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2009年1月 3日 (土)

キューバにおける都市農業・有機農業の歴史的位相

日本においては、キューバの有機農業に関しては、都市農業との混同があったり、キューバ側の基準を無視して有機農業と思い込んだり、少なからずの混乱が見られる。まずはキューバには未だキューバで有機農業の統一基準さえないことを理解しておかなければならない。国民の間には農業指導者も、生産者も、消費者も有機農業という概念をもっているのは極めて一部の人である。以下に、キューバの有機農業を論じた論文を紹介したい。

『アジア・アフリカ研究』2007年第2号Vol.47 No.2 通巻384号掲載

「キューバにおける都市農業・有機農業の歴史的位相 参考文献付.pdf」をダウンロード

(補論1) 都市農業の規定
一体、キューバでいわれる都市農業とはどういうものであろうか。全国都市農業グループ責任者のアドルフォ・ロドリゲスによれば、次のような地域で行われる農業が都市農業と規定されている 。

① ハバナ首都圏、及びハバナ県全体。
② 12県の県都の中心から10キロメーター周辺の地域。
③ 169の基礎行政区(Municipal)の中心から5キロメーター周辺の地域。
④ 1000人以上の村落の中心から2キロメーター周辺の地域。
⑤ 住宅15戸以上の村落で住宅に隣接して自給用に栽培される土地。

この内、注目されるのは、ハバナ県(面積5,732平方キロ でほぼ三重県に相当し、人口729,000人で島根県に相当する)全体が、都市農業区域に指定されていることである。ハバナ県を旅行すると分かるが、ハバナ市の郊外に出ると、一面の平野であり、そこで行われている農業は、とても都市農業の概念と結びつかない。また県都の市街地は普通5キロメーター以内であり、それを超えると農村地帯となる。基礎行政区にしても2-3キロメーター以外は農村地帯である。キューバの場合、かなりの地域が、本来の都市農業の概念から離れた、一般農業区域も含むものであることを理解しておく必要があろう。つまり、都市農業の生産量として発表される数字の中には、本来の都市農業とはかけ離れた自然条件の中で生産されているものも、少なからず含まれているのである。

ハバナ東部30キロのところにある農村。この農業もキューバの基準では都市農業となる。
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一般にはキューバの都市農業は、すべて有機農業であるといわれる 。しかし、以上でわかるように都市農業は、すべてが有機農業ではない。

(補論2)
08年2月キューバ青年共産同盟機関紙「フベントゥ・レベルデ」紙は、「肥料の『有機的』ジレンマ」という題で、有機肥料の問題点を次のように指摘した(Juventud Rebelde, Febrero 17, 2008)。

1. 有機肥料は、非常時に入り、化学肥料が不足する中で、使用を余儀なくされたものであり、使用している農民は、その意義、利点を理解しているものは少ない。
2. 有機農産物に対する特別価格もなく、農民に生産上の刺激を与えない。
3. 国民の中に有機農産物により高い価格を払ってもよいという考えが存在しない。
4. 近年、外貨事情の回復により、再び化学肥料の輸入が増大しており(9万トンから16万トンに)、さらにシエンフエゴスに肥料プラントの増設も計画されており、使用を余儀なくされたとはいえ、有機肥料により、土壌が改良された利点に逆行するという人もいる。
5. 実際、最大の目的は食料の増産であり、有機肥料を使用すること自体が目的でなく、栽培品目、そこでの土壌の質、栽培方法によって、有機肥料だけでもよい場合、化学肥料だけで良い場合、化学肥料と合わせて使用することが良い場合とある。この併合使用が、キューバの農業省の方針である。
6. それぞれ、具体的にどの方法がいいかは、詳細な調査・研究が必要だが、まだ、その条件がキューバにはない。

 このような見方は、筆者が08年8月キューバで農業調査を行った際に、農業関係組織で一様な見方であった。キューバで調査を行う場合、関心があるとして、有機農業関係の場所を申請すれば、該当場所に案内してもらえ、それでもって有機農業が行われていると単純に理解してはならない。農業関係全体の調査を行い、その中で都市農業・有機農業がどのように認識され、取り組まれているかを理解しなければならない。

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