. キューバのOAS参加は、キューバ政府の申請により、またOASの慣習、目的、原則にしたがって対話を通じて行われる。

この決議は、米国の反共政策にもとづくキューバ敵視政策の誤りを米国自身も認めた歴史的な成果である。セラヤ・ホンジュラス大統領は、「今日ここで冷戦は終了した」と歴史的意義を強調した。またカルロス・ソーサ、ホンジュラス外相は、「この決議の合意にいたるには、だれもなにも譲歩をしていない」と、満場一致が勝ち取られた重要性を指摘した。

しかし、問題がいくつかある。米国はなぜ賛成したのであろうか。米国は、キューバのOAS復帰には第2項「キューバの復帰は、OASの慣習、目的、原則にしたがって対話を通じて行われる」事項を挿入させた。つまり、キューバが人権と民主主義の条件を満たさなければ、復帰に反対であるという立場である(クリントン国務長官、ロバート・ウッド国務省スポークスマン)。しかし、シャノン米ラテンアメリカ担当国務次官補が述べているように、「オバマ大統領は、キューバ政策でこの数十年で最大の変更を行った」ことも事実である。内外の世論に要求された当然の変更であり、未だ一里塚にしか過ぎないともいえるが、ともかく変化の方向に踏み出したことを無視してはならない。

しかし、一方、ファンデル・ファルコニ、エクアドル外相も、ホセ・ミゲル・インスルサOAS事務総長も、「この決議は、キューバの復帰に対していかなる条件も付けていない」と反論している。これは、大多数のラテンアメリカ諸国の見解でもあるし、それは当然の見方である。さらに、大多数の国は、キューバのOASへの復帰を希望していることを無視することも適切ではない。

ところが、肝心の当事国であるキューバは、「OASは、まったく米国の道具となっているので、OASへの復帰に関心はない。OASの存在意義はない」と、繰り返し述べている。

しかし、OASが歴史的にいかなる誤りを冒したにせよ、今回の決議のように道理と正義に基づいて最終的には誤りは正されるものである。もし、OASがその後存在していなければ、その訂正の舞台もなかったであろう。むしろ、ラテンアメリカで変革が進んでいる現在OASでは、米国の政策は少数派である。

フィデル前議長は、「キューバは平和の敵ではないし、異なった政治システムの国々の間の交流と協力に反対しているのでもない」とのべている。そうであれば、国際世論の期待に応えて、米国が設置している復帰への障害の不当性を国際世論により糾弾し、復帰を果たし、OASの土俵の中に入ることは意味がないことであろうか。そして、OASにおいて米国の対キューバ経済封鎖の不当性を訴えれば、投票は34対1という国連以上の圧倒的な大差となって、米国の対キューバ政策の不当性が浮き彫りとされるのではないだろうか。

米州大陸の中で、真の平和、非核地帯を作るには米国抜きでは成り立たないことも明らかであり、OASに代わる討論の舞台が近い将来現れる可能性も薄い。現在、ラテンアメリカ・カリブ海地域にはトラテロルコ条約という核兵器の禁止を定めた条約があり、33カ国すべてが批准している。折から、オバマ大統領は、核兵器の廃止に向かっての努力を表明している。その大統領の意向を実現するには、米国内の世論とともに国際世論も協同することが重要である。こうした米州非核地帯の創設の議論もOASで行われれば、核兵器廃絶に向かっての重要な貢献となるであろう。それは、革命勝利後、原水禁世界大会に積極的に参加してきたキューバの立場に沿うものである。

また、今後ラテンアメリカへの米国の干渉政策があれば、キューバは、OASの共通の土俵の中で、ラテンアメリカの大多数の国々の賛同を得て、道理で米国を糾弾してそれを抑制できるのではないだろうか。カストロ前議長がいう「時代遅れのごみ箱」も新しい「民主主義的変革の劇場」に生まれ変わるときに、今回のキューバ排除決議の廃止の真の意味が出てくるのではないだろうか。

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