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2009年3月25日 (水)

続、キューバ、7つの神話 (1)

2-3月と海外に調査旅行に行ってきましたので、研究室も休みとしていました。先日帰国しましたので、再開しましょう。

旅行中、あるテレビ局から、「WBC(世界野球大会)について取り上げることになり、3月16日に行われる『日本対キューバ』の試合放送の際にキューバ共和国という国がどんな国なのか番組で紹介したい、下記のような番組が調べたことが正しいことなのか、判断、監修してほしい」との依頼がありました。

その内容をみて、正直、またか!という思いでした。すでに、「キューバ、7つの神話で」で実情を明らかにしたことも含まれていますが、ステレオタイプ的間違った情報ゆえ、ご紹介し、実情を報告しておきます。さすがに、同TV局では、この収集していた情報を報告せず、番組の信頼性が救われましたが、もし、それらを否定せず、TV局がそのまま紹介、報道していたら、またまた新たな神話が形成されたことでしょう。

キューバでは医療費が無料というのは本当でしょうか?
答え:
医療費はすべて無料というわけではありません。入院費、診察料、入院中の薬代は無料です。しかし、通院患者は、処方箋により薬を買います。これは有料です。しかし、政府の補助金で安く、だいたい一般の病気で、1週間分の薬で月収の3-4%程度です。

なお、外国人は、原則としてすべて有料です。映画「シッコ」で無料であるかのことをいっていましたが、これは間違いで、彼らは国賓として招かれていたので無料。外国人は一般には有料です。この点は、イギリスの医療制度の方が、外国人も無料ですから、すぐれているでしょう。
また、この機会に、現在、キューバの医療制度は、再編成されていることを紹介しておきます。理由は、国外への大量の医師の派遣から、医師数が半減した結果、底辺を支えている家庭医制度を初めとして、統廃合が進められているからです。

現在キューバの医師、教師、スポーツ・文化インストラクターの海外協力派遣者は、48,256人で97カ国(そのうち4万5000人がラテンアメリカ・カリブ海の31カ国)、15分野で派遣されています。そのうち、医療関係が最大で36,770人が70カ国に派遣されています。これらの大部分は、有料のサービス輸出として行われていますので、安易にキューバの国際連帯は見上げたものだなどと感心しないこと。しかし、派遣費用は国際的な水準からすれば安い価格ですし、最貧国への派遣、あるいは緊急人道支援の場合、無料で行われています。

海外への医師の派遣(ほとんどはサービス輸出であり、無料支援ではない)から、医師不足が生じ、7万2千名の医師の半数近くが海外に派遣されて、医師一人当たりの人口数も300人を超えるものとなっています。しかも、家庭医は、3万4000人の半数以上が、海外に派遣されていることから、80年代は医師一人当たり500-700人を担当していましたが、現在では3倍の1500-2000人を担当しなければならなくなっています。

その結果、全国の1万4078の家庭医診療所を①タイプⅠ(5916診療所)、②タイプⅡ(4680診療所)、③強化診療所(177診療所)の3種類に分類し、継続開所されています(残りは閉鎖)。①は医師と看護師各1名で初期診察を行い、②は看護師のみが簡単な手当て、注射、ワクチン接種などを行い、③は医師と看護師1名で、過疎地で24時間診療、レントゲン、超音波装置、心電計器、歯科装置を備えています。しかし、再編成の過程は、まだ僅かなもので、国民の中に多くの不満があり、改善されるべき多くの問題があると公共保健省(MINSAP)も認めています。

医師の賃金が、平均賃金の50%程度増程度であるうえ、それは生活の5分の1程度しかカバーできないので、また、医師はアルバイトもできないので、生活は大変です。そこで、医師への金品の受け渡し、医薬品、医療資材の横流し。入院・手術便宜供与に対する謝礼などが、少なからず行われています。


キューバでは国がヒッチハイクを推奨しているというのは本当でしょうか?また、それはなぜでしょうか?
答え:
特に国がヒッチハイクを奨励しているわけではありません。90年代に入り、「非常時」となり、交通事情が急激に悪化し、サービスはかつての5分の1程度に減少しました。そこで、公用車の場合、公用車の目的地までに座席に余裕があれば、決られた場所でインスペクター係員の指示で、乗車させなければならない規定が作られ、希望者は指定の場所で乗車することができます。街中、どこでも乗れるというものではありません。しかし、最近は、この義務も解除された模様で、街中でインスペクターを見ることがなくなりました。

自家用車の場合、とくに同乗させる義務はありません。ただし、交通事情が困難なことから、自家用車が、街中で手をあげている市民を同乗させることはあります。運転手の判断の問題です。若い女性などは同乗させてもらう可能性がありますが、一般の男性はあまりありません。


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