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2009年3月

2009年3月31日 (火)

2009年3月の一連の人事異動をどう見るか

2009年3月の一連の人事異動について、様々な噂が流れ、憶測を呼んでいる。カスタニェーダがニューズ・ウィーク誌に書いた荒唐無稽な説(のちほど彼自身、なんらの根拠がないことを認めている)から、バスク企業家協会代表との連座説まで、流布されている。あまりにも資料が少ないので、公開された資料を紹介し、問題を分析する一助としたい。

当研究室では、あくまで、常に客観的な資料を分析して判断することをモットーとしているので、発表された政府資料から読み解きたい。別添文書を参照こう。

「09.03.19 一連の人事異動について―ブログ版.pdf」をダウンロード

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2009年3月30日 (月)

小説「蟹工船」を語る集い開催

小説、蟹工船を語る集いが、キューバのハバナ市で開催されました。以下ご紹介します。
3月12日午後、ハバナ市にあるジア・オセアニア研究所(CEAO)で、「蟹工船を語る集い」が、日本キューバ修交80周年を記念して開催されました。
 まず、同研究所のフアン・カレテーラ所長が挨拶。日本とキューバの外交が結ばれて80年を迎え、政治、経済、文化、スポーツの面で多面的な交流が行われており、今年の後半には日本・アジア研究について日本とキューバの合同シンポジウムを企画している旨紹介しました。
 つづいて、新藤通弘氏が、80年代初期に、「蟹工船」と「日本文学短篇集」を出版したキューバ政府の理解に、またテレサ・オルテガさんと、リディア・ペレディラさん編集と翻訳の労に感謝の言葉を述べました。そのあと、新藤氏の説明付きで、映画「蟹工船」の一部が上映されました。映画の鑑賞後、同氏が、「蟹工船」が書かれた当時の日本が、絶対主義的天皇制のもとで労働者、農民は多くの自由が奪われ、帝国主義侵略を近隣のアジア諸国に進めている資本主義によって過酷に搾取されていた歴史を紹介。
そして出版から80年経過したここ数年、小説「蟹工船」が若者を中心に爆発的な関心を引き起こし、50万部販売されるベストセラーとなっていること、それは、近年、自公政権が進めている新自由主義政策が、所得格差の拡大、貧困層の増大、労働条件の急激な悪化、企業家の経営モラルの破たん、失業の増大などをもたらし、日本社会が多大の困難を抱えるようになっていることからきていることを指摘しました。特に、ルールなき資本主義といわれる日本企業で現在問題になっている非正規社員、とりわけ派遣社員の安い差別的賃金と極めて不安定な雇用は、現代版の「蟹工船」的労働条件であることを説明しました。
テレサさん(左)とリディアさん(右)
 Photo
つづいて、「蟹工船」のスペイン語翻訳者のリディアさんが、翻訳は、キューバが著作権について不払い政策をとっていた時代のものであること、編集者のテレサさんから紹介されたとき、中心人物もなく、主だった女性もなく、細かい心理描写もなく、集団的な描写で、資本の無慈悲な搾取の論理を描いている強烈な描写にたちまち魅入られたことなどを語りました。奴隷制のもとでは奴隷の主人は、奴隷を使用し続けるためには、生産手段の奴隷の命を大事にしたが、蟹工船では、労働者の健康と命も使い捨てのように扱われている劣悪な状況が印象に残ったと、リディアさんは強調しました。
また、多喜二の「不在地主」も同じ翻訳本に納められており、悲惨な半封建的な小作人の状態が印象的であったと述べました。
 最後に、編集者のテレサさんが、当時キューバ政府の出版の優先順位は、①キューバ文学、②ラテンアメリカ文学、③「社会主義圏」文学、④ヨーロッパ文学、⑤アジア・アフリカ文学で、その中で、日本のプロレタリア文学を出版するのは並大抵でなかったが、優れたプロレタリア文学であったのでなんとしても出版したいと上層部を説き伏せて出版したいきさつを紹介しました。テレサさんによれば、これまでキューバで出版された日本文学は、1966年の太宰治の「斜陽」を皮切りに、芥川龍之介「羅生門」、川端康成の「雪国」、大江健三郎「個人的体験」、三島由紀夫「金閣寺」など13点に上るとのことです。
 この「蟹工船を語る集い」には、キューバ共産党中央委員会国際部のアベラルド・クエトさん、日本大使館専門調査員の山田泰子さんなどが出席しました。

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2009年3月26日 (木)

続キューバ7つの神話(2)

③キューバには「砂糖省」という省庁があるというのは本当でしょうか?また、なぜ砂糖省というものがあるのでしょうか?
答え:

現在は、砂糖産業省(MINAZ)は、農業省(MINAGRI)との統合の過程にあります。昨年11月26日、6ヶ月の移行期間で砂糖産業省と農業省が合併となり、統合され、農業省のみとなることが決定されました。
キューバは、60年代から90年代半ばまで、キューバでもっとも重要な産業は、砂糖産業でした。一時輸出の70%は砂糖でした。1964年キューバ政府は、ソ連圏との貿易関係が深まり、ソ連圏への輸出を600万トン予定し、1970年に砂糖を1000万トン生産する計画を立てました。そして1974年7月、国の基幹産業である砂糖生産を集中して管理する政府機関として砂糖産業省が設立されました。
現在の大臣は、ウリセス・ロサーレス・デル・トロです。

④キューバには砂糖大臣がいるというのは本当でしょうか?ちなみに、現在の砂糖大臣のお名前を教えてください。
答え:

上記のように現在は、砂糖産業省は、農業省との統合の過程ですが、依然として所轄の大臣、砂糖産業大臣も存在しています。名前は、ルイス・マヌエル・アビラ・ゴンサーレスです。


⑤キューバでは胸が小さくて太っている女性のほうがモテるというのは本当でしょうか?
答え

当然、キューバ人の個人により、それぞれの好みがありますが、一般的には、胸は大きく、かつ腰が張っており、やや肉付きが良い(太っているのとは違います)女性が好まれます。特に、胸が小さい方がいいという好みはありませんし、太っている女性が好まれるということもありません。痩せた女性は、あまり魅力を感じないということはありますが、やや肉付きがいいという表現あたりが適切でしょう。


⑥キューバでは胸を小さくする「貧乳手術」がブームというのは本当でしょうか?
答え:

「貧乳手術」がブームといのも、どなたが書いているのかも知れませんが、そのようなブームはありません。胸が大きすぎて生活上不便な女性が、健康のため小さくする手術をすることはありますが、ブームというものではなく、あくまで少数で、必要に応じていう程度です。
現実の傾向は、やはり豊乳あるいは美乳手術が行われています。これもブームというものでもなく、希望する女性が行っているという程度です。


⑦キューバ共和国の国民の平均月収、平均年収を教えてください。月給1000~2000円というのは本当でしょうか?
答え:

現在キューバ人の月平均賃金は410ぺソ(CUP)です。それを現在のペソ=外貨ペソ(1CUC=24ぺそCUP、1CUC=100円)で計算すると、17CUCで、1700円程度になりますが、これでもって、月収が1700円程度と思うのは、単純な考えで、実際の賃金収入を間違ってしまいます。
ともあれ、生活は大変、困難です。一般に平均的な市民の場合、生活費は、4人家族で3000ペソ近くかかります。しかし、収入は夫婦共稼ぎで800ペソ程度です。この差額、2200ペソは、なんらかの方法で稼がなくてはなりません。そこが、現在キューバ社会で少なからず見られる不正の原因となっています。
実際には、キューバ人は、賃金表に記載されない配給食糧、教育・医療無料、交通費・光熱費・文化・スポーツ観覧料などの補助金、年金・社会保障補助などの補助金を得ており、その額は一人当たり700ペソ程度と推計されます。したがって、実質平均賃金は月一人当たり1100ペソ(46CUC、4600円)程度とおもわれます。

以上が、TV局の質問と私の回答です。それにしても、あまりにも間違ったキューバ観ですね。いずれもキューバ紹介本、ガイドブックを出典としているようですが、執筆者も気をつけてほしいと思います。

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2009年3月25日 (水)

続、キューバ、7つの神話 (1)

2-3月と海外に調査旅行に行ってきましたので、研究室も休みとしていました。先日帰国しましたので、再開しましょう。

旅行中、あるテレビ局から、「WBC(世界野球大会)について取り上げることになり、3月16日に行われる『日本対キューバ』の試合放送の際にキューバ共和国という国がどんな国なのか番組で紹介したい、下記のような番組が調べたことが正しいことなのか、判断、監修してほしい」との依頼がありました。

その内容をみて、正直、またか!という思いでした。すでに、「キューバ、7つの神話で」で実情を明らかにしたことも含まれていますが、ステレオタイプ的間違った情報ゆえ、ご紹介し、実情を報告しておきます。さすがに、同TV局では、この収集していた情報を報告せず、番組の信頼性が救われましたが、もし、それらを否定せず、TV局がそのまま紹介、報道していたら、またまた新たな神話が形成されたことでしょう。

キューバでは医療費が無料というのは本当でしょうか?
答え:
医療費はすべて無料というわけではありません。入院費、診察料、入院中の薬代は無料です。しかし、通院患者は、処方箋により薬を買います。これは有料です。しかし、政府の補助金で安く、だいたい一般の病気で、1週間分の薬で月収の3-4%程度です。

なお、外国人は、原則としてすべて有料です。映画「シッコ」で無料であるかのことをいっていましたが、これは間違いで、彼らは国賓として招かれていたので無料。外国人は一般には有料です。この点は、イギリスの医療制度の方が、外国人も無料ですから、すぐれているでしょう。
また、この機会に、現在、キューバの医療制度は、再編成されていることを紹介しておきます。理由は、国外への大量の医師の派遣から、医師数が半減した結果、底辺を支えている家庭医制度を初めとして、統廃合が進められているからです。

現在キューバの医師、教師、スポーツ・文化インストラクターの海外協力派遣者は、48,256人で97カ国(そのうち4万5000人がラテンアメリカ・カリブ海の31カ国)、15分野で派遣されています。そのうち、医療関係が最大で36,770人が70カ国に派遣されています。これらの大部分は、有料のサービス輸出として行われていますので、安易にキューバの国際連帯は見上げたものだなどと感心しないこと。しかし、派遣費用は国際的な水準からすれば安い価格ですし、最貧国への派遣、あるいは緊急人道支援の場合、無料で行われています。

海外への医師の派遣(ほとんどはサービス輸出であり、無料支援ではない)から、医師不足が生じ、7万2千名の医師の半数近くが海外に派遣されて、医師一人当たりの人口数も300人を超えるものとなっています。しかも、家庭医は、3万4000人の半数以上が、海外に派遣されていることから、80年代は医師一人当たり500-700人を担当していましたが、現在では3倍の1500-2000人を担当しなければならなくなっています。

その結果、全国の1万4078の家庭医診療所を①タイプⅠ(5916診療所)、②タイプⅡ(4680診療所)、③強化診療所(177診療所)の3種類に分類し、継続開所されています(残りは閉鎖)。①は医師と看護師各1名で初期診察を行い、②は看護師のみが簡単な手当て、注射、ワクチン接種などを行い、③は医師と看護師1名で、過疎地で24時間診療、レントゲン、超音波装置、心電計器、歯科装置を備えています。しかし、再編成の過程は、まだ僅かなもので、国民の中に多くの不満があり、改善されるべき多くの問題があると公共保健省(MINSAP)も認めています。

医師の賃金が、平均賃金の50%程度増程度であるうえ、それは生活の5分の1程度しかカバーできないので、また、医師はアルバイトもできないので、生活は大変です。そこで、医師への金品の受け渡し、医薬品、医療資材の横流し。入院・手術便宜供与に対する謝礼などが、少なからず行われています。


キューバでは国がヒッチハイクを推奨しているというのは本当でしょうか?また、それはなぜでしょうか?
答え:
特に国がヒッチハイクを奨励しているわけではありません。90年代に入り、「非常時」となり、交通事情が急激に悪化し、サービスはかつての5分の1程度に減少しました。そこで、公用車の場合、公用車の目的地までに座席に余裕があれば、決られた場所でインスペクター係員の指示で、乗車させなければならない規定が作られ、希望者は指定の場所で乗車することができます。街中、どこでも乗れるというものではありません。しかし、最近は、この義務も解除された模様で、街中でインスペクターを見ることがなくなりました。

自家用車の場合、とくに同乗させる義務はありません。ただし、交通事情が困難なことから、自家用車が、街中で手をあげている市民を同乗させることはあります。運転手の判断の問題です。若い女性などは同乗させてもらう可能性がありますが、一般の男性はあまりありません。


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