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2009年1月24日 (土)

フィデルの健康状態とオバマ政権についてのキューバ側の見方

フィデルの健康状態とオバマ政権についてのキューバ側の見方

本ブログでは、キューバのニュースを逐一知らせるものでなく、一定の時間が経過した事象を分析・研究するものであるが、フィデルの健康状態とオバマ政権についてのキューバ側の見方については、関心も深いこともあり、現在の状況を紹介しよう。以前にも述べたが、憶測や噂に基づいたニュースを扱うつもりはなく、正式機関で発表された、いわば一次史料(資料)をもって説明するのが筆者の方針である。

1)フィデルの健康状態
① 1月21日、フィデルは、クリスティーナ・フェルナンデス大統領と40分会談した(フィデルの省察「クリスティーナとの会見」Granma, 09.01.22)。なお、この会見の写真は、1月22日、アレハンドロ・ゴンサーレス外務次官が特別使者としてベネズエラに派遣され、チャベス大統領との夕食会の席上、クリスティーナ大統領に手渡された(Juventud Rebelde 09.01.23)。

グランマ紙掲載の写真。
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② クリスティーナ、「フィデルは元気ですよ」とのべる(Granma, 09.01.22)。「フィデルは、紳士として、立って出迎えてくれました」(AP, 09.01.22)。(岡注:病床ではなかったの意味)。

③ ラウル議長、「フィデルは、クリスティーナ大統領としばらく話し合った。元気だ。体操を行い、いろいろ思索をめぐらし、多くの文書を読み、私に参考意見をいってくれ、協力してくれている」(Granma, 09.01.22)。

④ ラウル、新聞記者たちに「あなたがたは、もしフィデルが重病だとすれば、私がにこにこしていると思うかね。近くヨーロッパを訪問する。あなたがたは、もしフィデルが重病であったら、私がキューバを空けることができると思うかね。フィデルの健康については、噂を書くのをやめてほしい」とのべる」(La Jornada, 09.01.22)。
(岡注:ラウルの訪ロは、1月31日に行われる(Novosti, 09.01.23)。

⑤ フィデルは、省察「11人目の米国大統領」で、「今後、党や政府の同志の仕事への干渉となったり、邪魔となったりしないように、このところの省察は短く書いている。しかし、同志は、私の時折の省察、私の重病や死亡に縛られないでほしい。これまで長い間、いろいろ重大事件を見てきて、考察してきたが、オバマ大統領が任期を終える4年後には、そうした機会に恵まれないかもしれないとも思う」と述べた(Granma, 09.01.22)。

2)キューバ政府のオバマ新政権の見方
じつは、オバマ大統領は、就任式の2日前にベネズエラの保守系テレビ局「ビシオン」とインタビューを行い、「チャベスは、ラテンアメリカの進歩を阻害している。ベネズエラはテロ活動を輸出しており、FARC(コロンビア革命軍、コロンビアの反政府武装勢力)を支援している」とチャベス政権を厳しく批判した(岡注:チャベス大統領はFARCを支持しないことを公式に認めている)。

同時にキューバについては、「旅行と送金の制限を緩和する用意がある。しかし、経済封鎖は解除しない。ラウル・カストロ政府が、キューバで個人の自由を改善する用意があるならば、対話する」と、キューバとの対話に「人権問題の改善」という条件をつけた(EFE, 09.01.19)。なお、キューバ側は、当然のことながら、対話は双方が無条件で行わなければならないとう原則を繰り返し述べている(本ブログ、1月17日「フィデル・カストロ前議長の健康と米玖関係」参照)。

さて、オバマ大統領の就任式のあと、キューバ政府首脳陣はどう述べたか。

① キューバのマスコミではキューバ共産主義青年共産同盟機関紙、Juventud Rebelde紙のみが電子版でオバマ演説全文を掲載。他は、簡潔な客観的な報道記事であった(09.01.20)。

② アラルコン国会議長(キューバの対米交渉の責任者)、「演説は、大変興味あった。良くできている。なかなかの演説家だ。今後の政策はいろいろな疑問がある」と述べる(La Jornada, 09.01.21)。

③ フィデル、1月21日、省察『クリスティーナとの会見』を執筆し、「オバマが正直な人物であることは疑いをもっていないと前に述べたが、演説を聴いていていろいろな疑問が湧いた。例えば、あれほどの浪費・消費社会でどうやって環境を維持するのであろうか」と述べる(Granma, 09.01.22)。

④ ラウル議長は、「良い人物のように思える。成功を期待している」と述べた(La Jornada, 09.01.22)。

⑤ ラウル議長は、「グアンタナモ収容所の閉鎖をわれわれは要求してきたが、それだけでは不十分で、グアンタナモ基地のキューバへの返還こそ、キューバが望むものである。現在は、軍事的にもこの基地は意味がない」とのべた(Tass, 09.01.22)

⑥ フィデルは、省察「11人目の米国大統領」で、「オバマが米国を自由のモデルの国の変えること、世界の人権の尊重、各国の独立の尊重を確認したとき、だれもその真摯さを疑うことはできないだろう。しかし、まだオバマは重要な問題と対面したわけではない。近いうちに、その手にある巨大な権力が、体制と対立する解決不可能な矛盾を克服するためにはまったく役に立たないとき、オバマはどうするだろうか」と根本的な疑問を提起している(Granma, 09.01.23)

こうしたキューバ政府首脳陣の発言、コメントは、オバマ大統領の「ビシオン」とのインタビューを考えると、非常に抑制されたものである。以前に「本ブログ、1月17日フィデル・カストロ前議長の健康と米玖関係」でも述べたが、キューバ側の原則的立場ははっきりしている。国際的な常識である、無条件、対等、平等、相互尊重の原則に基づいた対話である。原則がはっきりしていることから、過度の期待も、過度の敵意もなく、冷静な態度で、オバマ政権の具体的政策を見てみよう、それまではあえて論評する必要もないというものである。

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