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2009年3月30日 (月)

小説「蟹工船」を語る集い開催

小説、蟹工船を語る集いが、キューバのハバナ市で開催されました。以下ご紹介します。
3月12日午後、ハバナ市にあるジア・オセアニア研究所(CEAO)で、「蟹工船を語る集い」が、日本キューバ修交80周年を記念して開催されました。
 まず、同研究所のフアン・カレテーラ所長が挨拶。日本とキューバの外交が結ばれて80年を迎え、政治、経済、文化、スポーツの面で多面的な交流が行われており、今年の後半には日本・アジア研究について日本とキューバの合同シンポジウムを企画している旨紹介しました。
 つづいて、新藤通弘氏が、80年代初期に、「蟹工船」と「日本文学短篇集」を出版したキューバ政府の理解に、またテレサ・オルテガさんと、リディア・ペレディラさん編集と翻訳の労に感謝の言葉を述べました。そのあと、新藤氏の説明付きで、映画「蟹工船」の一部が上映されました。映画の鑑賞後、同氏が、「蟹工船」が書かれた当時の日本が、絶対主義的天皇制のもとで労働者、農民は多くの自由が奪われ、帝国主義侵略を近隣のアジア諸国に進めている資本主義によって過酷に搾取されていた歴史を紹介。
そして出版から80年経過したここ数年、小説「蟹工船」が若者を中心に爆発的な関心を引き起こし、50万部販売されるベストセラーとなっていること、それは、近年、自公政権が進めている新自由主義政策が、所得格差の拡大、貧困層の増大、労働条件の急激な悪化、企業家の経営モラルの破たん、失業の増大などをもたらし、日本社会が多大の困難を抱えるようになっていることからきていることを指摘しました。特に、ルールなき資本主義といわれる日本企業で現在問題になっている非正規社員、とりわけ派遣社員の安い差別的賃金と極めて不安定な雇用は、現代版の「蟹工船」的労働条件であることを説明しました。
テレサさん(左)とリディアさん(右)
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つづいて、「蟹工船」のスペイン語翻訳者のリディアさんが、翻訳は、キューバが著作権について不払い政策をとっていた時代のものであること、編集者のテレサさんから紹介されたとき、中心人物もなく、主だった女性もなく、細かい心理描写もなく、集団的な描写で、資本の無慈悲な搾取の論理を描いている強烈な描写にたちまち魅入られたことなどを語りました。奴隷制のもとでは奴隷の主人は、奴隷を使用し続けるためには、生産手段の奴隷の命を大事にしたが、蟹工船では、労働者の健康と命も使い捨てのように扱われている劣悪な状況が印象に残ったと、リディアさんは強調しました。
また、多喜二の「不在地主」も同じ翻訳本に納められており、悲惨な半封建的な小作人の状態が印象的であったと述べました。
 最後に、編集者のテレサさんが、当時キューバ政府の出版の優先順位は、①キューバ文学、②ラテンアメリカ文学、③「社会主義圏」文学、④ヨーロッパ文学、⑤アジア・アフリカ文学で、その中で、日本のプロレタリア文学を出版するのは並大抵でなかったが、優れたプロレタリア文学であったのでなんとしても出版したいと上層部を説き伏せて出版したいきさつを紹介しました。テレサさんによれば、これまでキューバで出版された日本文学は、1966年の太宰治の「斜陽」を皮切りに、芥川龍之介「羅生門」、川端康成の「雪国」、大江健三郎「個人的体験」、三島由紀夫「金閣寺」など13点に上るとのことです。
 この「蟹工船を語る集い」には、キューバ共産党中央委員会国際部のアベラルド・クエトさん、日本大使館専門調査員の山田泰子さんなどが出席しました。

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